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G.I. ジョー /
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Бросок кобры

Stephen Sommers

2009 USA 118 Min. 劇映画

出演者

David Murray
(James McCullen - 1641年のマッカラン、武器商人)

Christopher Eccleston
(Destro こと現代の McCullen - MARS社の社長、武器商人)

Channing Tatum
(Duke - 兵士)

Sienna Miller
(Ana - 男爵夫人、レックスの姉、デュークの元婚約者)

Gre'gory Fitoussi
(Baron de Cobray - アナの夫)

Joseph Gordon-Levitt
(Rex - アナの弟、兵士)

Rachel Nichols
(Shana O'Hara - 兵士)

Marlon Wayans
(Ripcord - 兵士)

Brendan Fraser
(Stone - 軍曹)

Ray Park
(Snake Eyes - 黒装束の忍者)
Leo Howard
(Snake Eyes、子供時代)

Byung-hun Lee
(Storm Shadow - 白装束の忍者、マッカランの腹心の部下)

Brandon Soo Hoo
(Storm Shadow、少年時代 )

Arnold Vosloo
(Zartan - MARSの一員)

Jonathan Pryce
(合衆国大統領)

Dennis Quaid
(Hawk - 将軍)

見た時期:2009年8月

★ お人形さんの映画

長い歴史のある、ベトナム戦争を機に男の子向けに製造されたお人形さんから派生した映画。女の子向けに作られたバービーちゃんの対抗馬だったそうですが、それがいきなり戦争グッズというので話を聞いた時にはちょっとびっくりしました。バービーは私自身貰った記憶もあり、知らないことはないのですが、G.I. ジョー人形についてはこの映画を見るまで全く知りませんでした。私個人について言えば知名度にこれほどの差があるのですが、他の人はどうなんでしょう。

ドイツでもバービーの対抗馬と言えるほど有名とは感じませんが、元々ジョーを全然知らない人間が町でG.I. ジョー人形が飾ってある所を通りがかっても「あっ、ジョーがある」とは思いませんから、私の目にとまらなかっただけなのかも知れません。

★ アホ映画の出来は?

昨日見た映画版G.I. ジョーの方はちょっと期待ができそうでした。というのは監督がミイラ・シリーズのソマーズだったからです。しかし見事にこけました。ご都合主義の権化のようで、あのあっほらしいストーリーから愉快な冒険談を作り上げた監督にしては、どこにアクセントを置いたらいいのか分からずに作り始めたような感じでした。

私はアホな映画が大好きで、何度も引き合いに出したザ・コアもそうですし、ジャングル・ジョージも大好きです。ミイラ・シリーズも他愛ないアホ話と分かっていてもちゃんと見ています。たまたまブレンドン・フレイザーの出演作に関心が集中したような印象を与えてしまいますが、その他にもあまり深く考えずに見られるアホ映画はたくさん見ており、その1時間半から2時間をけらけら笑って楽しく過ごしております。そういったアホ映画にも良し悪しがあり、G.I. ジョーは落第点でした。

例えば類似の、敵味方に分かれて戦い、片方が世界を救うアホ映画としては、スカイ・キャプテンとかアイアンマンなどが考えられますが、あちらの方が色々な点で優れていたように思います。ここで例に挙げた2作では主演俳優の貢献が大きいと思います。他愛ないアホ映画ではありますが、俳優が良く役を勉強していたように見えます。あるいは才能があって直感的に自分の役どころを正しく理解したのかも知れません。

★ 出ている人は見劣りしない

G.I. ジョーに出て来る俳優もオスカーとの距離はいくらかあるかも知れませんが、それでも出来の悪い三流俳優ではありません。それなりに知名度もあり、例えば主演に近いデニス・クウェイドは同じようなアホ映画でドラゴンと旅をする男を演じた時は好感を持ったものです。クリストファー・エクルストンは一般にはそれほど知名度は高くありませんが、私はかなり初期の頃から彼の映画に出会っていて、演技派と考えていい人です。あの未来世紀ブラジルでサムを演じたジョナサン・プライスも出演。

アクションの多い若手の方は主演がパブリック・エネミーズにも出ていたチャニング・テイタム、彼の元婚約者で現在は敵のアナを演じるのが欧州ではしょっちゅうタブロイド誌に何か書かれているシエナ・ミラー。

みょうちきりんな日本人を演じているのが韓国のイ・ビョンホン。彼はちょっと気の毒です。本人は日本人ではないのに日本人の役で、忍者のような装束。子供時代のエピソードでは、およそ日本の台所とは思えない場所でライバルの子供と死闘を演じて見せ、親方に注意を受けるという役。ところがこの親方も日系の俳優が演じていますが、日本とは思えない環境が与えられていて、日本人とは考えにくい風体。ま、おちゃらか映画だからこの程度でいいということなのでしょう。しかし成人した彼のアクション・シーンは一応見られます。韓国での知名度はよく知りませんが、私は彼の出た作品をドイツで見たことがあります。

★ 救いの神?

この人がいなかったらもっとつまらなかっただろうと思われるのがマーロン・ウェイアンズ。ウェイアンズ家の人は俳優業と監督や脚本と両方やりますが、G.I. ジョーは彼のコミカルな演技で救われた部分もあります。

その他に主演の次に重要なティームのメンバーとして知名度がそれほど高くない若手が出ていますが、演技とアクションを適度に混ぜ合わせています。映画全体のまとまりがよければ良い効果が出せたかも知れません。

俳優に関して付け加えるなら、ソマーズ監督が旧知の俳優を連れて来ていて、そこで救われた面もあります。ブレンダン・フレイザーとアーノルド・ヴォスローの出番があります。この2人も作品が完全にずっこけるのを救っています。

★ 監督に責任があるのか?

G.I. ジョーはこれまでに見たソマーズ監督の作品4つに比べがくっと落ちたように思えます。扱うテーマが軍事産業だからどうのという話ではありません。同じような方面のテーマで作られたアイアンマンはおもしろかったです。

制作中監督に同時にいくつもの負担がかかったのでコントロールし切れなかったのかなどと考えているところです。G.I. ジョーでは特殊効果がかなりたくさん使われています。しかし出来があまり良くありません。例えばヴァン・ヘルシングではとても切れの良い場面がいくつもあったのに、G.I. ジョーはではボケた感じでした。本編上映前にシャマランとエマリッヒの新作の予告があったのですが、そちらの数分間のシーンの方が良く見えました。

大掛かりなセットを作った割に映画の中であまり意味を持っていなかったのも痛いかも知れません。ザ・コアは予算を削りに削ってG.I. ジョーとは比べ物にならないぐらい小規模に作ってあるのに、ちゃんと「軍隊なんだぞ」という感じは出ていました。高い所から転落して死ぬ人のシーンも色々出て来るのですが、あまりちゃんと距離感が出ておらず、迫力に欠けます。

ミイラ・シリーズもヴァン・ヘルシングもそれぞれテーマがうまく整理されていて、加えて特殊撮影も多用されていたのにまとまりが良かったと思っています。なぜそれがG.I. ジョーでうまく噛み合わなかったのでしょう。

★ ストーリー

筋はあまり詳しく説明しないつもりですが、ざっと言うと、新型兵器を開発する大企業が金属を腐食させてしまう新型兵器を開発。元々業務を委託して開発に乗り出していた軍と、完成後それを奪っておいて高く売りつけようとする企業との争いになります。

その人物の祖先は1600年代半ばにまでさかのぼる伝統ある武器商人の一家。(せっかくの因縁話も他の筋に流されて暫くすると観客は忘れてしまいます。)

台詞の中では色々複雑な事情が語られますが、画面では軍善玉(元々が兵士の人形から発している映画ですから当然でしょうねえ)、企業悪玉と実に単純で分かりやすい構造になっています。複雑さをシンボル的に表わしているのは、子供の頃からライバルだった2人のうち、善玉についている方が黒装束、悪の側についているのが白装束という点。とは言うものの忙しいストーリーに流されてそんな事に気を配っている暇はありません。

中で強調されるナノという技術は最近非常に開発が進んでいて多方面に応用されており、無論軍需産業にも積極的に使われています。ですからアハハと笑わない方がいいのかも知れません。

★ ソマーズ色

フレイザーとヴォスローは元から出すつもりだったのか、出来が悪くなりそうだというので補強のためにつれて来たのか分かりません。

元からの予定かなと思われる愉快な点があります。悪党は北極の近くの海底に巨大な基地を作っているのですが、軍の方はエジプトの砂漠の地下に大きな基地を作っています。地下なので空から見るとただの砂漠のように見えます。しかし砂漠の砂を使ってちょこっと特殊効果のご愛嬌。そして駱駝使いが近くを通るシーンが愉快です。駱駝の姿に注目。

★ 続編

必ず続編が作られます。奈落の底に落ちたはずのイ・ビョンホンですが、下が水で死亡は確認されていません。大活躍した2人の悪党はまだ生きており、すでにアメリカ合衆国の乗っ取りに成功しています。G.I. ジョーで見習いだった若手兵士はデニス・クウェイドから一人前として認められて終わります。

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