良い子は信じちゃいけません
超偏向極私的 各話解説
(ウド編)

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4話「バトリング」

全編通して唯一、高橋監督自身の脚本による回です。
「バトリング」のコンセプトをスタッフに説明する……というのが主目的であったようですが、わたしとしては「この回のキリコ」に注目したい。

というわけで、例によってキリコちゃんの行動のトレスから……

 

◆キリコの行動フローチャート◆ チャートのみ呼び出す

>> 蒸し焼きになりかけたトコロを、謎の消防隊*1(笑)に助けられる。

>> ゴウトの事務所で手当を受ける*2。ココナと再対面。
  「すべてに価値観を失っていたおれは……というより、おれには最初から
   この世での価値観や目的など、なかったのかもしれない」

>> バトリングの選手契約をしかけて…中断*3。スタジアムへ

>> ファンタム・レディを目撃

>> スタジアム控え室で絡んできた選手を挑発。「所詮あそびだ」*4

>> 格納庫で殺気を感じる。
  「殺るか殺られるか、この気配を嗅ぎとるのだけがおれの取り柄だ」*5

>> リアルバトル。すり替わった相手、「例の殺気の主」がコニンだと気づく。

>> ショックを受けつつも、間一髪(?)コニンを倒す

>> 治安警察の手入れ。放心状態*6のまま捕まる

なんとなく、他の脚本家のキリコとは一味違う…ような気がします。
モノローグが饒舌なのは、他の方の脚本でもそうなんだけど、その“饒舌”ぶりが、なんとなく違うんですよね。「自分はこういう人間だ」って自己認識がある程度できているというか……全体に「(初期のキリコにしては)人間くさい」気がするのです。
それは、「カントクが考えるキリコ像」を「キリコ自身に語らせる」という形をとってしまったから…なのかもしれませんが。*2で引用したモノローグなんか、モロそれっぽいし。実際、キリコはその通りの人間だとは思いますが、そのことをキリコ自身が言語化出来るほどにハッキリと自覚しているか?っていうと……わたしはちょっと、疑問に思います。
とは言え、「どんなものであれ、描かれたものはそのまま受け止める」というのが、わたしの基本方針ですので、勿論このシーンもそれなりに受け止めてはいますよ。
「そんなこともタマに思ったりもするけど、深く考えないで、流しちゃっているんだろう」……程度に(^^;)。
*5のモノローグは、時代劇…というよりは、日活ヒーロー系と申しましょうか、いわゆる「孤高でニヒルなハードボイルド系ヒーロー」路線なんだけど、なんとなく笑ってしまうのは、わたしだけでしょうか?
キリコの「かっこよさ」って、そういう、いかにも「ニヒルで孤高で……」の部分とは違うところにある、ってわたしは思うんですよ。企画当初はこの路線だったのかもしれないけど、結果としては、ね。

あと気がついた、というか気になったことひとつ。ゴウトがキリコをスカウトするシーン、その前後のココナがチャチャを入れるシーンも含めて、やたらと「仕事」って言葉が出てきません? そもそも、2話の暴走族の人間狩りのところでも「この仕事のないご時勢に…」なんてセリフもありましたよね? 3話のココナやバニラの登場シーンでも。
人間が生きるためには食ってかなくちゃならない。食うためには仕事をしなくちゃならない。当然のことではありますが、アニメでそれが前面に出るのって、すごく珍しいんじゃないかしら? 特にロボットアニメなんて、主人公は大抵は「ロボットで戦うことで給料貰える」、もしくは「親に養ってもらっている子供」の立場にいるわけだし……。
#波嵐万丈みたいに「大金持ち」だとか、『ブライガー』のJ9みたいに
 「仕事」として、依頼人からお金貰う……みたいな変わりダネもあるけど。
で、「仕事」っていうのは、単に「食い扶持を稼ぐ」だけでなく、「それを通して社会の中に自分の居場所を定める」っていう側面もあって、『ボトムズ』における「仕事」って、その両方の意味があると思うのですが……これはまた、いずれ雑文コーナーの方ででも(^^;;)。

いかん! 肝心の「バトリング」について何も書いていない(^^;;)。
え〜と、*4の「所詮あそびだ」のセリフ、ならびに「バトリング」に関する雑感については、雑文コーナーの“「戦争ゴッコ」と「戦争」”と称した駄文で語っておりますので、よろしければ、そちらをご参照下さいませm(__)m。

それと、この回ラスト、とっとと逃げればいいものを、ぼけらったと治安警察にとっ捕まっちゃうキリコちゃん(トロい!)。*6では「放心状態」なんて書いちゃいましたが(コンプリートやデジメモのストーリーダイジェストでもそう書いてあるし〜)、なんか釈然としないものを感じます。
いや、「ショックを受けた」こと自体は否定しませんが、そんな時ほど「思考を一時シャットダウンして、機械的に退避行動に入る……」方が、「キリコらしい」気がしなくもない。
でも、「ショックで放心状態」でなかった、とすると、あっさり捕まっちゃうキリコがタダのトロニブになっちゃうし〜〜。思えば、確かに初期のキリコってトロ臭いのよね、さんざん痛めつけられてからでないと、行動を起こす(逃げ出す)気力が出ないのかしら? 「追いつめられたところでの行動力」は人並み外れていても、「やばくなる前にずらかる」っていう「こすからさ」とか「めざとさ」の類は、持ち合わせてないってことなのかなぁ……
かすかな疑問をを残しつつも、ここは一応「ショックで放心状態」を採用するとして、次の疑問。
いったい、「何が」それほどショックだったのか?

1.コニンに遭ったことがショックだった
2.「オマエはあの時死ぬべきだったんだ、キリコ曹長!」がショックだった
3.その他<おい!

妥当なところでは1.でしょうか? 例の作戦の関係者が現れ、再び自分を抹殺しようとした。これまで、訳も分からず逃げ回ってきたけれど、どうやら自分は「はめられた」らしいと気づいた。そのことに対する衝撃。
で、単に「コニンとの遭遇」だけでなく、2.の「あの時死ぬべきだったんだ」のセリフをピックアップしたのはですね……「なんか釈然としない」と前述した「放心状態」との絡みで、なんです。
あの「放心状態」は、『野望』における「発作」と同種のものなのかな〜……と。
勿論、これを作っていたときには『野望』も「異能生存体」もカケラも存在しなかったわけですから、「こじつけ」だとは百も承知ですが……
ただ、『野望』で初出の「神経症患者」という設定、アレは突然出てきたわけでもなく、そう言われるだけの「精神的な不安定さ」の萌芽は、実はこの頃からあったと言えなくもないかな……と。
この回は冒頭でも、リド襲撃作戦の記憶のフラッシュバックに苦しんでいる(らしい)描写がありましたよね? 確かに、例の作戦は「普通の兵士」ならば、トラウマになっても不思議はないような事件ではありますが、なんたってキリコは「共食い」も生き延びた猛者(これも「後付」ではありますが)ですから(^^;;)、これも「不自然」と言えば「不自然」。だけど、コレも「放心状態」と同種のものだとしたら……?

そこで、キリコを「放心状態」にまで追い込むほどの「ショック」とは何であったのか?を、改めて問い直してみると……
「己の“過去”ひいては“運命”に対するおびえ」とでも、申しましょうか。
ちょうど、「アレ(素体)」を見た瞬間の驚愕と恐怖が、単に「得体の知れないもの」ではなく、「己の“運命”を変えるなにか」だと、無意識のウチに感じていたように。
で、問題の(?)「あの時死ぬべきだった」……というのは、『野望』『赫奕』の後となっては、ある意味、キリコの人生(運命)を象徴するようなセリフですよね?
無論、この時は作ってる方も、そんなことまったく考えていなかったでしょうけど……
或いは、『ボトムズ』は、「あの時死ぬべきだった」という「呪い」をかけられたキリコが、その呪いを解くためにあがく物語……なのかもしれない。<今ふいに思いついた。


*1:ロッチナ配下のメルキア軍(情報部)、ですよね?
しっかし、2話の衛星軌道上から(?)人間の額をぶち抜く…のはまだしも、ウドの街中にワラワラと消防士(?)が現れる……ってのは、この人達いったいどこに待機してたんでしょう? 監視衛星からの指示を受けてからやって来たというなら、あらかじめウドの街にいなくては、到底間に合いませんよね?
ウドが治安警察の支配下にあるとは言え、キリコがウドに入った…という時点で、ある程度の人数を潜伏させておく、くらいのことはできるでしょうが。「あ、なんかドンパチ始めたぞ」って動きを掴んだところで、装備整えてじ〜っと見守ってたんでしょうか? それもなんだか笑える(^^;;)。(もしキリコが負けちゃいそうだったら、どうするつもりだったんだろう?)

*3:この辺り、「消費者センター」の教育ビデオに使えそう(爆)。
「悪徳商法にご用心」とか、「クーリングオフについて」とか……(^^;;)。


フィアナフリーク、ちょっとだけ語る。

「ファンタム・レディ」の呼び名が初めて出た回。「死神」のふたつ名もゴウトの口から紹介されますが、彼女の「死神」ぶりが発揮されるシーンは、結局、ほとんどありませんでしたね。この辺り、わりとフィアナfanに限らず不満として言われる部分ではありますが……わたしの見解とか、「こうだったらよかったのに」なんていうのは、また後ほど(8話の解説あたりで(^^;;))。

で、この回の彼女に限って言えば……やっぱりステキ(*^-^*)。<うっとり
貴賓席から、オペラグラスで拳闘士達の死闘を見下ろす様は、まさに貴婦人!!
予告にあった、「回るターレットからキリコに熱い視線が突き刺さる」ってのは、彼女のことだ……って、わたし、ずっと思っていたんですけど、そうじゃないのかな?(「ターレット越し」ということはコニンだったりして(^^;;))
「あの緑色の方が勝つわ」なんて、言ってほしかったかも。<ララァか?
この時側にいたのは、愛人(パトロン)ならぬ、例の運転手だけですので(彼女の座席の後ろに立って控えている処をみると、SPも兼ねているのかな?)、シャアとララァみたいなしどけない雰囲気は期待できませんが(^^;)、半ば独り言のようにボソッとクールに呟くのも、またカッコイイのではないかと…。
で、勝敗が決まったところで、すっとローブの裾をひるがえして席を立つ様も(お約束だけど)、もうムチャクチャかっこいい〜〜(*^-^*)。<フリークのフィルターかかってます。

わたしが愛して止まないフィアナは、後半の、感情的で、ワガママで、愚かだけれど、でも誰よりも純粋でまっすぐな心でキリコを愛した女……なんですけど、この辺りの「見るからに高慢で冷淡な氷の女王」……な彼女もいいなぁ。
こういう「高嶺の花」を落としてこそ男ってモンじゃなくって!? キリコ!!

……っと、ヤツはムショ行きだっけ? ほんっとにもぉ……

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