1961年、三重県名張市葛尾の公民館で行われた懇親会の席で出されたぶどう酒を飲んだ女性5名が死亡、12名が重軽傷を負った事件。
犯人とされた奥西勝さん(当時35歳)は過酷な取り調べを受け、虚偽の自白をしましたが、その後一貫して無実を主張しています。しかし、1審の無罪を2審で逆転死刑とされてしまい、無実の死刑囚として裁判のやり直しを訴え続けてきました。容態が悪化した現在は八王子医療刑務所に収監されています。2013年5月には危篤状態に。気管切開手術により、声も奪われてしまいました。
第7次の再審請求審で、名古屋高裁刑事第1部は16年ぶりに事実調べを行い、2005年4月5日、ついに再審開始と死刑執行停止を決定しました。
2012年5月25日、名古屋高裁(下山保男裁判長)は『捜査段階での被告人の自白に信用性が高い』とし、検察側の異議申立てを認めて本件の再審開始の取り消しを決定してしまいました。これに対して被告人弁護側は5月30日、最高裁判所へ特別抗告を行いました。
2013年10月16日、最高裁判所第一小法廷(桜井龍子裁判長)は名古屋高等裁判所の再審取り消し決定を支持し、第7次再審請求・特別抗告について棄却する決定を下しました。これにより再審の道はまたしても閉ざされる結果となりました。2013年11月5日、弁護団は第8次再審請求をしましたが、2014年5月28日、名古屋高裁刑事1部は請求を認めない決定をしました。
2015年1月9日、第8次再審請求異議審において、名古屋高裁刑事2部(木口信之裁判長)は、検察の証拠開示も行わず、裁判所にある証拠の謄写も認めず、いっさいの証拠調べも行わずに、高裁1部の決定を支持し、再審請求を却下しました。
弁護団は、奥西さんの89歳の誕生日である1月14日に最高裁へ特別抗告を行いました。奥西さんに面会した弁護士が、特別抗告審を頑張ると伝えたところ、言葉の話せない奥西さんは手を握りかえし、大きく頷くなど、特別抗告審へ不屈の気力を見せています。現在、最高裁判所第2小法廷(千葉勝美裁判長)に第8次特別抗告審として係属しています。
■では、事件発生当日から起訴されるまでを振り返っていきます─
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