URAtop厨房裏地下食料庫

illumination

 jaune
vert
blanc
rouge
bleu

 
 

 

イルミナシオン
illumanation
 

vert




 


 
 
 
 
 

2
 
 
 
 
 

話はまとまったのだろう。
ミス・プリンセスが書類を鞄にしまった。
「ねえ、あなた、有名なロロノア・ゾロなのね。
サー・クロコダイル、ちょっとゾロをお借りしてもいいかしら?」
「構わん」
強引にゾロは別室にひきずりこまれた。

「・・・何しやがる、てめえ!!」
「何よ!! せっかく人がただで忠告してあげようとしてるのに!!」
「ああ?」
ふとゾロはミス・プリンセスの腕に目を止めた。
みかんと風車の入れ墨・・・。
どっかで、何か聞いたぞ・・・。

「ココヤシ村だ・・・」
ゾロの言葉にミス・プリンセスの顔色が変わった。
「あんた、どうしてそれを!!」

数カ月前、
ゾロがココヤシ村にたどりついた時、
聞かされた話。
ココヤシ村の財宝は奪われて、
今はクロコダイルの手にあること。
ナミという少女がとりかえしに向かったこと。
その少女の腕にはみかんと風車の入れ墨があること。
「ノジコってのとかゲンさんってのが心配してたからよ」
ゾロは聞いたことをそのまま話した。

しばらくミス・プリンセスは俯いたままだ。
「あんた、その話、誰かに言う?」

「いいや、オレにも事情があってそれどころじゃねえんだよ」
ミス・プリンセスはゾロの言葉に嘘がないことを確信した。

「あたしはナミ。
ミス・プリンセスは仮の名よ」

「お前・・・」
「お互い事情がありそうね。
とりあえずは気をつけなさい。
ここでは下手に動くと抹殺されるから」

素性も知れぬ、
バロックワークスの面々。
ここは有象無象の世界。
その中でオレは目的を果たす。
あいつらを・・・探す。

「じゃ、もう行くわ」
ナミが軽い足取りで消えていく。

部屋に引き返しかけた時だ。
今度はメガネの男が部屋から出てきた。
「おい、お前」
ずかずかとゾロのところに歩いてくる。
「サーはこれからお出かけになる。
ついて来い」

あー、お出かけ、ね。
何だよ、コイツ。
主人がえらそうだと、
部下まで小生意気なもんかね。

つくづくオレには向いてねえ仕事だ。
そう思いながらもゾロはその男について歩き出した。
コイツ、秘書か・・。
背は、あんまり変わらねえな。
メガネなんぞかけて、
インテリそうだな。
力も無さそうだし、
まあ相手になりそうにない奴だな。

それからクロコダイルは自分のカジノや会社の夜の様子をあちこち見て回った。
どこへ行っても、
もの凄い歓迎を受けた。
あの館や庭や部屋を見ただけでも、
この男は庶民を騙しているってことが分かる。
これが英雄の実体か。
くだらねえ。
涙を流さんばかりに歓喜する人々。
ゾロは冷めた気持ちで側についていた。

この男を恨む者も確かにいるだろう。
気だけは抜けねえ。
観衆に笑みをあたえながら通りすぎるクロコダイル。

ゾロはふと、自分と同様の冷めた視線に気づいた。
クロコダイルの側を歩く男。
ミスター・プリンスと言ったか。
コイツは、熱狂していない。
高揚した表情をかすかに浮かべるクロコダイルを冷めた目で見つめている。

「誰であっても」
不意にミス・オールサンデーの言葉がよみがえる。
側近の裏切り。
ありえないことではない。
何かがひっかかる。
クロコダイルを救おうなんて思いはさらさらねえが、
コイツから目を離さねえ方が良さそうだ。

巡視が終わると、
クロコダイルの表情はがらりと変わって、
初めて見たときの冷酷な表情に変わる。
側にいるミスター・プリンスは無表情に戻る。
ゾロもまた無表情に彼等の後をついていった。

毎日、
こんなことがくり返されるのか。
くだらねえ。
実にくだらねえ。
心の中では焦る気持ちを押さえながら。

一日は長い。
何かを待ちわびていると、
あまりにも長い。

こういうのはオレの性じゃねえ。
一刀のうちに全てが終わるといい。

館に戻り、
ゾロは床に腰を降ろすした。

クロコダイルの私室に通じる最後の巨大な扉の所。
そこに入る限り、
誰が来ても目につく。
取りあえずの入り口はここしかない。
そこに居ること。
それが護衛としての役目を果たすことなのだ。

ゾロは刀を手に、ごろりと横になり、
目を閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 



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