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イルミナシオン
bleu
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17
サンジは俯いていた顔を上げた。
風が一段と冷たくなり、
白いものがはらはらと舞っている。
雪だ。
サンジはしばらく舞い落ちる雪が積もる様子を見ていた。
それから雪が積もっていくルフィの姿を見た。
麦わら帽子に、
半そでの肩に、
真っ白な雪が積もる。
白くなりながに背を向けて座りつづけるルフィ。
不意に胸が熱くなった。
何故だか涙がぼたぼたとこぼれおちた。
ルフィは降りしきる雪の中、
背後から近づいてくる気配を感じた。
それまでの冷たさは嘘のように消えていく。
振りかえらずに声をかける。
「サンジ、アイシテル」
もう数え切れないくらい口にした言葉。
ぽたり。
背中に温かい液体がかかる。
「サンジ、スキだ」
伝わるものならば、
何万回言ったっていい。
だって本当にそうなんだから。
スキなものをスキといって何故いけない。
誰がなんといおうと関係ない。
大切なのはキモチだけだろ。
ゆっくり振りかえると、
そこにはハデに涙を流してるサンジの顔があった。
「サンジもオレをアイシテル?」
泣きながらうなずくサンジをルフィは抱きしめた。
伝わった。
オレのココロがサンジに。
サンジのココロがオレに。
待った時間なんて関係ない。
冷たさとか、
孤独とか、
退屈な時間とか、
ガマンとか、
飢えとか、
そんなもの大した問題じゃない。
価値があるものには全てを賭けてあたりまえなんだ。
ルフィは腕の中のサンジの体をなでた。
柔らかい髪。
細いうなじ。
ああ、ヤりてえなあ、久しぶりに。
これからいっぱいサンジにエロいことするんだ。
いっぱい犯してやる。
そしていっぱい抱きしめてやる。
サンジのキモチを尊重して手をひいたゾロ。
あの精神力はさすがだ。
オレたちは同じ船に乗ってる。
オレは一度つないだサンジの手を離さない。
絶対に離さない。
サンジは誰にもやらない。
そう言っていたゾロ。
気をつけないと。
もう他の誰かに攫われないように。
オレだけのものにしないと。
なあ、サンジ。
お前はオレのたった一人の特別な相手。
大切な大切な相手。
お前が笑うと、
しあわせなんだ。
抱きしめると嬉しい。
これから、
イロイロあるだろう。
一緒に行こう。
ケンカしたり、
戦ったり、
サンジのメシを食って、
ずっと側にいる。
ずっと、
ずっと、
オレをアイシテ。
オレにアイサセテ。
「ナミさーーーん。デザートです」
ナミは楽しそうなサンジの横顔を見た。
いつものようにナミだけにはテーブル席が用意されている。
「うめえーーー」
デッキでは皆がおやつを欠食児童のように食い散らかしていた。
「サンジ君、それ隠した方がいいわよ」
ネクタイを締めてないサンジの首筋から赤い痣がのぞいている。
「えっ、あっ、あのクソゴムがっ!!!」
真っ赤な顔をしてあわててシャツのボタンをとめるサンジ。
ああ、そういうこと。
前なら、
真っ青な顔をしてボタンとめてたのに。
もうMr.プリンスのころとは違う。
顔つきが、違う。
思いつめて、
追い詰められていた顔。
淫らで、
扇情的な表情。
それは男たちを狂わせて引き付ける無意識の媚態。
けど今は、そりゃ相変わらずキレイだけど。
ああ、明るくなったんだわ。
子供っぽい時もあるし。
サンジ君は変わった。
変えたのはルフィ。
やっと「愛する人」を見つけたんだわ。
おやつを食べ終わってゾロがこっちにやってきた。
まだルフィやウソップはデッキでいろいろやってる。
ゾロもサンジ君が好きだった。
ちょっとやり方は悪かったみたいだけど、
見てて分かった。
ルフィたちの所でわめいているサンジ君を見る。
ルフィをどつき、
ルフィがサンジ君の近くによっていって、
何か言って。
そしたらサンジ君は笑った。
ちょっと照れたような、
そして恥ずかしそうで、
それでいて誇らしそうな、
息を飲むような美しい笑顔。
わたしはそれをじっと見た。
ゾロもそれを見ていた。
それからぼそりと言った。
「オレはあんな顔をさせられねえからな」
ナミはゾロに微笑みかけた。
「ゾロ、あんたいい男だわ」
「ぬかせ」
心の底からそう思った。
この船に乗ってよかった。
良かった。
良かったわね。
サンジ君。
良かったわね。
ルフィ。
愛は全てを変える。
滅びの愛もあれば、
救いの愛もある。
手を繋いでいよう。
一緒に笑っていよう。
泣くときも一緒に。
やっと見つけた相手。
決して離れてはいけない。
アイシテルから。
ずっと、
ずっと。
未来に向かって。
手は繋いだままで。
END