一筆書きマニア  
                     講師:目ペン美子

今回のテーマ : 超・解法

 

人生。同じ道を二度とはたどれぬもの。
だからこそ人生は美しい。
しかし時には、自分の手でそれをどうにかしたい、とも思うのが世の常。
一筆書きも同様。
同じ道をたどらないという潔さこそが、人々を魅了する。
いわば、人生を賭けた知への挑戦。
しかし、そんな一筆書きを何とか自分のモノにしたい、そう考えるのもまた事実。
そこで今回は、そんな悪魔的魅力を放つ一筆書きについて、
学術的な面からその解法へと迫って参りましょう。
どのような図形が一筆書きをすることができるのか?
世にあるすべての図形は一筆書きにすることが可能なのか?

自分の目で、自分の紙と鉛筆で、確かめていきましょう。

はじめに、説明に際していくつかの用語を決めておきます。
まずは、図形の中で何本かの線が集まっているところを「点」と呼ぶことにしましょう。
たとえば「田」という図形では
一番左の辺に3つの点、真ん中の辺に3つの点、そして一番右の辺に3つの点、
合計9つの点がある、と言うことができます。
また、それぞれの点に集まっている線の数を見ると、
図形の中央の点には(点を中心に見て)4本の線が集まっている、
また四隅の角っこの四つの点にはそれぞれ2本ずつの線が、
そして残りの上下左右の点には3本ずつの線がそれぞれ集まっている、と数えることにします。
さらにその中で、2本・4本といった偶数本の線が集まっている点を「偶数点」、
1本・3本など奇数本の線が集まっている点を「奇数点」と呼ぶことにしましょう。
「田」の図形では偶数点は5つ(中央と四隅)、奇数点は4つ(上下左右)ですね。
ちょっとまわりくどいですが、お分かりいただけますか?
いちおう説明のための定義ということで。

さて、いよいよ本題ですが、
まずは一筆書きの基本。
それは「出たら必ず入る」ということです。
たとえばみなさんも、トイレに入ったら必ず出るでしょう。それと同じです。
ある一点から出て始まった線は、必ずどこかの点に入って終わる。
図形とは基本的に、このように形作られます。
始まった線はどこかで終わらないと、図形として成り立ちません。
ということは、この「出て→入る」、あるいは「始まって→終わる」という法則に従っている図形は
一筆書きが可能ということになります。

分かりやすい例としては、「□」という形。
この図形には4つの点があり、それぞれの点が2本の線で成り立っています。
線が2本ということは、各点において「出て→入る」あるいは「入って→出る」という操作が当てはまる。
「始まって→終わる」ということが可能です。
よって、この図形はどこからでも一筆書きが可能、ということになります。
次に「8」という形。
この図形の中央の点には、点を中心に見て数えると合計4本の線が集まっています。
4本ということは、「出て→入って。出て→入って。」という操作を繰り返せば良い。
「始まって(→終わって→始まって)→終わる」ということが可能です。
つまりこの図形も、どこからでも一筆書きが可能ということになります。
つまり、ここまでで言えることは、
「すべての点が偶数本の線でできている(=すべての点が偶数点である)図形は
どこからでも一筆書きが可能」
なのです。


《練習》
 実際に紙を使って書いてみましょう。頭の中だけでは味わえない趣があります。

     @ 星? どこからでも書けるはず      A 城? どっからでも書けまっせ

 


 

では次に、奇数本の線でできている点(奇数点)がある図形はどうなるか。
奇数本の線が集まっているということは、その点では
「出て→入って→出る」あるいは「入って→出て→入る」という操作をすることになります。
がいずれにせよ、全体として「始まって→終わる」ことが可能であればいいのです。
たとえば、「日」という図形。
この図形には、2本の線でできている偶数点が四隅に合計四つ、
そして、3本の線でできている奇数点が中央に二つ。
この場合、一筆書きはどうなるでしょう。
まず、奇数点のどちらかから書き始めてみましょう。そこから「出て→入って→出る」。
するともう一方の奇数点では「入って→出て→入る」という操作をすることになります。
この最後に入った時点で、終わり。見事に一筆書きが完成しました。
これをもし、どこかの偶数点から書き始めるとどうでしょう。
そうなると、書き始めた点で終わらせることも、、2つある奇数点のどちらかで終わらせることも、
どちらもできません。これは失敗ですね。
奇数点のある図形は奇数点から書き始めなければなりません。
さて、次の図形。「6」これはどうでしょう。
この図形には点は二つ、いわゆる数字の6の書き出しの点と、左の3本の線の集まる点。
6の書き出しの点を1本の線でできている奇数点と考えれば、
この「6」の図形は奇数点が2つある図形ということができます。
この図形の一筆書きは……もちろん可能ですね。
「日」の時と同じように、2つの奇数点のどちらから始めても可能となります。

それではもし、奇数点が1つ、あるいは3つ以上だったら???
1つの場合、「出て→入って→出て」……そのあと終わらせることができません。
3つ以上の場合も、2つの奇数点を使って「出て→……→入って、終わり」となった図形を
それ以上続けることができません。
つまり、奇数点があってもいいのは2つのみ、
1つや3つ以上では一筆書きはダメ、ということになるのです。

ということで、ここまでの結論。
「一筆書きの図形には、奇数点は0か2つのみ。
 奇数点のある場合は、そのどちらかから書き始める」


《演習》
 ちょっと図が見にくいかもしれませんが、自力で考えてみてください。

     B カメラ? 奇数点から始めよう   C 猫型ロボット? 始まりはいつも奇数点 

 ほらほら、ちゃんと紙に書いてますか?
 

 


 

と、ここまでの内容はごく一般的なことです。
別にマニアでなくとも知っている人も多いかもしれません。
しかし。あなたは一筆書きマニア。どんな図形でも一筆書きができるようでなくっちゃ。
ということで、次の図形にも是非とも挑戦してみてください。


《実習》
 試行錯誤は実際に紙の上(?)でどうぞ。

     D イコール? えっ?   答えはここをクリック

     E 田んぼ?  まさか……   答えはここをクリック

 

いかがでしたか。
紙と鉛筆さえ用いれば、どんな図形だろうと一筆書きは可能なのです。
もはや一筆書きも三次元の時代。
必要なのは、紙と、鉛筆と、
そして、あなたの勇気です。

 

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