会社の先輩に街の南にあるスーパーマーケットに連れて行ってもらった。
そこはオリエンタルな食品も扱ってる所で、「S&B わさび」や「おたふくソース」なんかも売っている。もちろん、タイカレー・ペーストやナンプラ−など、他のアジアの食材も取り揃えてある。
「ここのスーパーには、珍しく魚が売ってるんだよねぇ」と先輩は教えてくれた。
そういえば、普通のスーパーでは魚を見ることがあまりない。
オランダの人は基本的に肉食だから、チーズとパンと肉とフライドポテトがあれば、食事はOKなのだろう。レストランでもムニエルかソテー位しかメニューで見たことないし。
「へぇ、珍しいなぁ」と思いながら、魚コーナーに足を運んでみた・・・。
魚コーナーを見て、愕然とした。
灰色の魚がごろんと5〜6匹置いてあって、全然新鮮そうじゃない。
まわりにはヒトデや浮き輪のオブジェの飾り付けがしてあって、子供の図画工作にしか見えない。
魚特有のテカテカした感じはなく、どよんと鈍い光を放ちながら佇んでいる彼らは、少し悲しげでもあった。横のショーケースには切り身が並べてあるが、魚の知識が乏しいせいもあり、鮭の切り身以外は何の魚か全く分らない。
ふと奥を見ると、お姉さん達が魚をさばいてる。きっと、切り身用にするためであろう。よく見ると、彼女達はバチンバチンとハサミで魚を切っているのである。
そりゃ、魚にも硬いところはあるし、包丁で魚をさばくのは技術が必要だけど、何もハサミで魚を切らなくても・・・。
「は〜あ、こりゃだめだわ。」と失望しながら帰ろうとすると、白人の女の人が来て、切り身を4切れほど買って帰った。彼らにとってはハサミでさばこうが、鮮度が低かろうがあまり関係なさそうだ。きっと家に帰ったら冷凍するだろうし。
日本では、よく年をとるとステーキみたいな油っこいものより、魚が食べたくなるという話を聞くが、オランダの人達はどうなんだろう?年を取ってもステーキとジャガイモをバクバク食べ続けるんだろうか?
火を通さないと食べれないような魚しか売ってない国の人が、日本に来て「寿司」や「刺身」を食べれない理由が良く分かる。
だって、あんな魚しか見たことがなかったら、生で魚を食べようなんて思わないもん。魚も肉も楽しめる日本は、案外素晴らしいのかも・・・。
つづく
目次に戻る
第14章に進む