VE2ZAZ方式で試すGPS 1ppsロック10MHzOCXO(Aug 7〜Oct 20. 2010)
先輩のS氏JF1IQQが、GPS受信モジュールの1pps出力を利用して10MHzのOCXOをフェーズロックする実験を見て、「こういうのも有るよ・・・」と送ってくれたのが
VE2ZAZ
の
A Simplified GPS-Derived Frequency Standard
基板。GPSの1ppsとOCXOを使うところまでは同じだが、
制御方法
が全く異なる。
これは以前から同好のハンドメーカー
Kaneko氏
からも情報を頂いていた。お送り頂いてから既に4ヶ月を経過してしまい恐縮していたところに夏期休暇となったので、帰省する日(8月7日)の日中にテストしてみた。
写真がその様子。搭載した
OCXO
はダブルオーブンで制御電圧が0-10V。通常のロジックレベル5Vにオフセットを付けレベルシフトしている。現在は未だGPS受信モジュールは実装せず外部から1ppsを放り込んだ。
なおこのOCXO出力はSign波であるが、波形整形ICの手持ちが無いためICソケット上でパススルーしている。本当に動作しているのか分からないが、現状ではOCXO制御出力が6.9V(制御出力OP-AMP:R7/R8=100K/100K)で安定しており、収斂値である5.45V付近まで落ちて来ない。10MHz周波数で見ると約1.7E-7程度のずれがあり可笑しい。それで抵抗比を大雑把にR7/R8=1:1.36程度に変更すると2.7E-8程度になった。一定の範囲まで追い込めば後は自分で修正すると思うのだが・・・どうも解せない。(2020.08.07)
秋月電子に発注した波形整形用LTC1485(4個)が届き実装する。これによる特段の改善は無い模様。(2010.08.15) LTC1485実装でOCXO出力の波形整形確認。GPS受信基板(
Leadtek LR9543
)を実装し1ppsを内部でつなぎ込む。フロントパネルにGPS/Manualの切替SWと設置、配線を施す。(2010.08.21) RS-232C用TTLデータ取り出し、レベル変換しRS-232CとするがPCとの通信NGの模様。PIC出力は50μs周期のPWMで電源投入時25%だったデューティが9時間かけて45%程度に増加。この時制御出力はR7/R8=100K/62Kで約4V(オシロ)・・・まだ低い。(2010.08.24) そのまま24時間通電するとデューティ比は60%前後に上昇し制御出力は5.2V(オシロ)程度に上昇している。そして10MHzで1周期ずれに要する時間が約30秒(3.33E-9)にまで伸びている。この方向に進み、通り過ぎるのか収斂するのか興味がわいてくる。しかしちょっと時間がかかりすぎではと前述のKaneko氏に尋ねると同意見だった。ちなみに、ポテンショメータで*E-10級にセットしているマニュアル側と切り替えると、制御電圧の差はオシロスコープの輝線1本分も無い。またRS-232Cは、PC側シリアルポートを4800baud/8 bits/1stop bit/no parity/no flow controlに設定する必要があると助言を頂き設定したが、相変わらず通信NG。もしやとTx/Rxの方向性を入れ替えたが同様だった。カモン社の変換ケーブルの改修版の問題?、GPS受信基板との通信はこれでOKだからPIC側のプルアップの違いか?。通信が可能になればソフトで制御出力にオフセットを与えることが出来、収斂時間の短縮が図れるのだが・・・。(2010.08.25) さらに24時間通電するとデューティ比は64%前後に上昇し制御出力は5.23V(デジタルテスタ)に上昇している。10MHzで1周期ずれに要する時が約130秒(7.7E-10)にまで伸びている。この辺りになるとプリセットしたマニュアル側と同等かそれ以上の精度になった感がある。非常に低速度(13s/div)だが、波形は未だ右へ移動(10MHzより低い)している。これが何処まで追い込まれるのか楽しみだ。
さてRS-323Cで通信できない件で、モニターソフトをPort1で起動させ、基板上のTxtoRx端子をオシロで確認。PC側はキー入力しても受け付けない。ボタンの操作はマウスで可能。Txは常時Hiで時折何かの拍子でLowになる。Rxは常時Low。PCと同じRS-232C-TTL変換(
カモン9-KE改修
)をGPSモジュールへつなぎ専用のモニターソフトを起動させると問題なく通信が可能。変換器のPic側のプルアップ状況が違うのか・・・MAX232C等の専用ICにする必要があるのだろうか・・・。(2010.08.26) 連続通電中の電源を8月27日昼誤って切ってしまった。その後8月29日昼から再テストをするが30日の朝再び誤操作で電源断。その後30日昼より連続通電再開。8月31日の午前中までは、波形が右に動く状況(今までのテストと同じ)が続き、1周期ずれに要する時間は最大で約2分だった。
ところが同日昼に確認すると、な何と左に動き出している。この状況は9月1日朝も継続し、1周期に要する時間は1分程度になっている。
余談だが久し振りにOCXO単体のドリフトを微調整してにると、1/10周期(1Div)ずれの範囲に9分程度留まった(その後1/10周期の前後をドリフト)。1周期に換算すると約90分になり、1.85E-11程度の短期精度になる。この数字から、GPS/1ppsによる周波数ロックはもう少し真面目にやらないといけない。(2010.09.01) さらに翌朝、ドリフト方向が左で同じだが、精度が格段に向上している。1周期ずれに要する時間は50分程度(3.3E-11)に改善されている。この数字は昨日のOCXO単体の数字の凡そ半分。暫く様子を見ているとドリフトが静止したり右に反転していたりする。しかし長期的には左へ向かっている。このあたりのオーダーになるとリファレンスのThunderboltのドリフトも気になる。やはり3者以上の比較が必要かも知れない。
基板を提供して頂いたS氏JF1IQQのご厚意により、RS-232C変換用IC(MAX232C)が昨日2個届いた。近いうちに実装してみたい。(2010.09.02) さらに翌朝、ドリフト方向は変わらないが、1周期ずれに要する時間は3分程度(5.6E-10)程度に低下。さらに12時間後、ドリフトは同じ方向で、1周期に要する時間は18分30秒程度(9E-11)に改善。(2010.09.02) 12時間後状況は変わらない。帰省のため通電停止。(2010.09.03) 電源を投入すると今度は右へゆっくり動く。1周期に要する時間は1分程度に悪化。3時間経っても状況に大きな変化が無い。RS-232Cの通信が出来ないのはひょっとしたらプルアップの問題?と、8.2KΩでプルアップを試みたが、誤って12Vラインから供給。これが原因なのか分からないが、ロックは外れ、出力LEDは消え、VCO制御電圧激減となる。その後通電をするが復旧せず、ややトホホ。(2010.09.05)
先輩のS氏JF1IQQから最新のファームウェアを流し込んだPIC18F2320が届いた。PIC18F2320はPIC18F2220の上位互換品らしい。
一時は藁にもすがる思いだったので感激であった。交換して様子を見る。電源投入と同時に出力LEDが点きOCXOが10MHzを出力した。
リファレンス(ThunderBolt)も同時に電源投入。波形が落ち着くまで数分を要したが静止するまでには至らない。
15分程度通電すると制御出力は5.12Vで、10MHz出力は右に流れ(10MHzより低い)1周期ずれるのに約1秒(1E-7)を要している。
さらに8時間後、制御出力は5.15Vで、同じ方向で1周期ずれに約10秒(1E-8)を要すまでに改善。またさらに4時間後は同じく5.18Vで、同じ方向に15秒(6.7E-9)程度に改善。暫く通電を続け様子を見る事にする。
写真は届いたPIC18F2320(10MHz版)のクローズアップ。
余談だが不良になったPICからデータの吸出しが出来ないかと後輩から
秋月電子のPICライタ
を借りてきた。しかし残念なことにPIC18F2220には非対応だった。
なおVE2ZAZのサイトには最新のファームウェアがHEXファイルでアップされている。これをDLしライタでPICに流し込めば最新のマイクロチップを手中に出来る。(2010.09.10)
さらに24時間後(制御出力失念)、波形移動は左方向に変わり1周期に要する時間は30秒(3.33E-9)に改善。(2010.08.11) さらに12時間後、制御出力5.27V、波形は左移動で1周期に要する時間は約1分(1.17E-9)程度に改善。 さらに6時間後、制御出力は5.24V、波形は右移動に転じ1周期に要する時間は20分(8.3E-11)程度に改善。(2010.09.12)
ここまでで安定度の改善が見られたのでここで一旦通電を休止。懸案のRS-232Cポートを組み込む。またStatus-LEDを
Bi-Color LED
に変更
専用のTTL-RS232C変換チップ
MAX232C
の動作は見事で一発でPCとの通信が可能となった。やはり手を抜いてはいけない。
下表はRS-232C経由でPCモニターに表示されたデータ。表の一部はデフォルメし全体を真四角画面にしている。
表示内容や数字は通電開始から約24時間後のもの。
左はPCからのRS-232Cケーブルを、9Pin-Dsubコネクタ経由で基板上のMAX232に3本(TxD/RxD/GND)でつないでいる様子。
このあと背面パネルに9Pinコネクタを取り付け、GPS-Rxのデータと切替える機能を組み込む予定。(2010.09.13) 背面パネルに角穴を開ける。3mmのハンドドリルで、罫書きの内側をなぞり穴開けしニッパで切り落しヤスリかけ。配線済み部分に注意しながらパネルを取り外し、缶詰の缶へ突起に注意しながら乗せ作業した。コネクタは内側に配置する予定だったがパネル厚があるために外面に変更。そのためリード線を外して再半田する事になった。専用の6角柱ボルトが部品箱を探しても無い。固定はしばらくお預け。(2010.09.15)
背面パネルに開けた角穴に9Pin-Dsubコネクタ(メス)を取り付けた。
左は角穴開け作業の様子。既に配線済みの環境に細心の注意を払う。
下はコネクタを取り付けレタリングを施しケーブルを差し込んだ様子。MiniJackのDATAはGPS-Rxモジュールの通信ポート。TTLだが外部変換ケーブルでRS-232Cに変換する。
両者をSWで切り替えようとも考えたが、両方同時に監視が出来ないのでこの形をとっている。(2010.09.19)
マルツ電波のPICライタ
MPIC06-Kit
を購入・試作し、PICのコピーやHEXファイルの取り込みなどの実験をする。(2010.09.28) 左はVE2ZAZモニタ画面と、NMEAモニタ画面を表示させた様子(画像クリックで拡大)。前者はCOM1(PC/D-SUB)により、後者はCOM5(RS232C-USB変換)で接続している。PC1台で複数のCOMポートを使う場合拡張基板が必要だが、最近はUSB変換を利用する方がリーズナブルだ。(2010.10.05) 下は、1Hz比較のオリジナル機(左)と比較している様子。矩形波がオリジナルでジッタを伴い収斂動作中。正弦波がVE2ZAZでほぼ静止(1E-10台)している。(2010.10.11)
まとめ・・・感想
(2010.10.20)
@GPSを利用して裸のOCXOより1桁以上の精度が容易かつリーズナブルに得られる。
AOCXOの制御電圧に応じた対応が基板側の設定で行え汎用性がある。
BモニターソフトでOCXOの状態を監視できるが、周波数は外部リファレンス(GPSやRb)でトリガしたオシロスコープに比べ数値が厳しい。
CファームウェアやプログラムがVE2ZAZサイトで公開されており、個人でPICライトが出来る。
DシリアルI/Fがあるが、TTL⇔RS-232Cへのレベル変換が必要。
EVE2ZAZ/Bertの対応は素早く大変良心的である。
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