本日の授業 第7日 

◆ The Strange World ◆
(見慣れぬ世界)

 

まで塾で使っていた地図帳は、私の家にあったものでした。
しかしなぜか載っている統計などが古く、実に10何年も前のデータ。
そこでおもむろに発行を見ると、昭和62年と記載。
あ〜、どうりでソビエト連邦があるはずだわ。
ドイツも東と西とに分かれてるしなあ。
などと言いつつも、人に教える立場でそれはさすがにまずいだろーと思い、
本屋で新たに買って参りました。
ピカピカの『中学校社会科地図』定価1400円也。
平成11年発行。これなら文句あるまい。
しかし、パラパラめくって思ったんですが
最近の地図って昔のとは結構違いますねえ。
なんと言うか、ビジュアル面をかなり意識してる。
もちろん化粧が濃いロックバンドとかではなく、
たとえばその土地土地の人々の生活の写真は入るわ、
名産品や動植物のイラストはちょこまかと入るわ。
視覚的に分かりやすく表現しようと努めてるのか、
あるいは見て面白くないと生徒が見ないのか。
文字だけじゃ最近の子どもたちは理解できないのかしら、
なんていらぬ不安はさておき
とりあえずは見て楽しめるというのは良い事でさぁね。

て、そんな中、昭和62年発行の地図には明らかに無かったもの。
それは1ページめの見開きにありました。
普通の、日本を中心とした世界地図がどーんとある、その下に
『ヨーロッパを中心に置いた地図』そして
『南半球を上にした地図』。
これは私が今までに見てきた市販の地図帳ではまだ見たことが無かった。
最近の地図はなかなか面白いですな。
でもこれって結構意義深いことなのでは?
なぜって、地図の描き方というのはある意味、その人々の世界観の表れでしょうから。

日本は世界の中心 見慣れた世界地図 (カラメトル図法)

本中心の地図ばかり見慣れてる日本人は、
どうしても日本が世界の中心じゃないかなんて思いがち。
「いやいや、思わない、思わない」
なんてツッコミを入れようと思った人、ほんとにそうならいいんですが。
私も「日本なんてちっぽけな国」だと頭では考えていたんですが、
実際にヨーロッパ中心の地図などを見ると
「あ、やっぱりちっぽけだったんだなあ……」と改めて気づかされた感じがしました。
こういうのは頭で考えてるだけじゃなくて、実感してみないと分からないもんですね。
もちろん普段からそういった地図に見慣れてる人ならいいんですけど、
ちゃんと自分の目で見て、感じないと、はっきり言い切れないような気がします。
日本は、この島国は、やっぱりちっこい島国なんです。
米軍基地辺りで放送してるラジオ、FEN(Far East Network)なんかを聞いてれば分かるとおり
日本はFar East、極めて遠い東の果てなんですね。
そんな地域発の日本人が、海外なんぞに出てブイブイいわしてる。
あるいは「神の国」だとか考えてる。
いや、まあ別にその良し悪しはともかくとして、
もう少し「ユーラシア大陸東方地域」系住民、としての思いを抱いていてもいいのではないか、と。

や、もちろん日本だけじゃありません。
さきほど「ヨーロッパ中心」地図、と書きましたが、それこそその最たるもの。
「ヨーロッパ中心」。
たとえば帝国主義時代の英国あたりはそんなに偉かったのでしょうか。
そんなに「世界の中心」なんでしょうか。
日本が東の果てのチンケな島だとしたら、
イギリスだって単なる西の果ての貧相な島です。
たまたまグリニッジ天文台があるから経度的には0度なだけで、
もしグリニッジがトンガ王国にでもあれば、トンガが世界の中心だったかもしれません。
いわばヨーロッパなんぞ、辺境の地。
自分のいる所を中心にしたいのは、「おらが村」と考えたいのは
誰しも同じだとは思いますが、
だからこそ地球の上での自分の位置取りを見直す必要があるのではないでしょうか。

ヨーロッパは世界の中心 ヨーロッパの世界地図

んなことを痛感させてくれるのが、「南北さかさま地図」です。
これは、見慣れていない者にとっては
まるでロールプレイングゲームのどこかの世界の地図のよう。
これだと日本もイギリスもあったもんじゃない。
あるのは大陸と、左の方にちょっとひん曲がって飛び出た半島状の陸地と、
右の端には河口付近にごちゃごちゃっと固まったような三角状の島と。
あ、これが日本でこれがイギリスか。
ゲーム上のマップとしてみれば、世間を避けて生きる仙人でもいそうな場所です。
そんな所なんですね、自分が中心かと錯覚している地域は。
結局、中心も辺境もないってことでしょうか。
ましてや国境などという考えは、思いもつかない。
あるのは、陸地と、海と。ただそれだけ。
地球という陸と海のかたまりにとっては、
その上に寄生してる醜い生物の政治的力学なんて関係ないんです。

これも同じ世界 さかさまの世界地図

ては、地球の上での平等な出来事。
地図帳にある各地の写真も、その土地に適した生活を写しただけ。
あるのは「違い」のみ。中心も外れも、良いも悪いもない。
そういった見方で地図は眺めるべきでしょう。
「日本にいながらにして世界の様子を学べるんだからすごいよねえ」
そこで私が生徒に言うと、ある一人が応える。
「全然面白くない。オレ地理嫌い」
「えー、そう? でも実際、歴史とかよりは実生活に関わってると思うけど」
「関係ない。チョーめんどくさい」
「んなこと言うなよ。将来外人と接するかもしれないし、そんな時に役に立つかもよ」
「いい。そんな時ない。オレ一生日本出ないからいい」
はいはいそうですか。そんならもう好きにして頂戴。
とか言いながら、そんな奴にかぎって
将来海外で働くようにとかなっちゃって、
現地で国際結婚とかしちゃったりして、
「中学校時代に塾の先生があんなこと言ってたなー」なんて
微塵さえも思い出しやしないんだろうなあ。
あ〜あ。

 

人間が自分の都合で勝手に作った道具

 

◆ 本日の問題 ◆

日本の首都・東京の位置をおよそ北緯36度とすると、
次の都市は東京に比べて北? 南? それともほぼ同じ?
それぞれ考えてみてください。

1.ラスベガス(アメリカ合衆国)

2.テヘラン(イラン)

3.ジブラルタル海峡(スペイン〜モロッコ間)

4.キャンベラ(オーストラリア)

 

 

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