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柳絮 | |
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唐・薛濤 |
二月楊花輕復微,
春風搖蕩惹人衣。
他家本是無情物,
一向南飛又北飛。
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柳絮
二月 楊花 輕復 た微,
春風搖蕩 として 人の衣を惹 く。
他家 本 是 れ 無情の物,
一向 南に飛び 又た北に飛ぶ。
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◎ 私感註釈
※薛濤:〔せつたう;Xue1 Tao1〕中唐の女流詩人。大暦五年(770年)~太和六年(832年)。字は洪度。長安(現・陝西省西安)の人。若くして父親の任地・成都に移り、詩名を知られたが、父親の死後、落魄して歌妓となった。徳宗の貞元五年(789年)に、法に触れて松州の辺境守備軍駐屯地に流されたが、釈放されて成都に帰ってからは妓籍を脱して西郊の浣花渓に隠棲し、女道士の服を着け、花を栽培し詩を詠み、時の人々と詩の応酬をした。浣花渓には製紙を業とする者が多く、薛濤は深紅の小箋(短冊)を作り、広めた。世に薛濤箋といわれる。
※柳絮:柳の綿毛。 *春の風物を歌い、また、柳の綿毛のように風のままに移っていく男女の関係をも暗に詠う。 ・柳絮:〔りうじょ;liu3xu4●●〕柳の花が咲いた後の風に舞う綿毛のある種子。風に従って動くものの譬喩。流離(さすら)うもの。政治的な節操もなく情況に流されて揺れ動く者。南唐後主・李煜の『望江梅』に「閑夢遠,南國正芳春。船上管絃江面淥,滿城飛絮輥輕塵。忙殺看花人。 閑夢遠,南國正淸秋。千里江山寒色暮,蘆花深處泊孤舟。笛在月明樓。」とあり、北宋・蘇軾の『和孔密州五絶 東欄梨花』に「梨花淡白柳深靑,柳絮飛時花滿城。惆悵東欄一株雪,人生看得幾淸明。」
とあり、北宋・司馬光の『居洛初夏作』に「四月淸和雨乍晴,南山當戸轉分明。更無柳絮因風起,惟有葵花向日傾。」
と使う。朱淑眞の『蝶戀花』送春「樓外垂楊千萬縷,欲系青春,少住春還去。猶自風前飄柳絮,隨春且看歸何處。 綠滿山川聞杜宇,便做無情,莫也愁人苦。把酒送春春不語,黄昏卻下瀟瀟雨。」
とある。
※二月楊花軽復微:陰暦二月(の春の最中(さなか))には、柳のわたは軽(かろ)やかで、そしてまた細やかであり。 ・二月:陰暦二月。陽暦の三月(二月下旬から四月上旬)頃に該る春の季節の中の月。 ・楊花:柳のわた。柳の綿状になって飛ぶ種子。蛇足になるが、現代語で“水性楊花”といえば、「女性の浮気の性(さが)」を謂う。 ・復:また。ふたたび。 ・微:小さい。細かい。かすかである。
※春風揺蕩惹人衣:(柳絮は)春風は(/に)ゆらゆらと揺れ動いて、人の衣(ころも)にひきつけ(られ)る。 ・揺蕩:〔えうたう;yao2dang4○●〕揺れ動く。揺り動かす。ゆらゆらする。ゆすぶる。 ・惹:ひく。ひきつける。ひかれる。まねく。ひきおこす。
※他家本是無情物:あれ(=あの人/柳絮)は、もともと心が無いので。 ・他家:(古白話)あの人。彼/彼女。また、彼の家。ここは前者の意で、表だっては「楊花」を指し、また、異性(ここでは男性)の人物を指す。 ・本是:根本は。もともとは。 ・無情:心がない。また、真心がない。情けがない。ここは、前者の意。
※一向南飛又北飛:ひたすら南の方へ飛んだかと思うとまた、北へ向かって飛んでいる。 ・一向:ひたすら。もっぱら。まったく。また、これまで。以前。もともと。ずっと。 ・又:…してはまた。(繰り返して)また。重ねてまた。またしても。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「微衣飛」で、平水韻上平五微。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○○●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2014.11.25 11.26 |
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