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イルミナシオン
bleu
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13
サンジは飢えた体を持て余していた。
どうしてだか、ゾロが何もしなくなった。
ルフィが何もしなくなった。
まるで二人で示しあわせたかのごとく。
それまで毎夜、
誰かに抱かれていたのに。
ヤってほしい。
誰でもいいから・・・。
オレを滅茶苦茶にして、
バラバラにして、
快楽の海に落としてほしい。
ゾロに抱かれたい。
どんなに蔑まれてもいいから、
あのたくましい体に抱きしめられたい。
ルフィに抱かれるのは・・・恐い。
快楽の奥にある見たく無いもの。
肉欲以外の何か。
キモチいいだけでいい筈なのに。
ゾロに抱かれると、
気が狂わんばかりにキモチいい。
お互いにとっての快楽の道具。
体が壊れない限り、
お互いに快楽を貪り続ける。
サンジはデッキで素振りをしているゾロに近づいた。
ゾロは脇目もふらずに剣を振り下ろしている。
サンジはその様子をじっと眺めていた。
汗にまみれた、たくましい体。
欲情してくる自分を感じる。
この体は自分に快楽をくれる。
そう思うと、もうダメだ。
ケモノのように情欲にまみれたい。
ゾロにぶちこまれて、喘ぎたい。
もうこれ以上、落ちるとこなんてねえ。
ゾロは刀を振ると、
濡れた瞳で背後に立ち続けているサンジを振り返った。
うるんだ瞳。
かすかに乱れた吐息が、
既に性交中の空気を吐き出している。
今すぐ、その黒いスーツを引き裂いて犯してやりたい。
強烈な欲望と、
それにあらがい続けるなかで、
気づいた、一つの事実。
サンジにとってのセックスは逃避。
逃避。
精神的苦痛からの逃避。
現実からの逃避。
快楽への逃避。
色情狂の媚態。
そう仕向けたのは自分。
それから、あの男。
サンジを仕込んだクロコダイル。
こういう瞳のサンジは誰も映さない。
ルフィは言った。
「ゾロはサンジの体だけでいいのか?」と。
完全に落ちている体。
なのに抱けば抱く程イライラが増す。
ルフィと共有してもいいと思っていたのに。
この船にはサンジが必要なのだ。
ルフィにはサンジが必要なのだ。
では、オレは?
サンジはオレのなんだ?
ただの性欲処理の相手だった時期は過ぎてしまった。
確かにそう思っていた時もあった。
思いの他、
バカで、
ガキみてえなところもあって。
仕事はきちんとこなすし、
いざって時には後をまかせられる存在でもあることも知った。
それともう一つの夜の顔。
サンジには自制心ってものが欠けている部分がある。
どこか歪んでいる。
女に対する卑屈でブライドのない態度もそうだし、
抱く男に対して従順で何でもするところもそうだ。
バカみてえに強情なところもあるくせに。
サンジのセックスが逃避であるとすれば、
ヤツは楽な相手を選ぶはずだ。
それはルフィも気づいているはずだ。
分かっているからオレたちは待っていたのだ。
不安定な心、
堕落した体を支えるために必要な儀式。
バカバカしい。
キモチよけりゃそれでいいはずだ。
オレの体はサンジを欲しがっている。
サンジもオレが欲しくてここにきた。
いつものように犯せばいい。
何だ、この感情は。
コイツはオレの「獲物」だったはずだ。
体はたぎっているのに。
気づいてしまった事実。
体だけじゃ決して満足できねえってこと。
ルフィのところには行けねえサンジに。
欲情した姿はオレには見せられるのに、
ルフィには見せられないのは何故だ。
ルフィはくりかえし言う。
「サンジ、アイシテル」って。
オレはそんな言葉はもってねえ。
オレでなく、
ルフィについてきたサンジ。
バカだな、コイツは。
ルフィの目を見たとき気づくべきだ。
コイツは何にも見えて無い。
うそなどつかない。
ごまかしなどしない。
ひたすら真直ぐな未来の海賊王。
オレには「アイ」など無駄なものだし、
必要ない。
考えたこともねえ。
だがルフィと同じ目でサンジを見ている。
答えなどいらねえ。
事実だけが全てだ。
イライラして集中できねえワケ。
必要以上にこのアホにきつくしてしまうワケ。
言葉にする必要などねえ。
言葉など、いらねえ。