4 「で、まんまとホれたわけか」 公立の中学校に冷房完備なんてありえないので。 「はあ?」 「カエルが。副委員長に」 カエルは焦って、周囲を見渡した。 その明美先輩はと言えば、教室の中心点を囲うようにして並んだ机の、一番上座に。 「明美先輩、なんか具合悪そうじゃねえ?」 「なに」 なによそれ。 不快指数が最高点に達して、カエルはぷーと顔を膨らませた。 好きだとか嫌いだとか。 チャイムが鳴って、のろのろと明美先輩が机から起き上がる。 「ええっと、じゃあ美化委員会を始めまーす」 |
委員会が始まってしばらくしても副委員長は現れなかった。 各クラスが大掃除の取り組みを発表していく。 本来は副委員長の務め、のはずの書記係は明美先輩が兼任して、ノートに報告をまとめている。 先輩は明らかに眠そうで、聞いてるのかかなりあやしかった。 「次ー。次は、二年二組ですよー。……あ、カオルちゃんだ」 名指しだ。 「はいっ」 勢いよく返事をして、報告文を読み上げる。ほとんど副委員長が書き上げた無駄な大作だ。 「 ―― というわけなんで、補充の必要はなさそうです」 以上報告おわりっと元気よく締めくくったけれど、先輩の次ーのお声が掛からなかった。 「遅れました。すみません」 先輩、と声を掛けようとしたどんぴしゃで、副委員長が遅れて到着した。 私の名前はカオルです。 きっとそんなことは、副委員長の知ったことではなかった。 「明美、大丈夫?」 固まったまま動かない先輩の背後から声を掛ける。 「りっちゃん……」 どうしていいか分からずに立ち尽くしたまま。 「カエル」 それが自分の名前だと気付くまで、一瞬のタイムラグ。 「はいっ」 カエルの返事を待たずに、副委員長はすでにドアの向こう。 「ええとー……」 あはは、といまだ衝撃のシーンの余韻が消えない美化委員たちにごまかし笑いをしながら、 つまり、 (もしかしなくても、私はまんまとフられたわけか?) |