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班婕妤 | |
唐・王維 |
怪來妝閣閉,
朝下不相迎。
總向春園裏,
花間笑語聲。
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班婕妤
怪しむらくは 妝閣の 閉ぢ,
朝より下りて 相ひ迎へざるを。
總て 春園の裏に 向いて,
花間 笑語の聲。
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◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?~761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。
※班婕妤:〔はん・せふよ;Ban1・Jie2yu2〕漢代の宮女の名(姓+官職)。失寵の女性の象徴として使われる。漢・成帝の寵愛を得たが、後に趙飛燕にその座を奪われ、彼女は『怨詩(怨歌行)』で「新裂齊紈素,皎潔如霜雪。裁爲合歡扇,團團似明月。出入君懷袖,動搖微風發。常恐秋節至,涼風奪炎熱。棄捐篋笥中,恩情中道絶。」と、寵愛を失った歎きをうたう。帝の寵愛を失った宮女の歎きの歌。謝
の『玉階怨』「夕殿下珠簾,流螢飛復息。長夜縫羅衣,思君此何極。」
や、王建の『宮中調笑』「團扇,團扇,美人病來遮面。玉顏憔悴三年,誰複商量管弦?弦管,弦管,春草昭陽路斷。」
や唐・李白の『怨情』「美人捲珠簾,深坐嚬蛾眉。但見涙痕濕,不知心恨誰。」
など、同様の趣(おもむき)である。 ・婕妤:〔せふよ;Jie2yu2〕漢代宮中の女官の一。=倢伃。
※怪來妝閣閉:訝(いぶか)しいことには、女性(=班婕妤(はんしょうよ))の部屋は閉ざされたままで。 ・怪來:いぶかしく思ったところでは。怪しみ出せば。不思議に思えば。 ・-來:…ところでは。動詞(形容詞)の後に助字として附く。後世、中唐・白居易の『竹枝』で「江畔誰家唱竹枝,前聲斷咽後聲遲。怪來調苦縁詞苦,多是通州司馬詩。」と使う。 ・妝閣:〔さうかく、しゃうかく;zhuang1ge2○●〕化粧部屋。女性の部屋。
※朝下不相迎:(天子が朝政を執り行なう)朝廷(=外廷)から皇宮(=内裏)へ下がってきても、(天子を)出迎えようとしない。 ・朝下:天子が朝政を執り行われる朝廷から皇宮(内裏)へ下がってくる。 ・相迎:出迎える。 ・相-…てくる。…ていく。動作が対象に及ぶ時の表現 。
※總向春園裏:すべて、春の園(その)の中に(出て)。 ・總:すべて。みな。総じて。 ・向:…に。…で。≒於。一部動詞の後に附けて、「…に(…する)。」の意。〔動詞+向+場所〕≒〔動詞+於+場所〕と、場所を表す語に続く。この意の用例に:唐・李白の『把酒問月』故人賈淳令余問之に「靑天有月來幾時,我今停杯一問之。人攀明月不可得,月行卻與人相隨。皎如飛鏡臨丹闕,綠煙滅盡淸輝發。但見宵從海上來,寧知曉向雲閒沒。白兔搗藥秋復春,姮娥孤棲與誰鄰。今人不見古時月,今月曾經照古人。古人今人若流水,共看明月皆如此。唯願當歌對酒時,月光長照金樽裏。」とあり、中唐・白居易『賣炭翁』「賣炭翁,伐薪燒炭南山中。滿面塵灰煙火色,兩鬢蒼蒼十指黑。賣炭得錢何所營,身上衣裳口中食。可憐身上衣正單,心憂炭賤願天寒。夜來城外一尺雪,曉駕炭車輾氷轍。牛困人飢日已高,市南門外泥中歇。翩翩兩騎來是誰,黄衣使者白衫兒。手把文書口稱敕,迴車叱牛牽向北。一車炭重千餘斤,宮使驅將惜不得。半匹紅綃一丈綾,繋向牛頭充炭直。」
や北宋・林逋の『山園小梅』「衆芳搖落獨暄妍,占盡風情向小園。疎影橫斜水淸淺,暗香浮動月黄昏。霜禽欲下先偸眼,粉蝶如知合斷魂。幸有微吟可相狎,不須檀板共金尊。」
や盛唐・崔敏童の『宴城東莊』「一年始有一年春,百歳曾無百歳人。能向花前幾回醉,十千沽酒莫辭貧。」
とある。上出赤字は「於」の意で、「むかって、むく」の意はない。青字は「むかって、むく」の意。 ・-裏:…の中(で)。「裏(裡)」と「-中」は同義。
※花間笑語聲:花の咲き乱れているところで、楽しみ笑いながら話し声をあげている(のに)。 ・花間:花の咲き乱れている間。花壇の所。花園で。美しい女性たちのいるところ。なお、詞集『花間集』は「美しい女性たちのいる間」の意。 ・笑語聲:楽しみ笑う話し声。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「迎聲」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
●○○●●,
○●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
2009.7.22 7.23完 2017.8. 1補 |
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