URAtop厨房裏地下食料庫

illumination

 jaune
vert
blanc
rouge
bleu

 
 

 

イルミナシオン
illumanation
 

bleu





 


 
 
 
 

16
 
 
 
 
 
 

ゴーイングメリー号は順調に航路をめざしている。
昼間は騒がしく、
にぎやかな船も、
夜になると姿を変える。

最近は、
ルフィは夜になると船首に行き、
ゾロは別のところで修業をする。

あれから、
ゾロはサンジを抱かなくなった。
一分一秒も惜しんで修業するゾロ。

ルフィはいつもここに座っている。
だれがなんと言おうと、
「待ってるんだ」
それだけ答えていつもそこにいる。

サンジはルフィから離れたところに腰を下ろして、
膝をかかえた。
最近は毎日そうしている。
そうしてただルフィを見る。

まだ少年らしさを残した背中。
だがその心はどんな海賊にも負けない。

オレにはそんな値うちはねえよ。
ルフィにそこまでさせる値うちは、ねえ。
ルフィを見ていられない。
ゾロも見ていられない。
前は何かを見る余裕すらなかった。
抱かれて疲弊した体を支えるだけで精一杯だったから。
慣れた体は愛撫を欲してうずく。
なのに誰も抱いてくれねえ。
昂る体を慰める方法はクロコダイルに教えられた。
後だけでイってしまう体。
一人で慰めたあとは、
とても憂鬱な気分になる。

嬌声をあげて精を放つ自分と、
未来に向かって進むあいつら。

ルフィはオレを「スキ」だという。
バカみてえ。
知ってるはずだろ。
オレはお前の船だから、
乗った。
自分で乗ったんだ。

ガキのくせにオレより強い男。
ゾロも一緒だ。
ココロが強え。

だからお前らといたら、
オレも強くなれる気がしたんだ。
生まれ変わって、
違う自分になれるかと思った。

でも、ゾロはそれを許さなかった。
過去を消すことなんてできねえって。
単なる欲望の標的。
だけど、どんなにヒドク抱かれても、
オレはあいつを受け入れていた。
オレのココロは壊そうとしなかったから。
 
 
 
 

ルフィは違った。
体もココロもかき混ぜる。
「アイシテル」
なんて言葉を本気で言う。

嘘やごまかしを何一つしないルフィが、
毎日毎日、言う。

オレにはてめえはまぶしすぎるんだ。
ずっと穴蔵の中にいたオレを眩しい出口で待ってるお前。
分かってるよ。
オレだってお前のこと「スキ」だ。
オレの命よりお前の命が大切と思ってる。

オレには無縁だ。
誰かを「アイ」したり、
誰かに「アイ」されたりすることは。

そんなもの無くたって生きてきた。
これからだって生きていける。

だけど、
ルフィに「アイシテル」って言われたら、
胸が苦しくなる。
体の力が抜けるようで、
動悸が激しくなって。
ルフィを見ていられなくなる。

だってルフィはみんなの船長で、
オレだけのモノなんかじゃなくて。

伸ばされた掌。
向けられる笑顔。

一緒に行きたい。
一緒に行きたい。

あたたかい笑顔。
あたたかい体。

側にいたい。
ルフィの側に。

オレはあそこに行っていいのか。
ルフィの側に。
寒いな。
ここは寒い。
この海域には冷たい空気が流れ込んでる。
こごえるような風が何日か前から吹き始めている。
ここに座ってるだけでも、
しんしんと冷えてくるのに、
あの船首は風が通り抜けている。

ルフィ、
もういい。
そこに居るな。
オレを待つな。

そんなお前を見たら、
オレはどうしていいか分からなくなる。
だけど、
部屋に入ってぬくぬくと寝ることもできねえ。

じっと座ってるルフィを見る。
毎夜、
毎夜、
見る。

見てるだけだ。
なのに苦しくて、
苦しくて、
離れられない。

そこへ行ってもいいのか?
そこはお前の一番大切な場所。
大切?

アイシテル
アイシテル

そんなこと、もうとっくに分かってる。
もう知ってる。
ルフィはオレを「アイシテル」
オレはルフィを「アイシテル」
もう知ってる。

他の誰かをルフィが愛しても、
オレは構わない。
そうだろ。
オレが誰かの「たった一人」になんかなれるはずがねえ。
でも、オレの「たった一人」は、
ルフィ、
お前?

まぶしくて、
まぶしくて、
かがやいてる、
太陽の子供。

オレは言葉を失って、
お前を見る。
ただ見る。
いつまでも。

お前、
オレを待ってくれる?
夢の象徴。
奇跡の子供。
未来の海賊王。

アイシテル。
胸の中で溢れる想い。
オレ、お前の笑顔が「スキ」だ。
お前の戦う姿が「スキ」だ。
信じて戦う姿が「スキ」だ。

アイシテル。
そう思うと涙が出そうになる。
アイサレテル。
そう思うと涙が出そうになる。

この世の中にルフィは一人しかいないから。
代わりなんかねえ。
オレを待って座ってるルフィ。
バカだ。
てめえは。

何で、
そんなにオレを待つ。
信じそうになっちまうじゃねえか。

「サンジは特別なたった一人」
って言葉を。

お前、
なんでそんなにオレをアイシテル?
お前の言葉は本当?
言葉なんて信じられねえと思って生きてきたけど。

ひたすらまっすぐで、
何一ついつわりがない。
信じていい?
信じて?
 
 
 
 
 
 



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