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| 棄犬小黑之謡 |
| 浪華城北百里郊， 今傳如此哀憐謡。 老翁回想壯年事， 訥訥而言過今宵。 昭和聖代繁華時， 家家皆養犬與貓。 鄰家有狗名小黑， 養主呼狗應千嬌。 一日大變天下亂， 泡沫破裂世蕭條。 鄰家養主何失策， 一夜趁黑已遠逃。 留得宅院與小狗， 無情北風一時飄。 無主小狗無可奈， 向天長嘯祗哀號。 鄰居老翁焉坐視， 收養小黑給窩巢。 小黑夜夜慕舊主， 星天孤影向月哮。 舊主不還人不來， 吠聲如泣到九霄。 憶與舊主櫻花下， 亦想舊主踏青朝。 老翁家在文化街， 四鄰都是筆耕僚。 士人不好白日業， 青燈筆墨常徹宵。 闇夜悄悄天地人， 不知人影近狗窩。 小黑相識夜來人， 不叫汪汪受佳肴。 東方欲白天地淸， 老翁始知小黑夭。 從此一帶偏平靜， 内心悲涙外不囂。 爾來星霜二十餘， 至今痛心時時騷。 請君莫問是耶非， 人間驚異傳後朝。 舊主鄰人都自私， 人性愛鄰何處昭。 |
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| 今に傳ふ 昭和の聖代 家家 鄰家に 養主 狗を呼べば 千嬌にて 鄰家の養主 一夜 無情の北風 一時 無主の 小狗 天に 小黑を收養して 小黑 星天の孤影 月に向かって 舊主 四鄰 知らずや 人影 小黑 東方 老翁 始めて知る 小黑 内心の悲涙 外に 今に至るも 君に 舊主 鄰人 人性の愛鄰 ＊＊＊＊＊＊＊ |
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棄て犬 大阪の街の北、（千里丘陵の手前の）百里程のところの， このような悲しい歌を今に伝えようとしている。 老人は、壮年の時の事を回想して， 訥訥(とつとつ)として語りながら今宵を過ごした。 昭和の御代の繁栄した時， どの家でも皆、犬と猫を飼っていた。 隣家に犬がいて、その名は黒(クロ)で， 飼い主が犬を呼べば、愛嬌いっぱいに応(こた)えていた。 或る日、大きな変事があって、世の中が乱れ， （それは）バブルがはじけて、世の中が不景気になった（のだ）。 隣家の飼い主は、何の失敗をしたのか， 或る夜、闇にまみれて夜逃げをしてしまった。 家と小犬が残って， 無情の北風に吹かれていた。 飼い主のいなくなった小犬は、どうしようも無く， 天に向かって、大声で叫んで、悲しげに啼いていた。 隣家の老人は、どうしてこれを坐視したであろうか， 犬のクロを引き取って、住み処を与えた。 クロは夜毎（よごと）前の飼い主を慕い， 星影の下、ぽつんと月に向かって哮(ほ)えていた。 前の飼い主が帰ってくることもなく、誰も来ないで， 吠（ほ）え声は泣くかのようで、天の極みにまで届いた。 前の飼い主と桜の花の下でのことを憶(おも)い出せば， 亦(ま)た、前の飼い主と青い草を踏んでの外出の時を想(おも)いだす。 老人の家は、文化人の多く住む街に在(あ)って， 周囲は、すべて文筆業（関聯）だ。 文人は、昼間に仕事をすることを好(この)まないで， 夜に研究の灯（ひ）を点（とも）して、いつも徹夜をしている。 闇夜(あんや)の中でこっそりと， 人影が犬小屋に近づくのが分からなかったのであろうか。 クロは、夜に来た人を知っていたので， ワンワンと吠（ほ）えることなく、“ご馳走”を受け取った。 東の空が明けようとして、天地が淸（すが）すがしい（時）， 老人は、小犬のクロが死んだことをやっと知った。 これより、この一帯はひたすら静かになり， 心の内側に悲しさはあっても、外側に向かっては、静かにしていた。 それ以来、歳月が過ぎ去ること二十余年， 今に至るも、心を痛め、時時、気持ちは騒ぎ出す。 あなたにお願いするが、この問題の是非を問わないで， 人の世の驚く出来事を（埋没させることなく）後世に伝えていこう。 前の飼い主や（毒を盛った）隣人など、すべて身勝手なエゴで， 人間の持っている愛隣は、一体どこで明らかになっていることなのだろうか。 ***************************** この詩の内容は、本当にあったことです。 |
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| 平成二十七年六月 十八日 十九日 平成二十八年七月 三十日 三十一日 八月 一日 |
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