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イルミナシオン
bleu
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10
気分が悪りい。
サンジはだるい体をひきずり、
なんとか夕食をつくりあげた。
オレはプロだから。
立っているのもやっと。
ナミさんのデザートもいつものように、きちんとつくった。
なんかくらくらしてる。
ああ、また夜が来る。
夜になると、
オレはやつらの好きなようにされる。
ゾロが来て、
ルフィが来る。
あれから、
毎夜ルフィが待っている。
ゾロは気づかないんだろうな。
いつものように、抱かれてる。
オレは、
多分、本当の淫乱なんだ。
ダレにヤられても、
腰をふってよがってる。
目をあけなければ、
誰でも同じだ。
だから、オレは目をあけねえ。
何も見ないでいいように。
見たら、何かを感じてしまう。
快楽以外の何かを。
快楽だけでいいんだ。
なのにいろいろ面倒なことを考えてしまう。
考えねえのは楽でいい。
オレはどってことねえんだ、
こんなこと。
よくある話だろ。
海賊には手ごろな性欲処理の相手が必要。
それは上手く航海を続ける大事な条件の一つだ。
どの船にもそういう役割がうまくふられている。
ルフィ海賊団じゃオレに割り当てられただけの話だ。
とてつもねえ夢のためには半端なことはやっていられねえ。
ルフィは海賊王になるかもしれねえ。
ゾロは世界一の剣豪になるかもしれねえ。
それは確かな予感として感じられる。
ほんとうに、ヤツらなら、ありうる。
ジジイに命を救われたオレ。
オレは誰かの役にたちてえんだ。
ヤられたって、減るもんじゃねえし、
妊娠もしねえし、五体満足なままじゃねえか。
一晩眠りゃ元通りだ。
どってこと、ねえ。
「サンジ君、今日もおいしかったわ」
ナミさんが極上の笑顔を向けてくれたというのに、
オレは今日は返事を返すこともできなかった。
片づけをしかけて、
目の前がぐらりと動いた。
やべ・・・。
かろうじて皿を置き、
その場にしゃがみこんだ。
「サンジ!!!!」
耳もとで誰かが怒鳴ってる。
・・・うるせえな・・・。
この声・・・誰だったかな・・・。
まあ、いいや・・・。
・・・気分わる・・・。
「サンジ!!!!」
急にテーブルの側に真っ青な顔をしてしゃがみ、
そのまま意識を失ってしまったサンジを見てウソップが大声を上げた。
あわててチョッパーが飛んでくる。
ヒト型に変身すると軽々とサンジを抱きかかえた。
ベッドに横たえ、
様子を見る。
最近、サンジはいつもしんどそうにしていた。
今日はナミにすらろくに返事をしていない。
本人はいつも「うるせえな、どうもねえ」としか言わないし。
きっちりと締められたネクタイを外し、
体を調べる。
久しぶりにみたサンジの体。
そこにはクロコダイルの館に居たとき以上の陵辱のあとが生々しく残っていた。
しばらくチョッパーの所で寝ていたサンジが最近来なくなったと思っていたら、
事態は悪いほうに動いていたのだ。
「サンジが倒れたって!!」
ルフィが急いでやって来た。
ゾロもちらりと戸口に顔を見せた。
「過労だ」
何が過ぎているかは、はっきりしている。
「あ、もしかしてヤりすぎ?」
ルフィがしまったという顔をした。
ゾロは黙って戸口に立っている。
「分かってたんなら・・・・何で?」
チョッパーの言葉に、
ルフィはゾロを振り返った。
「サンジに決めさせたいんだ。
どうしたいのか。
ゾロもそれで納得してる」
ルフィの目がゾロを捕らえた。
敵を見据えるときの厳しい目だ。
ゾロの目もルフィを捕らえていた。
魔獣の瞳。
一瞬のうちに部屋の気温が下がるような気がした。
空気の密度が一気に上がり、
二人の体からは炎が立ちのぼるようだ。
チョッパーはぞくりとし、
体を震わせた。
本気だ。
ルフィもゾロも。
本気で戦えば、
どうなるか知っている。
だから、戦わないだけで・・・。
どうして、
こんなことになってしまったんだ。
誰も望んじゃいない。
ルフィもゾロも望んじゃいない。
誰かが悪いわけじゃない。
なのに・・。