ウォーキングマニア 
                           講師:御徒町子

今回のテーマ : 早歩き

 

全国6千万の歩け歩けマニアのみなさん、こんにちは。
しっかりと人の足元を見ながら歩いていますか。

さて、最近一大ムーブメントとなっているウォーキングですが、
実際歩くといってもその状況はさまざまです。
のろのろ歩いて、世間とは違う時間の流れを感じたいということもあります。
それなりの速度でしっかり歩いて靴をすり減らしたいという時もあるかもしれません。
あるいはまた、「もっと、もっと速く歩きたい」と思うこともあるでしょう。
たとえば、トイレに行きたくなってきた時。
誰かにつけられているのではないかと自意識過剰な時。
渡るつもりも無かったのに目の前の横断歩道の信号が点滅し始めてしまった時。
そしてなにより、ゆっくり歩きたくない時。
そんな時、あなたは早歩きをしたいという欲求にかられ、
自分の足というコンパスの許す限りさくさくと歩みを進めることでしょう。
ですがそれにも限度があります。
ある程度の速度以上になると、おそらく走るという状態になってしまうはずです。
そうなればもはやウォーキングとは言えません。
競歩の世界では、両足が同時に地面から離れてしまう状態では
歩きとは言えず、失格になるそうです。
我々の目的はあくまでもウォーキング、歩きにある。
足が地に着いた状態でこそ、歩いていると言える。
しかし、願わくばもっと速く。より速く。さらに速く。
そこで今回は、「歩き」という概念にこだわった上で
もっとも速い究極の早歩き、その方法を一緒に考えていきましょう。

歩きの要素には、二つあります。
「歩幅」と、足の「回転数」です。
歩幅とは一歩で進む距離、回転数とは一定時間における歩数。
この二つを使えば、一定時間に歩く距離、つまり歩く速度は
「歩幅×回転数」と表すことができます。
ということは、早歩きの速度を上げるためには、
歩幅か回転数のどちらか(あるいは両方)を増やせばいいということになります。
しかし、実体験に照らして考えてみてください。
歩く速さがある限界までいけば、それ以上速く歩くことはできなくなるでしょう。
歩幅を無理やり長くとればその分回転数は落ちてしまうし(ムリのある大また歩き)、
回転数を上げればその分歩幅が短くならざるを得ない(ちょこまか歩き)。
こんな歩き方では速度は上がりません。
ましてや歩幅と回転数の両方を上げることなど不可能。
「歩幅×回転数=速度」、その速度は限界までくると後は一定なのです。

回転数と歩幅は反比例  回転数=S/歩幅 (S:限界速度)

結局、他方に影響を与えずに一方のみを増やすことはできない。
となれば、限界の早歩きを超える速度は出せないことになる。
ということは、この「限界の早歩き」こそが究極の早歩き……
などとしてしまうと、当たり前の事実で話が終わってしまいます。
この、限界速度の早歩き、これを超える早歩きこそが究極の早歩きなのです。
問題は、どう超えるか、です。

足の回転数を限界以上に上げるのは、人間工学的に不可能です。
一分間に何千回転もできたらそれは体がレッドゾーン。
そこで、もう一つの要素である歩幅をアップさせましょう。
ではどのように歩幅を伸ばすか。
通常の歩き方というのは、いわばコンパス状態です。
歩幅は、コンパスが前後に開く角度に影響されています。
これだと足そのものの長さを歩幅に有効利用できていませんが、やむをえません。
足を開きたくても、歩ける歩幅以上には開けない。歩幅を稼げない。
なぜなら重心が高いため、体重を支えきれないからです。
あまりにも足を開きすぎながら歩くと、体重を支えられず不安定になってしまう。
先ほど述べた「ムリのある大また歩き」状態ですね。
体重を支えるという理由のために、コンパスの開く角度が限られてしまう。
だから歩幅をそれ以上伸ばせない。
ということはつまり、すべては重心の高さが問題だったのです。
早歩きに限度があるのは、重心が高いからなのでした。
それならどうすれば改善されるのか。
そう、重心を低くすればいいのです。
腰を落とし、ひざを曲げる。背筋はまっすぐ
(背筋が曲がればその分重心は不安定になります)。
この状態で足を踏み出してみてください。
おそらく、足の長さに限りなく近い距離まで、足を伸ばせるはずです。
次に一歩。さらに一歩。さらにまた一歩……。
これだと、一歩の歩幅は理論上
「足の長さ×左右合わせて2本分」に近い距離を進めることになります。
しかも回転数にはほとんど影響を与えません。
通常の回転数を保ちつつ、歩幅が飛躍的に伸びる。
これであなたの早歩きは目に見えて速くなります。
今までの歩き方を発展させた、この「低重心歩行」。
これこそが、究極の早歩きなのです。

こいつは 速いぜ!  腰を落として、究極の早歩き。


上の実写映像では、分かりやすいように少々ゆっくりやってみました。
しかし実際にやってみれば気がつくことと思いますが
この歩き方は、速度が遅くなればなるほど大腿部の筋力を必要とします。
あくまでも早歩きですから、あまりゆっくりで歩いてみようとはせず
目標とする距離を一気に歩ききったほうがその速さを体感できるはずです。
また、慣れるまでは普通の直立の早歩きから
徐々に腰を落としていくという移行法もいいでしょう。
いずれにせよ、この早歩きを身に付けてしまえば
あなたのウォーキングは鬼に金棒です。
歩く速度を緩急自在につかいこなし、
ぜひとも自分の肌で空気を感じてみてください。

究極の早歩きで
あなたは今、風になる。

 

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