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2004 USA/NL/UK 102 Min. 劇映画
出演者
Val Kilmer
(Jake Harris - FBIのプロファイラー訓練担当官)
Eion Bailey
(Bobby Whitman - FBIの訓練生、メカに強い)
Clifton Collins Jr.
(Vince Sherman - FBIの訓練生、車椅子に乗っている、銃に執着する)
Will Kemp
(Rafe Perry - FBIの訓練生)
Jonny Lee Miller
(Lucas Harper - FBIの訓練生、医学を知っている、サラとルンルンだった)
Kathryn Morris
(Sara Moore - FBIの訓練生、妹が殺されている、水に弱い)
Christian Slater
(J.D. Reston - FBIの訓練生、ニックとルンルン)
LL Cool J こと James Todd Smith
(Gabe Jensen - よその部から内部調査のために派遣されたエージェント)
Patricia Velasquez
(Nicole Willis - FBIの訓練生、喫煙者)
見た時期:2005年3月
レニ・ハーリンにこの作品を任せたのは誤った決定だったのではと思わざるを得ません。私が見た2作品はキャストはわりと一流の人でしたが駄作でした。片方にはシルベスター・スタローンとバート・レイノルズ、ドイツのスター、ティル・シュヴァイガーが脇役で出ていましたし、もう1つには当時の奥方ジーナ・デーヴィスやサミュエル・L・ジャクソンが出ていましたが、せっかくの人材も無駄になっていました。一応アクション映画という感じの作りでしたが、迫力はしぼみがち。
マインドハンターは映画の触れ込みだけを聞くと、アル・パシーノ主演のリクルートと似た作りのように思えます。FBI、クワンティコ、プロファイラーなどの言葉が飛び出し、訓練生の話になっています。映画が始まるまでに色々な試験で振り落とされ、最後に7人が残っているという設定です。それに加え内部調査の任務を持ったエージェントが加わり、8人と教官の物語。
しかし話が始まってみると、英国国営ラジオ放送で外国人のための英語練習用に作られた推理小説もどきのストーリーでして、アガサ・クリスティーのそして誰もいなくなったを元ネタにしてあります。ラジオ放送は結構長いストーリーを毎回15分ほどに分割し、ステップ毎に文法や慣用句の説明がありました。声優が上手で、大げさな芝居がかった演技をするのですが、それ全体がとても楽しいエンターテイメント番組に仕上がっており、私は毎回次を楽しみに聞いていました。
しかし、ハリウッドがまがりなりにも(かつての)大スターを呼んで来て、まがりなりにも(かつて)世界で公開された映画を監督した人を監督の座に据えて、コメディーやパロディーでない作品を作るのだとすれば、せめて気合ぐらいは入れてもらいたいです。FBI の訓練などに興味のある方はリクルートの方へ移動して下さい。プロファイラーという職業に興味のある方は、ハンニバル・レクターシリーズをアンソニー・ホプキンスで見るか、1つだけ別に作られた刑事グラハム 凍りついた欲望に移動して下さい。
陸の孤島でなく、本物の孤島に連れて来られ、帰るにはヘリに乗るしかないような拡大密室状態の中で起きる殺人事件なのですが、それでしたら、先日ご紹介した嵐の真っ只中のパナマ・ジャングル拡大密室殺し合い物語の方が推理小説ファンにはまともに見えます。
同じ脚本をもらっても他の監督ならもう少し何とか見られるものを作れたのではないかとも思います。最近あまり調子の良くない2人のスター、スレーターとキルマーですが、2人はちゃんとセッティングをしてあげれば結構いい役者なのではと思います。私は少なくともキルマーがほんの短いシーンで、心を突き刺すような悲しさを表現したのを見たことがあります。その時の監督はマイケル・マン。共演者にベテランが揃っていましたが、演技だけを取り上げると、主演の大物2人よりキルマーやもう1人の殺し屋の方が殺し屋の苦しい立場をよく表現していました。そういう人を連れて来ているのですから、成功するチャンスは無きにしもあらずのはずでした。
若手の中にもジョニー・リー・ミラーなどというやらせれば結構行ける男が入っています(なんちゃって、実は年寄りに見えるスレーターと若く見えるミラー、そして他のメンバーはあまり年が離れていません。キルマーはやや年上)。そして悪役が多いですが、メキシコ系の由緒ある俳優一家出身のクリフトン・ゴンザレス・ゴンザレスも出ています。彼はクリフトン・コリンズ・ジュニアという名前を使うこともあります。そしてドイツに住んでいる人で映画館に行く人には IKEA というスウェーデンの家具屋さん(日本でも開店予定だそうです)の CM でお馴染みのレディーズ・ラブ・クール・ジェイムズ。
よく考えてみるとこの作品はスカンジナビア・コネクションのようです。監督がフィンランド人、キルマーがスウェーデン系の人、そしてスウェーデンの会社の CM に登場するアメリカ人。おっと、これはいくら何でもこじつけがきつい(笑)。
登場人物はキャストのリストに限られています。中でヴァル・キルマーは最初にちょっと登場し、後でもう1度登場するだけ。クリスチャン・スレーターは出演者の中ではネーム・バリューが高い方なのですが、冒頭あっという間に昇天。しかし取り敢えずメンバーをご紹介しましょう。
プロファイラーの最終訓練だみたいな触れ込みで、孤島にメンバーをヘリで届け、そのまま消えてしまうのがヴァル・キルマー演じる訓練教官ジェイク。役としてはリクルートのアル・パシーノ、閉ざされた森のサミュエル・L・ジャクソンと同じようなものですが、あっという間に舞台から姿を消します。
連れて来られた新人は7人。皆これまでの訓練はずっと生き延び、理論だけが得意なわけではないようです。それぞれ個性があり、ある人はメカに強く、別な人は理論的に考え、もう1人は数に強いなどといった具合です。プロファイラーには少なくとも2つのタイプがあると聞いたことがあるのですが、この7人、誰一人プロファイラーらしくありません。そういう意味では ハンニバル・レクターの相手役に選ばれたプロファイラー諸君 の方が見ていて納得するタイプに描けていました。しかしマインドハンターがそして誰もいなくなったの亜流だとすれば、その辺はリアルでなくてもかまわないのかも知れません。
女性2人、男性5人の名前はサラ、ニック、ボビー、ルーカス、レイフ、ヴィンス、JD。ヴィンスは足が不自由で車椅子に乗っています。
そこにやや部外者で訓練に参加するのがゲイブ。前回の試験のやり直しという触れ込みでしたが、実はジェイクが訓練でエスカレートするらしいという話で、内部調査を依頼されているエージェントです。
合計8人が連れて来られた島はゴーストタウンで、訓練のためか至る所にマネキン人形のような物が置いてあります。予告編に良く出たシーンが始まります。全員がある部屋に来たところで、1人がドミノのコマに手を触れます。それが延々と続くドミノのコマを倒し続け、最後にヘリウム・ガスのボンベが倒れます。ガスが噴出し、その前にいた JD の足が凍りつき、やがて瀬戸物が割れるように破壊されて行きます。ガスは体全体にかかり、彼は冷凍冷蔵庫に入れた肉よりカチカチになって凍死。
訓練のはずなのに本当に JD が死んでしまったので、他の7人はぞっとします。迎えのヘリが来ない限り島を離れることはできません。死んだのは JD だけではありません。少し前誰かが猫を殺し、猫の目に時計を挟んでいました。その時刻が JD の死亡時刻。
JD の死は序曲で、その後1人、また1人と殺されて行きます。必ず死の直前に時計による予告があり、考える時間が与えられています。
ボートで島を出る方法を思いつき桟橋へ掛け付けた訓練生たちは橋に仕掛けられたスイッチのおかげでボートの爆発に巻き込まれます。サラが溺れかけますが、とにかく救出。しかしボートは跡形も無く吹っ飛んでしまいます。
建物に戻って疑心暗鬼になりつつも議論を戦わせていると眠くなり、全員ばったり。目が覚めてみるとレイフの首が切られています。なのに血が出ない。近くの部屋に行くと、ガラスというガラスにわけの分からない数字が血で書かれています。この数字が一体何を意味するのか、などと分析が始まります。
メンバーの中で1人だけ誰の知り合いでもないゲイブが疑われます。彼は妙な書類を持っていました。彼はなぜ自分がここにいるのか言おうとしますが、他のメンバーは興奮して話を聞こうとしません(それでも君たちはプロファイラーの卵なのか!?)。ゲイブに手錠をはめ壁につなぎ、車椅子に乗ったヴィンスが見張りをし、他のメンバーは外に出ます。そうしているうちに廊下では水道管が破裂し水浸し。その上蛍光灯が次々壊れ始め、電流が水に流れそうになります。足の不自由なヴィンスは思うように逃げられません。ゲイブが助けようとしても手錠がかかっているので難しい。
大変な議論をし、大変な苦労をし、ようやくゲイブがヴィンスを助けたところでフェイントを噛まされ、死んだのが予想外のボビー。ほっと安心というのが行けませんでした。
こういった調子でこの先も人が死んで行きます。最後に残るのはサラ、ルーカス、ゲイブ。しかし彼らの間にも疑心暗鬼が起き、誰もが誰をも信じません。そして何度か《死んだはずだよ・・・さん、生きていたとはお釈迦様でも・・・》というややインチキ臭いシーンも出て来るのです。で、私はだんだんアホらしくなって来ました。
《死んだはずだよ・・・さん》だったら、ベーシックの方が手口が鮮やかでした。ああいうのなら騙されても文句言わないなあ・・・。
そして最後の最後まで説得力が無かったのが動機。そりゃセブンのケビン・スペーシーみたいにむやみやたらにこだわる性格で、それだけが動機という人もいるかも知れません。しかしもうちょっと何かそれらしい話をでっち上げてもらいたかったです。
ほんの少しだけ誉めたかったのは、最後に残った人が犯人割り出しのために自分の方から調査に乗り出し、トリックを仕掛けておいた点。ここにはそれまであまり論理的な話の運びでなかったにも関わらず、知性と勇気が感じられ、努力賞はあげたくなります。推理小説ファンにはちょっと興覚めの、プロファイラーにはとてもなれそうにもないようなアホらしい喧嘩の連続、本格古典風なゲームとしては詰めが甘く、心理劇を期待するむきは完全に裏切られるという出来。映画館で何度も予告を見たのですが、予告では良いシーンを全部出してしまっていたようです。この作品、人に薦めるべきかなあ。今暫く考えさせて下さい。
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