映画のページ
2018年5月5日 - 6日
スケジュール調整が大変でしたが、とにかく10本見ることができました。同僚に感謝。
予想通り最初の作品がベストでした。以下コメントを入れておきました。
2016年後半から続いていた健康問題が今年の3月頃までに片付き、今年の春のファンタは余裕で参加のはずだったのですが、手術のおかげで溜まっていた定期検査や継続中の普通の治療の中でずっこける出来事があり、4月以降もごたついています。
そんな中、今年のファンタ、ベルリンが5月1週目に当たったのが災難。同僚の理解を得て初日の土曜日、定刻に出向けそうですが、その日も含め最初の週は早出の日。と言うことは土曜日も含め朝6時半から仕事をしています。その足で映画館へ駆けつけるので、カフェインの度合いの高いコーヒーをたっぷり飲まないと眠り込んでしまいそうです。まだこの先どんな番狂わせが起きるか分かりませんが、参加作品のご紹介を。
ざっと見たところでは3分の1ほどが良さそう、他はまあまあという感じです。記事とトレイラーを見た範囲の印象です。
Control というタイトルの作品は複数あり、おもしろい作品を見たことがあります。Het tweede gelaat は2004年のファンタに参加したザ・ヒットマンの原作を書いた小説家 Jef Geeraerts の作品の映画化なので期待できそうです。 ザ・ヒットマンの原作は1985年、Het tweede gelaat の原作は1990年に発表され、本人は2015年に他界しています。 作風はスウェーデンのマルチン・ベック・シリーズのように、社会問題を織り込んだ犯罪小説。
映画の解説にはオランダ語と書いてありましたが、制作国がベルギーなのでフラマン語の作品ではないかと思います。それですとやや分かり易いです。両言語は新聞などを見ると同じなのですが、フラマン語の方が発音がやや聞き取り易いです。
ドイツ語のタイトルは「最後の犠牲者」という意味です。
ざっとあらすじ: 6人の女性の首無し死体が森で見つかっている。刑事コンビのフレディーとエリックが捜査に当たる。フレディーは性格的に規則が嫌いで、ハチャメチャなタイプ。本能的に動く。エリックは常識が働く。エリックはこの事件は彼の課に荷が重過ぎるのではないかと感じ、プロファイラーを呼んで来る。しかし成果は上がらない。フレディーは連続殺人事件と見なし、証人のリナから謎が解けるのではないかと考える。リナは半裸、記憶喪失の状態で犯行現場付近で発見された。しかしフレディーが事件にこだわり過ぎるため、捜査に支障をきたすようになる。
トレイラー: いい感じの作りです。期待しちゃうなあ。
後記: 10本の中で私はベストと思いました。これで同じ作家、同じ主演の刑事物を3本見たことになります。ザ・ヒットマンから足掛け15年。あまりしょっちゅう作って劣化してしまうより、じっくり時間をかけて時々作品を出してくれる方が私の趣味には合います。
父親が死に、反りの合わない母子が争う。娘を友人たちから引き離すために母親は町から人里離れた森の近くへ引っ越すことにする。ある日また激しい争いになった母子。娘は半分冗談で黒魔術に手を出す。それが森の精の目を覚ましてしまう・・・。
というのが紹介されているあらすじ。この話を理解するためにはタイトルになっている聞いたことも無い Pyewacket という言葉を知っていた方がいいだろうと思い、ちょっと調べてみました。
Pyewacket と書いてあるのですが、普通の辞書には載っていません。断片的に分かったのは魔女、魔法使いが使う妖精、動物などの1つのようです。ということは元から迷信。1600年代の中頃にはマシュー・ホプキンスという自称「魔女捜査官」なる人物がおり、英国で本気で魔女を探していたようです。彼の非科学的な捜査方法で300人ほどの女性が処刑されたとされています。元々は弁護士になろうとしたのですが、才能が無く、魔女狩りに転職したようです。一応法律の知識があったので、当時の法律に引っかからない方法で女性たちを処刑台送りにしたようです。大儲けしたという話も伝わっています。彼1人でイングランド中の魔女の3割を摘発したそうです。ただ、やり過ぎたらしく、2年ほどで廃業。こういう人たちと結びつけられて登場するのが Pyewacket という言葉。
と言うことは娘はこういう精霊を目覚めさせてしまったということなのでしょうか。
トレイラー: 明るい感じの娘と、どこにでもいる普通の高校生の友達。母娘の関係は一応悪く描かれていますが、原因には触れていません。なので見ているうちにどんな事情が表に出るのか分かりません。主演のムニョスはカナダ人。顔はアジア的で親しみ易い感じです。4歳から芸能界で仕事をしているとかですが、この作品ではとても自然な印象を与えます。
後記: 撮影はいい線行っていました。俳優も脇役を含めて下手ではない。その上タイトルになっている言葉を含めおもしろい筋を作れそうな題材。このページにも少し書きました。ところがそういう良い素材が生かされておらず、母親は母親の問題、娘は娘の問題を抱えたまま、あまり筋の通らない終わり方をしてしまいます。
長編デビュー作が Bone Tomahawk で、出来の良さにぶっ飛んだことがある監督。Bone Tomahawk の時にも名のある俳優を使っていましたが、Brawl in Cell Block 99 にも一応名のある俳優が出ています。
ざっとあらすじ: 元はボクサー、その後は自動車修理工、それも首になって今は小金を稼ぐために麻薬の密売人になっている男が主人公。捕まってしまい現在は刑務所。ギャングは彼が捕まっても仕事に失敗して発生した負債の請求にやって来る。妊娠中の妻が人質に取られた形。彼の役目は重警戒態勢の刑務所に行き、敵のギャグの男を殺せと、つまりはヒットマンをやれということ。目的の男はブロック99に収監されている。・・・でも、刑務所内で殺人をやって、出て来れるんだろうか。
トレイラー: ソウルっぽい音楽の感じがいいです。コメディー風だったヴィンス・ヴォーンはガラッとイメージが変わり、寝ぼけた顔はきりっとしています。暴力的な男の役ですが、かっとして暴力を振るうのではなく、目的を持ってという役です。この作品で示されるような圧倒的な体格の良さを感じていなかったので、ちょっと意外。
後記: 疲れるので私はこの種の作品はあまり好きではありませんが、それでも佳作から優秀作の間の点がつけられます。長編デビュー作の Bone Tomahawk の作りが手堅かったですが、こちらもベテラン監督と勝負できる、隙の無い作り。その上最後4分の1ほどの展開が意外で、これと似た筋の作品は見たことがありません。今回の10本の中では上の方に入ります。
2008年ファンタに参加した The Strangers の続編ですが、監督が交代し、前作の監督は脚本だけ参加。
ざっとあらすじ: 反抗期に差し掛かった娘が手におえなくなり、一家は娘を全寮制の寄宿舎に送ることを決定。娘の出発前に一家は一緒に休暇を過ごす。
そこに人殺しが絡み一家はサバイバル・ストーリーに巻き込まれるという筋運び。1作目を見た人は、前作と全然違うと書いています。登場人物の行動に一貫性が無いとありました。私は1作目はいい俳優を無駄遣いした駄作という評価でした。
2作目の監督は去年のファンタに 47 Meters Down を出した人で、新作が 48 Meters Down だそうです。47 Meters Down があほらしかったので、こちらもあまり期待していません。
トレイラー: 第1作やロバーツ監督の前作の事を考えずに見ると、ポップコーン映画の(= ティーンエージャーが気楽に見られる)ホラーとしては行けそうです。
後記: ネットには「作らなくても良かったのでは」という評価が時々ありました。私も賛成。
監督は長編デビュー。
トレイラー: トレイラーを見た限りの話ですが、、アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴのフランス版風。アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴで男たちの餌食になる女性は落ち度は無いのですが、フランス版では当初は女性も自発的に男との関係に応じた様子。1人の男を相手にしたつもりだったのが、複数の男が現われ、脱出したものの崖から転落してしまいます。それまでおばかさんだった女性が一念発起して復讐に乗り出すという展開。タイトルと中身は一致しています。
後記: アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴとコンセプトは同じで、前半が女性が酷い目に遭う描写、後半が復讐を決心して実行という流れです。こういう目に遭った女性ならこういう事を考えるだろうという点までは大半の人が納得。後半実行に移すところからは一種の夢物語で、実際の人生ではそんなことはまずできませんが、フィクションを見て溜飲を下げてくれという意味なのでしょう。
手口、行動は両作品でやや違います。フランス版ではこの出来事に責任のある男性と主人公の女性の対決シーンが所謂ハリウッド映画に比べ新味がありました。
こういう女性は黒い服を着て「ミー・トゥー」とは言わず、多くを語らず、相手を倒して行くでしょう。
見る前より点が高くなりました。
出来の良し悪しが激しい監督。ミッドナイト・ミートトレインやゴジラ Final wars のような作品を作る人が、あのVersus ヴァーサス、Alive、あずみ、荒神を作る監督と同一人物とはとても思えないです。
今回の作品は日本人俳優をほぼ排し、アメリカで撮影。解説だけを読んでいるとあまりおもしろく無さそう。
ドイツ語の副題は「君は標的なんだ」という意味。
トレイラー: 冒頭の車がパンクするシーン。短いトレイラーだけを見た印象では、形の整い過ぎたホラーと言う感じ。
後記: ファンタお気に入りの日本人監督なのですが、「なぜこんなにお金使ってこんな作品撮ったの?」という感想。ミッドナイト・ミートトレインの実力をなぜ隠すんだろう。
舞台は15世紀のアルプス。迷信が信じられている時代。人里離れた村では徐々に被害妄想や幻想がはびこって行き、ヤギを飼っている女性に魔女の疑いがかかる。
欧米共に多くのホラー映画が作られている割に、魔女を扱う作品は少ないです。前世紀初頭にはアメリカでまだ魔女狩りが行われていたことを考えると、まだエンターテイメントにする気持ちの余裕が無い、まだこの問題が歴史的にフェアな評価を受けていないということなのかも知れません。欧州は黒死病にも打ち勝ち、自力で暗黒の魔女狩り時代からも抜け出し、科学的な物の見方を広めたのですから、そろそろ魔女狩りの検証が頻繁に映画に登場していいのではと思います。
トレイラー: 画面がやたら暗いです。メイクや衣装がやたら現代的でちょっと変。
後記: 監督はまだ映画学校を出るか出ないかの、凄く若くて感じのいい青年。ファンタ主催者は今後も応援するつもりのようです。ちょっと話しました。手堅い作りで、とても新人とは思えませんでした。
言語、文化の点で二、三疑問があったので本人に聞いてみました。時代考証の専門家を雇うお金が無かったので、自分で調べられる限りの範囲で作ったそうです。なので15世紀と言って描いている部分に現実とのずれが生じています。ただ、だから映画の価値が下がるというわけではありません。
ドイツで映画を作ろうとするとどうしてもやりたい放題というわけに行かないので、これだけ手堅い技術を持った人が将来どうするかが悩ましいところです。何しろ映画はお金がかかるので、金主の言う事を聞かないわけには行きません。幸運を祈ります。
ベルリン映画祭で銀の熊賞を取っている。こちらの人が好きそうな作品。監督もベルリンでは歓迎されている。
ざっとしたあらずじ: 架空の市で鳥インフルエンザならぬ、犬インフルエンザが発生する。人への感染を防ぐために市長が犬をごみの島へ移す。市長には養子の息子がいて、彼は自分の犬を探しにごみの島へ向かう。島にいた5匹の犬が息子に協力して飼い犬を探す。
トレイラー: 絵の作りにはこれまでのアニメに無かったような新しい物がある。アメリカ人が日本を舞台に作るアニメというのも変な感じで新しい。ただ日本人として登場する人物の顔が日本的でない。そして「これが日本だ」と外国人が思っているイメージ的な画面が出て来るが、当の日本人とは恐らく意見が分かれるだろう。そこがおもしろさでもある。例えば外国人は和太鼓がえらく気に入るらしく、日本からわざわざ招いて公演をする。しかし和太鼓はお祭りなど年1回ぐらいしか行われず、日常ではない。そういった点が日本人には違和感として映る。
後記: ウェス・アンダーソンの思想に共鳴しているわけではないので、その点は永遠に平行線ですが、それを別にするとおもしろかったです。多少ミスはあっても、日本、日本語、日本文化について時間をかけてリサーチしたのか、何かのつながりがあって、日本を良く知っているのかなという感じでした。ずっとアメリカで育った人なので、敢闘賞をあげたいです。彼の他の作品より笑えるシーンが多かったです。本当の日本と、外国人が見る日本とのずれも上手く生かしてあります。原案のスタッフに日本人が入っているので、そういうずれも意識した上で作ったのかも知れません。混ざり具合が良かったです。
監督は長編デビュー。EU 唯一の英語圏になってしまったアイルランドの作品。というので期待しようと思ったのですが、どんな人も社会に取り込もうというお馬鹿さん思想の作品のようです。考え方が立派で実現したらいいなあと思いたい思想ですが、実行する段になって方法を誤るのが現実。
ゾンビが何を象徴しているのかは作品を見た後でないと分からないのですが、1度ゾンビだった人を社会復帰させようという話。
解説だけを読むと、過去50年ほどの方針の間違いに気づいた誰かの良心が咎め、今頃になってようやく考え始めたけれど、まだ自分たちがこれまで取っていたスタンスを否定するほどはっきりした結論が出ず、とりあえず考えていま〜すという乗りでで許してもらおうとしているのだろうかという風な作品に見えます。違っていることを願うけれど。
トレイラー: 子供や家庭を山車にしては行けません。
後記: やっぱりねえ。手堅い撮影、しっかりした演技と、良い点がありましたが、原作の方向が思想に偏り過ぎていて、ちょっとあほらしかったです。この種の話題を取り扱うのなら、ウェス・アンダーソン式の方がいいです。自分と全然違う思想の人間でもそれなりに話を楽しんで見ることができ、長い時間を経て見た人の考え方が変わるかもしれず、そうでなくても「そんな映画があったなあ」と良い意味で記憶に残ります。The Cured のような作品を作ると、拒絶感を抱いてしまう観客も出かねません。
ざっとあらすじ: 目隠しをされて森の中につれてこられたグループ。1人ずつにリュックサックが用意されている。中にはゲーム中に使える道具が入っている。ゲームが始まる。
トレイラー: つまらなそう。
後記: 全体の3分の2、あるいは4分の3ほどは予想通りつまらなかったです。ところがショーダウンに近づくにつれ、「あれっ」という展開になり、全然違う方向に行きます。その展開は上手で、全体の評価が上がるのですが、そこへ至るまでの作りがあまり良くありませんでした。そこにたどり着くまでにテレビならチャンネルを変えられてしまいそうです。もったいない。
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