小市民マニア  
                  講師:小市民男(こいち たみお)

今回のテーマ : 目立たながり屋

 

全国7千万の小市民の皆さん、こんにちは。
地味に生きてますか?
しかし世の中難しいもので、
地味に生きたいと思ってもついつい目立ってしまうのではないか、
そんな不安にかられてしまうケースもまた出てきてしまうのが世の常。
そこで今回は、いかに目立たず地味に物事を進めるか、
その小市民の基本となる考え方を三つ、ご一緒に勉強していきましょう。
その三つの考え方とは
「埋没」、「対比」そして「演出」です。

 

1. 埋没

目立ってしまう、その原因の一つは「とびぬけている」からです。
木の葉を隠すには森の中が良いように、
とびぬけて目立ったりせず、大勢の中に埋没させてしまいましょう。

(例) 服にケチャップの染みをつけてしまった……

よくありますね、こんなこと。
「うわ、この染み、目立っちゃう。みっともない、恥ずかし〜」
なぜ恥ずかしいかと言えば、目立つからです。
その染みを目立たなくするにはどうするか。
そう、全体に埋没させるのです。
服全体にケチャップの染みをつけてみましょう。
言ってみれば、服全体がケチャップ模様。
そうすれば「ああ、こういうもんなんだな」と見る人全てが納得する。
ほーら、もうさっきの染みがどれだったかなんて全く分かりません。
一ヶ所だけだった染みも、すっかり目立たなくなりました。
全体の中に埋没しているものほど、目立たないものはありません。

 

2. 対比

これだけは他人に知られたくない、
これだけは目立たなくしておきたい、
そんな風に思うことも、誰しもあるでしょう。
そういう時には、他にもっと目立つものを作って
他人の目をそらしてしまうのです。

(例) 髪の寝ぐせがひどい……

「うわ、すごい寝ぐせだなあ。でも直してる暇ないし、目立っちゃう〜」
こんなことも、場合によってはあるでしょう。
しかしその目立つもの、寝ぐせ自体は直せない。
そんなときは、もっと目立つものを作り、そちらに意識を引き付けるのです。
たとえば、髪を金髪にする。
こうすれば、あなたを見た人はまず「おっ、金髪だ」と思います。
「おっ、寝ぐせがすげー」などと真っ先に思う人は皆無です。
金髪にする時間も無ければ
ショッキングピンクのスーツを着る、
上半身はセーター、下半身はビキニパンツで出かける、など
代わりの方法はいくらでもあります。
あるいは、あなたそのものに目を行かせたくなければ
首輪をつけた人間をペットとして引き連れていく(できれば素っ裸の)、
などの方法をとれば、もうあなたのことを見る人などいないでしょう。
あなたの寝ぐせなど、もはや気づく人もいません。
もっと目立つもの、さらに目立つもの、
比べるまでもなく目立つもの、それこそが一番目立つのですから、
あなたはその陰に隠れていればいいのです。

人権は擁護しましょう これで寝ぐせもどこ吹く風

 

3. 演出

どうあがいても、他人に気づかれている、他人に指摘されてしまう、
そんな事態も状況によってはあるでしょう。
そんな時は、見せ方を工夫するのです。
できるだけ目立たないように見せる見せ方、そんな演出が必要です。

(例) 成績が下がってきた……

学校のテストの成績が最近どんどん落ちてきた。
あるいは社会人の方でも
営業成績がめっきり落ち気味。
そんな経験は誰しもあるでしょう。
そして、親や上司にこれから叱られるということも分かっている。
そういう時にはどうするか。
成績の見せ方を工夫して
「あれ、そんなに落ちてるって感じでもないか……」
と思わせてしまえばいいのです。
しかしもちろん、データをねつ造などというのはダメです。
小市民がそんな大それたことをしてはいけません。
正直に公表、しかし上手に公表、その上で相手の印象を変えればいいのです。
たとえば、自分の成績をグラフで表してみる。
縦軸に成績(点数、売上額など)、
横軸に時間(第〇回テスト、あるいは〇月度売上、など)を表示。
しかし普通に作ってしまったのでは、明らかに右肩下がりが目に見える。
誰が見ても落ちてます。
そこで、グラフの幅を考えるのです。
縦軸の成績の目盛りは出来るだけ狭く、
横軸の時間の目盛りは出来るだけ広くとる。
上下はどんづまったような、微妙に横長なグラフの作成ですね。
たとえば縦軸の点数を、10点を3ミリ間隔でとっていき、
横軸の時間を、一回ごとに3センチ間隔でとっていったとしたら……
毎回10点ずつ下がっていったとしても
このグラフを見る限り、下がり方は実になだらかです。
「あ、思ってたほど落ちてるって感じでもないな。まあこれからがんばれよ」
1時間にも及ぶ説教の予定が、わずか一言二言で終わってしまいました。
見せ方を工夫するだけで、こんなにも結果は変わっていくのです。
この場合、数字そのもののデータをポンと見せてしまえばこうはいかなかったでしょう。
内容は同じでもいかに印象を変えるか、これが「演出」なのです。
演出によって、いくらでも目立たなくすることが可能です。

正直すぎる右下がり 同じ内容のグラフ2点 極端に、より極端に横広がり

 

いかがでしたか。
このように、小市民のみなさんにとって
目立たなく生きる方法はいくらでもあります。
今回のこの三つの考え方、
「埋没」「対比」「演出」、これらを肝に銘じて過ごしていけば
ますます地味な、目立たない日々を送れることでしょう。
目立たない日々とは、すなわち無難な日々。
難の無い日々とは、これ幸福な日々。
21世紀の幸福とは、小市民こそが握っているのです。
小市民の皆さんに、幸あれ!

それでは最後に、皆さんご一緒にご唱和ください。

「幸福求めて、地味な日々!」

 

 

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