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イルミナシオン
bleu
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15
ルフィは月明かりにきらめく波を見ながら、
一人船首に座っていた。
船で一番前の場所。
お気に入りの特等席。
月の眩しい夜だ。
以前なら、月見酒をかこつけて宴会をした。
だけど今はそんな気分じゃない。
サンジを抱かなくなって、
どれくらいたつのか。
サンジの「味」を覚えてしまったら、
それが食えない反動はすげえ。
ここはまるで飢餓の島だ。
食いたいの食えねえってキツイなあ。
だけど、このまま食ってたら、
サンジはいつか二度と食えねえところにいっちまう。
あいつは自分の死とか将来には無頓着だから。
自分よりオレの命が大事。
自分よりゾロの命が大事。
体の奥深く埋め込まれた罪悪感。
サンジは一度だけゾロのところへ行った。
サンジを性奴みたいに仕込んだゾロ。
そんなに貶められたいのか。
そんなにオレから逃げたいのか。
そっちには光じゃなくて闇しかないのに。
逃げられると思ってるのか。
オレの「アイシテル」って言葉を恐れるサンジ。
何で?
お前、あんなにじいさんを「アイシテル」じゃないか。
この船の仲間を「アイシテル」じゃないか。
お前は、ゾロを「アイシテル」。
お前は、オレを「アイシテル」。
オレから逃げるな、サンジ。
もう、お前の逃げる場所はない。
背後に人の気配を感じたが、
ルフィは振り返らなかった。
最近、毎夜感じる気配。
ルフィは毎夜船首で待つ。
振りかえってなんかやらない。
言い訳もさせない。
オレは待ってる。
雨の夜も、
暗闇の夜も、
ずっとここにいる。
ま、たまに寝ちまうけど。
サンジ、お前には分かってるはずだ。
だから早く「愛されたい」って言え。
早く「愛され」に来い。
サンジを「アイシテル」のはオレだけど、
オレに「愛されたい」のはサンジだろ。
お前が「ココロ」から思うまで待ちつづける。
だって、もうお前にはココしかねえから。
サンジ、
「愛」は恐くなんかない。
「愛」したからってお前が変わってしまうわけじゃない。
「愛」することは罪深いことじゃないんだ。
だからオレは待つ。
「アイシテル」から待つ。