舞城王太郎 10 | ||
SPEEDBOY! |
とっくに読み終わっていたのだが、考えがまとまらずに感想を書かずにいた。今頃書いているが、結局大したことも書けないのをご容赦願いたい。
『煙か土か食い物』に代表される初期の舞城王太郎作品は、エグさもさることながら文章が極めて読みにくかった。しかし、物語としての起承転結は明確だったと思う。
『熊の場所』や第16回三島由紀夫賞受賞作『阿修羅ガール』では文章が洗練されてくる。それが作家舞城王太郎にとっていいことかどうかはさて置き、テーマも物語も掴みやすい。この当時が、一般の読者が最も手を出しやすかったと言える。
そして近年。文章はどんどん読みやすくなっていく一方で、物語はあってないようなものになってきた。『みんな元気。』は僕には理解不能だった。もはや舞城作品にわかりやすさを求めてはいけないのだと知ったことが、『みんな元気。』を読んでの唯一の収穫だ。
約2年ぶりとなる新刊は、講談社BOXという新レーベルから刊行された。さらに文章が読みやすくなり、さらに理解が難しくなった。成雄というミサイルに匹敵するスピードを誇る少年が登場する。これ以上言いようがない。『山ん中の獅見朋成雄』に登場する同名の少年とは別人らしいが…。新レーベルから出す理由がさらにわからない。
今では舞城王太郎は純文学の作家と認識されている。僕ごときに容易に見透かされるようでは、舞城王太郎は作家として終わりなのかもしれない。『SPEEDBOY!』とは結局舞城王太郎自身のことではないか。読者を置き去りにして我が道を行く。スピードの果てにあるものは舞城にしか見えていない。編集者さん、正直に言いなさい見えないでしょ?
いやきっと違うんだろうな。何を書こうが的外れなのだ。今後も舞城王太郎という作家について行くべきか否か、悩ましいところである。というより、とっくに振り切られているか。