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パリより愛をこめて /
From Paris with Love /
De Paris com Amor /
Desde París con amor /
Dupla Implacável /
París en la Mira /
Sangre y amor en París

Pierre Morel

2010 F 92 Min. 劇映画

出演者

Jonathan Rhys Meyers
(James Reece - 駐仏米国大使館員)

John Travolta
(Charlie Wax - ベテラン・エージェント)

Kasia Smutniak
(Caroline - ジェームズの恋人、服飾デザイナー)

Richard Durden
(Bennington - 駐仏米国大使)

Amber Rose Revah
(Nichole - カロラインの友達)

Eric Godon (外相)

Franc,ois Bredon (狂信者)

Sami Darr (ポン引き)

Yin Bing
(M. Wong - 中国マフィア)

Julien Hagnery
(中国人チンピラ)

Chems Dahmani
(Rashid - テロリスト)

Moste'fa Stiti
(Dir Yasin - テロリスト)

Rebecca Dayan (外相側近)

Alexandra Boyd
(米代表団のチーフ)

Farid Elouardi
(テロリストのドライバー)

見た時期:2010年10月

★ 監督とプロデューサー

この監督の作品は1つ見たことがあります。District B13 とか District 13 というタイトルで各国で公開されました。まあそれなりにまとまっていましたが、ストーリーは緩くて、見所は主人公2人の掛け合い漫才とパルクールを多用したアクション・シーンの方でした。とは言うものの結構ヒットし、続編が別な監督で作られました。そちらもそれなりにヒットしたようです。

その監督がまたリュック・ベソンの製作でアクション映画を撮りました。今度はかなりのグレード・アップが図られています。District B13 の経験がフルに生かされていて、主人公は District B13 では警察、パリより愛をこめてでは外務省に所属。男2人の掛け合い漫才で観客を笑わせ、アクション・シーンをふんだんに盛り込んでいます。

リュック・ベソン色も取り入れています。ベソンの作品はカー・アクションが盛り上がります。パリより愛をこめてでも長い時間が取ってありますが、飽きません。そして外国人の女性やハニー・トラップを取り入れ、ベソンの鬱憤が晴れるようにできています。何か嫌な思い出でもあるのでしょう。そしてトランスポーターのステータムとは違うタイプですが、無口でおもしろい超有能ドライバーも出て来ます。トラボルタがギャラで折り合ったら2人の主人公とこのドライバーで続編を作ってもらいたいところです。

★ 主人公

☆ マイヤーズ

ジョナサン・リース・マイヤーズとジョン・トラボルタが主演です。マイヤーズはベッカムに恋しての主演の1人で、キーラ・ナイトレイと共演しています。この後ナイトレイは大出世しましたが、マイヤーズはぱっとしませんでした。健康なスポーツの物語ですが、ドラッグ関係のトラブルに巻き込まれたのではないかと思えるような様子も見られ、ちょっと危うい感じの人でした。

何年か経ってお酒の問題が表沙汰になり、治療に取り掛かった様子。それまでに出演した作品で私が見たのは

・ B. Monkey
・ ベッカムに恋して
・ ミッシング・ハイウェイ
・ ミッション:インポッシブル3

ですが、他に名のある作品にも出ています。ところがキャリア上昇はキーラ・ナイトレイとの共演後不調。へんてこりんな作品にへんてこりんな役で出ており、キャリアの邪魔になりそうでした。また上を向き始めたのはミッション:インポッシブル3 あたりからで、トム・クルーズとはミッション:インポッシブル4で2回目の共演が実現しています。今回はハリウッド作品ではありませんが、フランスでは第一人者のリュック・ベソンが力を入れた作品の主演で、彼のキャリアをもう1度前に押し出しそうです。

ベソンは時々自分に起きた出来事を笑い飛ばすようなジョークを映画に盛り込みますが、そういう視線でかんぐると、マイヤーズがアルコールかドラッグでずっこけたことを踏まえて彼にコカイン入りの大きな花瓶を抱えさせ、長い時間うろうろさせているのかも知れません。外務省所属、大使館付きの公務員に大量のコカインを持たせてその辺をうろうろというのはコメディーとしてはユニークな場面です。

これまで私が知っていたブロンドのマイヤーズとはちょっとイメージを変え、髪は黒、似合わない口髭を生やしています。イメージ・チェンジには成功しています。役柄は脚本が良くて、注文服のようにぴったりしています。

役者としてちょっとマイナスなのは彼の地声と発音。最初ドイツ語で見た時はエリート外交官的に上品な話し振りだったのですが、英語のオリジナル版を見るとやや高めの声で、米語の発音が良くありません。上品そうな外交官の役なのでもう少し工夫すれば良かったと思います。顔、立ち居振舞いだけを見てドイツ語版を聞いているとサマになっています。

☆ トラボルタ

トラボルタの実力には驚きました。サブウェイ123 激突と全く同じ出で立ち、ほとんど同じヘアー・スタイルで(その差約3ミリから5ミリ)、あちらが2009年、こちらが2010年なので、連続して撮影したのではないかと思われます。両作品で彼のコンディションは正反対です。

サブウェイ123 激突は思いっきり悪漢を演じるチャンスで、悪役で輝くトラボルタとしては点を稼ぐチャンスでした。しかし全体にむさくるしくややしょぼくれた、鬱っぽい男に出来上がり、ワシントンとの対決もボルテージが上がっていません。

それに比べパリより愛をこめてでは思いっ切り楽しみながら演じていて、撮影ティームとの相性も良く、みなが楽しく働けた様子が伝わって来ます。型はずれで無茶苦茶な事をやる有能なエージェントで、足手纏になるマイヤーズにどうにか一人前の仕事をさせる先輩という役どころです。トラブルを起こそうが、怒られようがどこ吹く風でいながら、国家には忠誠を誓っている男という役です。

その上大サービスでパルプ・フィクションに引っ掛けたジョークもでて来ます。サービスはそれにとどまらず、ジョン・ウー、フェイス・オフを意識して、チャウ・ユンファに似た銃さばきも見せます。鳩は出て来ません(笑)。トラボルタ・ファンには必見のアクション・コメディーです。

★ ストーリー

オープニングは駐仏米国大使と大使館員のジェームズ。2人はチェスをしながらスケジュールの調整などをしています。ここで知っておくと便利なのは、大使館員の約3分の2は工作員だということ。一部には名誉職的な国の顔としての役割だけを果たす人もいますが、身内に貴族がいるとか地位の高い人がいるような場合でない時、優秀な成績で学校を卒業しただけの場合は、シークレット・サービスを兼ねていると考えるのが常識です。彼もそういう普通の職員です。

ジェームズには直接仕えている大使と、時々電話をして来る顔を出さない上司がいます。彼はデスク・ワーク向きの青白いインテリ。頭はかなり切れるようで、仕事中にチェスをしていてもちゃんと次の手を考えていて、大使に勝ってしまいます。

出で立ちはというと、青白いエリートにふさわしく、細身で眼鏡をかけ、ダーク・スーツ。その彼に外回りの仕事が入ります。自動車のナンバー・プレートを取り替えろ(当然ながら違法)というもの。秘密ケースを開けるコードナンバーを記憶するのはお手の物ですが、プレートの交換は得意ではなさそう。外回りの実務には長けていません。

私生活ではファッション・デザイナーの卵のカロラインとルンルン。仕事中毒のジェームズから結婚を申し込まれることは無いと考え、カロラインは自分の方からプロポーズをします。ジェームズは承知。婚約の印としてカロラインの父親から譲り受けた指輪を贈られます。テラスで夕食をという時にも上司から電話が入り、今すぐ出動と言われますが、カロラインは文句も言わずジェームズを送り出します。

今度の任務はジェームズのパートナーとして本国から送られて来たチャーリーを税関から救い出すこと。入管でどうしてもアメリカから持って来たエネルギー・ドリンクを持って入国するのだとごねたため留め置かれていました。ここではジェームズはナンバー・プレート交換より手際が良く、外交官特権でチャーリーを荷物ごと通してしまいます。

ルールに縛られることを嫌うチャーリーとの仕事はジェームズをはらはらさせますが、当初の仕事 - コカインを扱う中国人の所から大量のコカインをせしめる - はうまく行きます。尤も本当に本国からこういう風にしろと指令を受けていたかは大いに疑問。方法論ではチャーリーと外務省の規則の間に大きな隔たりがあります。

この後2人はパキスタン人の自爆テロを追い始めます。(この部分、本当にパキスタンが敵なのかは不明です。クレジットにはパレスティナというバージョンもあります。出演者の顔を見るとあまりパキスタン人らしくありません。ドイツ語版の台詞ではしかしパキスタン以外の名前は出ません。その上イスラム系のテロリストなのだとすると、宗教上矛盾するシーンも出て来ます。ここはプロットに穴がありますが、もしかしたら元からそういう風な矛盾を組み込んであるのかも知れません。)テロリストの巣窟の入場券として役に立つのがコカイン。中国人が大量のコカインをさばいていて、テロリストは少量のコカインを小売。それをテロの資金にしている様子。上手く建物に入り込み、自爆テロリストがいる上の階に行き、撃ち合いの末全員を仕留めます。

その後2人は壁に貼ってあるジェームズの写真を発見。誰かがジェームズをずっと見張っていたことになります。この作品は見え見えに伏線が張ってあるので、婚約指輪の所で勘のいい人はすでにおやっと思います。全体が推理小説の初心者向きに作られています。なのでここに来て並の勘の人でもある人が怪しいと思うでしょう。それでも一応推理ができるように作られています。

一仕事片付いたところでカロラインから夕食に帰って来いとメイルが入ります。チャーリーと一緒に帰宅すると、カロラインも女友達を呼んでいて、4人で楽しく過ごします。そこへ間違い電話が。その瞬間にチャーリーはカロラインの友達を射殺。それも頭を撃ち抜いており、確信犯。チャーリーにはそれなりの論拠があり、彼はカロラインも狙います。

カロラインには疑われるだけの理由があり、そのキーになるのが婚約指輪。ばれたと悟ったカロラインは窓から脱出し、誰かの車に乗って逃亡。ジェームズのアパートは入居前に専門家に調べさせてあり、カロラインも身元を調査させてあったようですが、彼女はそれをすり抜けた様子。揉めた時にカロラインから肩を撃たれたジェームズはショック。

カロラインは(どうやら撃ち殺された女友達に誘われて)テロリストの組織に入っていました。生きる目的を見つけたようなのですが、自爆テロですから本当は死ぬ目的を見つけたと言うべきでしょう。ということはそれまで空虚な人生を送っていたのでしょうが、あまり深く触れていません。その彼女が慕っている男がこの日アメリカ人の代表団チーフを狙っていました。高速道路で車ごとぶつかり自爆の予定でしたが、チャーリーに阻止されてしまいます。

大使館関係者がアパートのチェックをしている時、傷心のジェームズは何かが引っかかると感じ、考え始めます。なぜ自分が監視されていたのか、なぜカロラインが自分と付き合ったのか・・・。そして答を見つけます。

チャーリーが男を仕留めたのでこのグループで生存しているのはカロライン1人。彼女は一足先に国際会議場に入り込んでいて、チーフ1人ではなく、会議参加者全員を狙っています。敵は複数のオプションを用意していたわけです。カロラインがジェームズに近づいた理由はこの会議場に入る手立てを用意するため。慌てて会場に駆けつけ、何とか中に入れたジェームズはカロラインと対決。この対決は深く考えても浅く考えてもおもしろいシーンです。

全体はコメディーなので主人公は助かり、続編を作る可能性を残して終わります。

★ 久しぶりに楽しいアクション・コメディー

今年のファンタは不調でしたが、一般公開される作品もどこかしらぱっとしない作品が多く、わざわざ映画館まで足を運ぶべきか考えてしまうこのごろです。そんな中、雑誌の紹介記事を読んだ時もおもしろそうだと思いましたし、DVDを借りて来た時もつい2度見てしまいました。痛快さ、きっちりしたアクション、トラボルタとマイヤーズのコンビの愉快さ。プロットは中程度ですが、適当な時間を置いて展開するので、飽きません。トラボルタとマイヤーズの言い争いも愉快ですが、ドライバーとトラボルタのやり取りも愉快でした。この3人で続編の1つ、2つ作ってもいいかも知れません。

後記: 続編嫌いのトラボルタがこれに限っては乗り気のようです。

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