映画のページ

ツイステッド /
Twisted /
Twisted - Der erste Verdacht

Philip Kaufman

2004 USA/D 97 Min. 劇映画

出演者

Ashley Judd
(Jessica Shepard - サンフランシスコ警察殺人課刑事)

Samuel L. Jackson
(John Mills - ジェシカの上司、本部長)

Andy Garcia
(Mike Delmarco - サンフランシスコ警察殺人課ベテラン刑事、ジェシカのパートナー)

David Strathairn
(Melvin Frank - サンフランシスコ警察付きの精神分析医)

Jim Hechim
(Bob Sherman - ジェシカの知っている男、殺人の被害者)

Leland Orser
(Edmund Cutler - ジェシカが逮捕した凶悪犯)

Joe Duer
(Larry Geber - ジェシカの知っている男、殺人の被害者)

Russell Wong
(Tong - ジェシカの上司)

D.W. Moffett
(Ray Porter - ジェシカの知っている男、カットラーの弁護士)

Camryn Manheim
(Lisa - 科学分析担当官)

Mark Pellegrino
(Jimmy Schmidt - サンフランシスコ警察刑事、ジェシカに未練がある元恋人)

Bruce Marovich
(Marovich - 刑事)
Danny Lopez
(Lopez - 刑事)
Victor Vallejo
(Vallejo - 刑事)

見た時期:2004年12月

井上さんに触発されて3本犯罪映画を立て続けに見てしまいました。ドイツではそれほど評判になりませんでしたが、おもしろかったです。
画面がかなり暗く、DVD で見る人は苦労します。せっかくサンフランシスコの珍しいシーンがテンコ盛りになっているのに、惜しかったです。

要注意: ネタばれあり!

アンジェリーナ・ジョリーとアシュレー・ジャッドはイニシャルが AJ だというだけでなく、出演する作品も似たような物があり、時々2人は並んで生きているのかと思うことがあります。あまり芸能界の事は詳しく調べていないのですが、もしかして、2人は競争会社の同期のスターか何かで、片方が犯罪映画に主演すると、競争会社の方でも同じような作品に出すのかとかんぐったこともあります。

いくらか別行動もあるようで、トゥームレイダーのような役をジャッドはやっていないようですし、フリーダのような役をジョリーはやっていません。しかし犯罪映画では重なっているものもいくつかあります。ツイステッドのジャッドの役は、ジョリーのプロファイラーに負けないほど観察力に長けたサンフランシスコの女刑事。

ネタがばれます。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

サンフランシスコ警察に女性のインスペクターが誕生します。女性第1号というのは何であれ負担の多い事で、ジェシカも初日から大変です。分かり難いのは、女性蔑視なのか、単なる職場の苛めなのかという点。仕事のできる人物が新入りで入って来るというのはどんな職場でも摩擦の原因になります。それがたまたま女性だと女性差別という解釈も成り立ちますが、できのいい新人は男女に関わりなく嫌がられます。何にせよ苛められる側は楽ではありません。で、インスペクターもストレスいっぱい。

ジェシカにはもう1つ利点とも問題点とも取れる事があります。彼女を抜擢した上司、サミュエル・リーロイ・ジャクソン演じるミルズというのが、彼女を積極的にひいきしているのです。ミルズはジェシカの父親と以前コンビを組んで仕事をしていました。父親亡き後、ミルズはジェシカを自分の娘のようにして育てていたのです。そういうコネの無い人からは羨ましがられます。それは妬みに発展しかねません。

ジェシカにも他の刑事と同じようにコンビを組む相棒がいます。それがアンディー・ガルシア演じるマイク。この男がまた石頭で、ジェシカとはいい勝負。なかなか妥協はしません。

ジェシカは悲劇的な状況で両親を随分前に亡くしていました。そのせいなのかストレスの解消法が過激で、夜な夜なその辺にいた男とセックス。恋愛感情が生まれる前にバイバイという、リスクの大きい生活を続けていました。寝た男の中には同僚や、仕事で一緒になる弁護士などもいます。その数は自分でも覚えていないぐらい。

ある日逮捕する時にカッとして不要な暴力を振るってしまったため、規則で署内の精神分析医の世話になることになります。

この精神分析医を演じているのが黙秘で嫌な亭主を演じたデビッド・ストラトハーン。がらっと違う役柄です。ここまで変身して観客に与えるイメージを変えることのできる俳優は職人と呼んでも差し支えないでしょう。

連続殺人発生。ジェシカが夜を共にした人物が次々襲われ殺されて行きます。犯人は目印に被害者の手にタバコでやけどを残して行きます。アリバイを証明しなければならないはずのジェシカは不眠症と記憶喪失の両方に襲われ、自分がやったのかやっていないのか自信が無くなって来ます。

3人目も死んでしまい、ジェシカに容疑がかかります。自分でも反論ができず、収監されても「そうかも知れない」と思って、「ここにいた方が他の人に迷惑がかからなくていい」などと弱気な事を言い出します。職場の彼女は威勢がよかったのですが、話が両親の死まで遡ると彼女は元気がありません。その母親は殺されていました。犯人は父親。父親は連続殺人の犯人でした。家族に殺人の血が流れているのかもしれない、などとふと考えてしまうのです。

刑事という仕事にはタフな神経が必要ですが、ジェシカはピリピリしている上に、最近は強暴な面も現われます。不眠症にはもう長く悩まされています。その上アル中。

後で聞いた話によると、刑事がアル中というのは以前は当たり前の話で、刑事が酒場でしょっちゅう同僚と飲むというシーンはフィクションではなかったようです。最近は精神分析が仕事にたくさん取り入れられているそうで、職務中機会あるごとにカウンセリングが行われているそうです。

ドイツでカンニバーレ事件が起きた時は担当の刑事たちがカウンセラーのサポートを受けながら仕事をしたそうです。

プロファイリングを積極的に導入して仕事をしている人はかなり大変なようで、エドワード・ノートンウイリアム・L・ペーターセン演じるプロファイラーでも神経はズタズタ。こういう仕事では男性、女性のどちらが向いているか分かりませんが、アンジェリーナ・ジョリーもかなり疲れる仕事をやっています。プロファイリングの元祖のようなハリスがかなり現場の状況を小説に取り入れたようで、このあたりの話はある程度現実に近いのではないかと思います。

さて、せっかく自分でも納得して豚箱に入っていたジェシカですが、彼女にここにいてもらっては困る人物がいました。彼女にもう少し外で泳ぎまわってもらいたいのが真犯人。豚箱にいたのではアリバイができてしまうのです。と言うことはアシュレー・ジャッドは犯人ではありません。アンディー・ガルシアも悪役は駄目ですから、残るはサミュエル・リーロイ・ジャクソンかデビッド・ストラトハーン。この2人なら善人も悪人もできます。こういう推理の仕方は監督からは嫌われますが。

ジェシカのブラックアウトは普通に記憶が抜け落ちるのではなく、酩酊している様子。名と丁に日読みの酉偏が付いているので、酒が怪しい。こういう推理の仕方も監督からは嫌われるでしょうねえ。しかし《飲み過ぎのジェシカ》と伏線が張ってあります。

犯人がばれます。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

で、真犯人が正体を現わしました。ミルズでした。連続殺人鬼は実はミルズで、ジェシカの母親がよその男と寝ているのが気に入らなかったのです。ジェシカが夜な夜な違う男と寝るのも気に入らないのです。異常男はミルズでした。ミルズと対決するジェシカは最後ミルズに向けて発砲。ジェシカの勝ちです。

最後の《実は犯人は相棒の刑事だった》という落ちは他の映画でも見たことがあります。意外と常識的なショーダウンでした。やや物足りないのはミルズの伏線。あまり彼が怪しいという伏線は張ってありません。正直言って、怪しい可能性もある人まで死んでいるので、消去法で残ったのはジェシカも含めて3人だけ。その中でガルシアはジェシカの助っ人になる可能性も否定できなかったので、善玉かもしれないという疑いが残りました。ストラトハーンは悪人にもなれそうな人ですが、それにしてはジェシカとの関わりがほとんど無く、ショーダウンに近づいても動機が見つかりませんでした。逆にジャクソンは父親と一緒に仕事をしていたなど、関わりはいくつかあります。で、1番怪しい。ミステリアスにするのでしたら、最後まで複数の人物を容疑者として残し、全員にそれなりの動機も持たせるべきでしょう。

テーマは男性の職場に切り込む女性と、連続殺人の2つに分かれてしまい、ちょっと両方がお互いを食い合ってしまった感があります。私の趣味から言うと、これだけの人材、カメラを駆使したのだからもう少し犯罪の部分を徹底させたら良かったのにと思います。そういう意味ではテイキング・ライブスの方が楽しめました。その上テイキング・ライブスでもちゃんと女性がこういう職業に就いていることの負担は出ていました。その上にフランコ・カナダ人が英語をしゃべる人とあまり仲良くしないという点まで触れています。さりげなくそういう問題も取り込んだカルーソー監督の方がやや長けています。

おもしろいことにこの作品のアドバイザーを務めた女刑事は、ファラ・フォーセット・メジャーズを思い出させるような美人。70年代頃のモダンな美人タイプです。お酒を飲んでいるような様子は無く、家庭的な生活を送っているとか。物を言う時はしっかりと相手に目を据え、いい加減な事は言いません。非常にやわらかな、しかし絶対に譲らない人です。彼女ですと美貌も武器にできそうですが、実生活ではそういう事はしなかったようです。「男性の同僚が《彼女は他の同僚と同じ危険を犯す覚悟がある》と知ったところで、差別をしなくなった」と言っていました。

女性差別というのは実際にどのぐらいあるのでしょう。確かに女性だということ故に起きるトラブルも多いですが、1度見直した方がいいかも知れません。新人は男性でも女性でも最初苛められます。仕事のできる人はいつでも苛められます。男女差はほとんどありません。女性差別であれ、男女に関係のない苛めであれ、仕事を妨害する者には一貫して立ち向かうべきだと簡単に言い切ってしまっていいのかも知れません。そういう意味ではジェシカは元気に立ち向かっていました。他人の良い所だけを取り入れるとすれば、この辺は参考にしてもいいかも知れません。

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