*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【PTA総会での祝辞6?】

 第53号,第72号,第86号,第111号,第125号の「PTA総会での祝辞」からさらに1年刻みが重なりました。今年は総会2週間前に現会長と顧問から直々の来賓祝辞の依頼がまいりました。そろそろ交代しようと申し出ているのですが,頼まれると受けてしまいます。何を話すか,考えなければなりません。回を重ねるごとに現役世代から遠くなっていくので,話材の選択に気を遣います。迷いながら,数分のメッセージ作りに取りかかります。

 おはようございます。本日は総会が開催されましたことをお喜び申し上げます。○○小学校の子どもたちは,先生方の熱心なご指導により,学び甲斐,働き甲斐,過ごし甲斐という重点目標のもとで健やかに育っています。PTAという組織でも育て甲斐を目指して活動されていることを先輩の一人として,とてもうれしく思います。ところで,親という字を分解すると,木の上に立って見るといわれます。育て甲斐の一環として,見守るということについてお話し致します。

 見守っているつもりでも,時として見張ってしまうことがあり,後で反省してしまいます。見守るのは味方として,見張るのは敵としての立場になります。見守り続けるために,0点の大事さに気付いていただきたいと思います。0点といえば,最も嫌われるものですが,実は忘れてはならないものなのです。
 試験の採点をする際に,とんでもない間違いをしている答案があります。点数を引きたくなります。でも,マイナス点を付けずに,水に流します。できているところに丸を付けて,点数を足していきます。すべて間違えても,マイナスにはならず,ノーカウントの0点なのです。試験というのは,どこまでできたかということを見守るものであって,決してどこができなかったかを見張るものではありません。間違っても咎めずに,水に流す,それが0点の大事さです。0点は出発点です。学習するからできることが増えて,点数が増えていきます。育っているところを見守ることによって育て甲斐は生まれてきます。

 さらに念を押しておきたいことは,子どもたちの体験を0から始める形にしておくことです。途中から始める経験しかしていないと,結果として,あれがないから,これがないからできないということになります。子ども時代にしておく経験は,0から1までです。物事に生き詰まったとき,1から出直すといいます。たくさんの1までの体験しておけば,何があっても自分の力で対処できるようになります。また,見たり聞いたりしたことは1から後の経験であり,実際に自分の手でしたことが0からの体験になるということも,見守る際に気をつけておくことです。

 皆さんの今年一年の活動が育て甲斐につながるものであることを願って,祝辞を終わります。ありがとうございました。

 日ごろ講演の中でお話ししている一端を拾い出してきました。今回は雑学ネタはありません。そのことで面白みはありませんが,たまには真面目にお話ししてもいいかなと思っています。それでも,型どおりの祝辞でないことは変わりありません。お伝えしたいことを話すのが,私流です。

(2009年04月26日)