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記事No : 2083
タイトル キリストか?
投稿日: 2013/06/08(Sat) 11:58:08
投稿者桃青

「お母さんはわざわざ認知症になってまで、あなたに法華経を受持・読・誦・解説・書写する機会を与えてくださった菩薩なのですよ。」
と、説かれた導師は、こうも言われた。
「お母さんが認知症になってくださったから、もうあなたは認知症にはなりません。」
私は、思わず立場も忘れて「そんな保証はありません。認知症は誰でもなりうる病気ですから。」と、反論してしまった。
導師は苦笑されていた。

後になって導師がそう言われ、苦笑された背景に思い当たった。
檀信徒さんの中に、次々と身の上に起きる大難を強くゆるぎない信仰で乗り切って来られた老婦人がおられた。
このかたは、最後辛い病で亡くなられたのだが、その病床で、家族の者にこのように言い残されたという。
「私の人生は辛く苦しいことが多く、今またこのような辛い病で死んで行く。
でも、な。私がこうやって皆の苦労や辛いことを全部引き受けて行くのだから、これから○○家には、良いことばかり起きるよ。
ただ、御題目だけは捨てたらいかんよ。」

この老婦人の御言葉が念頭にあっての
「桃青さんはもう認知症にはならない。」で、あったのだろう。
私は、この話もしばしば聞いていたが、その都度
「キリストの贖罪じゃないのだから、誰かが受ける因縁を誰かが身代わりに受けるなどということは出来ないだろうに。」
などと心の中で反発しながら聞いていたので、この老婦人の話をすっかり忘れていた。

「私が子孫が受ける苦労を全部もって行くのだから、もう子孫が苦労することはない。」
というお祖母さんの気持ちは、本当にありがたい。
人間がそのような考えを持ち得るというところがありがたい。
○○家の一員ではない私でも、その老婦人の心情に胸が熱くなるのだから、○○家の方々なら、なおさらだろう。

ただ、実際に○○家の人々に今後苦労があるか、ないかはまた別の話だろう。
母が「桃青を認知症にしないために、私が認知症になったのだ。」
と、思い、私もそう思ったとしても、私が認知症にならないと言う保証はない。
認知症は病気です。
「私がガンになったから、もう私の子孫はガンにならない。」とは、普通誰も思わないだろう。
ただ、ガンになられたその老婦人はそのように信じておられたようです。

ガンになって苦しむひとが
「あなたが○○家のガンを全部持って行くのだから。」
と、説かれ「そうか、子孫をガンの苦しみから解放するために私はガンになったのか。」
と、思えたら心が安穏になるのかもしれない。

私のように、「ガン遺伝子があるくらいだから、私がガンになったということは、私の子孫もガンになるだろう。のほうが、正しいのではないか。」と、思うようでは、信仰はできないということ?

いや、そんなことはない。
お釈迦様は人間の苦を深くみつめて「苦を滅する法がある。」と、説かれた。
仏教は、近代科学の知見を度外視しなくては信じることができない。
などという宗教とは一線を画す教えだ。


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