Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye



  陸游  

  釵頭鳳
               
紅酥手,
黄縢酒,
滿城春色宮牆柳。
東風惡,

歡情薄。
一懷愁緒,
幾年離索。
錯,錯,錯。


春如舊,
人空痩,

涙痕紅
桃花落,
閑池閣,
山盟雖在,
錦書難托,
莫,莫,莫!

******

釵頭鳳
                 
紅く 酥(やはら)かき手,
黄縢の酒,
滿城の春色  宮牆の柳。
東風 惡しく,
歡情 薄し。
一懷の愁緒,
幾年の離索。
錯,錯,錯!


春 舊の如く,
人 空しく 痩す,
涙痕 紅
(あか)く (うるほ)して  鮫(ハンカチ)に 透る。
桃花 落ち,
閑かなる池閣,
山盟 在りと雖も,
錦書 托し難し,
莫,莫,莫!

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◎ 私感註釈

※釵頭鳳:詞牌の一。詳しくは下記の「構成について」を参照。この詞は、内容の深刻さに衝撃を受ける。凄い詞である。青年陸游の有名な逸話だが、彼は妻唐を愛して睦まじく過ごしていたが、妻と、しゅうとめに当たる陸游の母との折り合いが悪く、妻と別離させられた。その別れた妻とある日、偶然に沈園で出会った。その後も激情已むことなく、沈園の壁にこの詞を書いたという。なお、この詞を後に(元)妻唐の知るところとなり彼女も詞を和して応えたという。その作品とこの詞と両方見ると、万感胸に迫る。漢末の『孔雀東南飛』の南宋版とも謂える。この詞の押韻は入声韻であり、他の声調とは異なって、中国語の中で、一番強烈な響きを持っている。若い作者の叫びである。この時の出来事を遥か後になっても思い起こして、『沈園二首』其二「「夢斷香消四十年,沈園柳老不吹綿。此身行作稽山土,猶弔遺蹤一泫然。」や、『春游』「「沈家園裏花如錦,半是當年識放翁。也信美人終作土,不堪幽夢太怱怱。」と切なくうたいあげる。

※紅酥手:ピンク色に染まった柔らかい手。 ・紅:(白話)血色の好い皮膚の形容。 ・酥:(白話)ふっくらとして柔らかい。形容しとして使われている。「紅酥點出牡丹花」や「鈿頭雲映褪紅酥」という風に、やはり少し艶な感じを持ったところに使われている。名詞:バター、チーズ等の乳脂肪を固めたもの。

※黄縢酒:黄色の紙で封をされた酒。宋代の官酒には黄色の紙で封をしたからいう。 ・縢:封鎖する。封をする。滕ではない。

※滿城春色宮牆柳:市内一面が春景色で、宮殿の壁沿いの柳(にも春が訪れた)。 ・滿城春色:城内(=市内)一面が春景色。 ・城:城郭内の都市。都市。 ・宮牆柳:宮殿の壁沿いの柳。もしも宋代の宮殿の壁が濃い紅(代赭色)の色をしていれば、柳の緑に紅が映えたことだろう。なお、当時、既に紅い壁があったことは唐の李商隠や宋の晁補之の作品に「紅牆」が出てくることから分かるが、それが宮殿の壁かどうかは分からない。 ・牆:壁。

※東風惡:春風がわるい。 ・東風:春風。 ・惡:わるい。にくむ。みにくい。ここは、声調から見る限りでは「にくむ」の意味はない。この悪字のところは韻脚で入声韻のところ。入声韻は漢語(中国語)韻でいうより日本語韻で見る方が分かりよいので、以後のこの文では、日本語韻を使う。「悪」字は多音字で入声と去声。入声は「あく」で「わるい、みにくい、(体調が悪くて)むかつくかんじ」。去声は「う、を」で「にくむ、副詞いづくんぞ」。それ故、ここでは、入声の方の意味で「わるい、みにくい、胸が(体調が悪くて)むかつく感じ」になる。ただ、注意を要するのは、「惡」字(単語)は、日本語に伝わる漢語音と、現代漢語(中国語)とは意味にねじれが生じている部分があることだ。日本語韻入声は「あく」で「わるい、みにくい、(体調が悪くて)むかつくかんじ」。だが、漢語韻入声系統はe4で、「わるい、みにくい」。漢語去声韻系統wu4で、「にくむ」。漢語去声韻系統wu1で「副詞いづくんぞ」となり、きちんと対応しているものもあれば、一部分が対応しているものなどがある。ここで違ってくるのが「むかつく」という意味の分類は、日本語韻では去声韻だが、漢語韻ではe3で、入声韻の音韻変化の系列に属していることである。日中どちらの方がより祖形に近いのか。王建の「春去曲」「春已去,花亦不知春去處。縁岡繞澗卻歸來,百回看著無花樹。就中一夜
東風惡,收紅拾紫無遺落。老夫不比少年兒,不中數與春別離。」は、春風の意で使っているが、陸游の意味は、「母親」の意味で使い、若い夫婦の仲を裂いた母の行為を「荒れる春風」として表現している。

※歡情薄:歓びの思いが薄かった。二人が夫婦として楽しく過ごした期間は短かった。

※一懷愁緒:ひたすら胸に抱き思ってきたさびしい(離別の)心情。 ・一懷:ひたすら胸に抱き思ってきた。 ・愁緒:さびしい(離別の)心情。

※幾年離索:どれだけ逢わずにいたことだろう。 ・幾年:どれだけの。どれだけ(逢わずにいたことだろう)。 ・離索:離別。別居。柳宗元「屏居負山郭,歳暮驚
離索。」や白居易 「…兩地誠可憐,其奈久離索。」にある。

※錯,錯,錯:間違っている、おかしい、まちがっているっ!!これは、若き陸游の叫びである。詞の意味の流れから見ていくと、「(東風惡,歡情薄。一懷愁緒,)幾年離索」ということは、「錯,錯,錯!」とも読める。 ・錯:間違っている。正しくない。

※春如舊:春の訪れは旧来のままである。

※人空痩:人は空しく痩せてしまった。 *前の句「春如舊」と対になっており、自然の営みは毎年変わることが無く、穏やかな春も昔ながらの様子でやってくる。それに引き比べて人の方は、変化が激しく、 空しくやせ衰えてしまった、という天人の比較をしている。

※涙痕紅透:涙が頬紅を流して、ハンカチに紅く滲み出てきた。 ・涙痕:涙のあと。 ・紅:(頬紅が涙で流れて)紅く。 ・:ひたす。うるおす。(涙が頬紅を流して、ハンカチに)滲み(透り)。 ・鮫:詞では「涙を拭くためのハンカチ」の意で使う。南海の鮫人が織った絹のハンカチ。羅隱の『江南行』に「江煙雨蛟軟,漠漠小山眉黛淺。水國多愁又有情,夜槽壓酒銀船滿。細絲搖柳凝曉空,呉王臺春夢中。鴛鴦喚不起,平鋪告眠東風。西陵路邊月悄悄,油碧輕車蘇小小。」がある。 ・透:にじみ出る。

※桃花落:桃の花が散る。

※閑池閣:静かな池の畔の建物。この中に二人がいたのか、作者の目にこの建物の物静かな様子。

※山盟雖在:(曾て)堅い誓いを交わした仲であるとはいえ。 ・山盟:男女の深い契りの比喩。千載不磨の誓い。「山盟海誓」、「海誓山盟」のこと。 ・雖在:…が存在しているとはいても。

※錦書難托:思いをしたためた手紙は、(もはや)手渡しにくい。(彼女はもう人妻となっているので)。 ・錦書:思いをしたためた文、手紙。宋・無名氏の『一剪梅』に「漠漠春陰酒半酣。風透春衫,雨透春衫。人家蠶事欲眠三。桑滿筐籃,柘滿筐籃。   先自離懷百不堪。檣燕呢喃,梁燕呢喃。篝燈強把
錦書。人在江南,心在江南。」とある。 ・難托:託し難い。委託しにくい。手渡しにくい。彼女はもう人妻となっているので、手紙も渡せない、ということ。

※莫,莫,莫:だめだ、だめだ、だめだ!!あってはならない!やめた、やめた!終わりだ!等となる。 ・莫:否定、禁止の語。

                  ***********




◎ 構成について

  
双調。六十字。仄韻 独特の換韻。韻式は「aaabbbbbb  aaabbbbbb」。青字・赤字は、畳字。 韻脚は「手酒柳 舊痩透」:上片は第十二部上声で、下片は第十二部去声。「惡薄索錯錯錯 落閣托莫莫莫」:第十六部入声。

   ○○●,(韻)
   ○○●,(韻)

   ●○○●○○●,(韻)
   ○○●,(韻)
   ○○●。(韻)
   ●●○○,
   ●○○●。(韻)
   ●(
)、●()、●。(


   ○○●,(韻)
   ○○●,(韻)

   ●○○●○○●,(韻)
   ○○●,(韻)
   ○○●。(韻)
   ●●○○,
   ●○○●。(韻)
   ●(
)、●()、●。(

となる。
2001.10.16
     10.17
     10.18
     10.19完
     10.21補
     11.30
2002. 8. 1
2004.10. 2
2006. 2. 3
2007. 5.10
      5.11
      9. 6
2017. 5.14

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