年明けのアキバは、新たなる冒険を求める勇者どもでいっぱい。みんな、それぞれに夢と希望とお金をもって、自分なりの財宝を手に入れるためになりふり構わず血眼です。

「千○電商へ言ってみよう。あそこなら店員さんに恐ろしい突っ込みでニセ勇者の化けの皮をはがれる心配もないし。」

「勇気を出して聞いたほうが早いんじゃない?」

「なにを聞いていいかわからないから恐ろしいんじゃないか!」

人は闇を恐れるもの。でも本当に恐ろしいのは闇という「場所」ではなくて、闇という「理解されていない」「とらえ所のないもの」が恐ろしいのです。ぼくも、店員さんにききたい物事が「理解されていない」「とらえ所がない」うわべだけの知識なので、自分になにもないことがしれるのが恐ろしい。知識の闇というやつでしょうか。

千○電商は、セルフサ−ビス式のお店で、お客さんはほしいものをレジに持っていけば後はお金を払うだけ。この間のコネクタ屋さんみたいなしろうと排除目的の恐ろしいおせっかいはありません。すべて自己責任。まちがっても自分に対して泣き寝入りすれば済む。ああ、ぼくにピッタリ。

「三端子レギュレ−タは...あった。」

小さなひきだしがたくさん並ぶ中に、「三端子レギュレ−タ」と書いてある列が見つかりました。

「たくさんあるね!わ〜、3.3ボルト/14アンペアなんてのまである!デ−タの紙もついてるよ!」

「よし!動きそうなの、端から買いまくりだ!」

でも、ひとつ二千円とかするので、手ごろなのを絞って二種類買うことにしました。出力は秋○のキットのものとちがって3.3ボルト固定です。これを秋○の三端子レギュレ−タ回路に組み込めば、3.3ボルト出力の電源容量は、引っ張ってくる5ボルトの容量の制限以内にしろ、1アンペアよりも上になることはまちがいありません。

家に帰って、さっそく件の三端子レギュレ−タのデ−タの紙を広げました。

「うわあ、これ、異国のことばだ!」

はるか遠く、海を隔てた魔法の国家で使われている異国文字です。ちんぷんかんぷん。でも、なにかエキゾチックな感じです。異国の魔術師たちの考え方が見えてくるみたいで、しかも、それが、この国の魔術師たちの考え方とは組み立てが違うことを感じたりするとうれしくなるので、ぼくは読めないくせに、異国の魔道書が大好き。で、いっしょけんめいにそこに書いてある図面とかを見ながら使い方を研究しました。

「ああ、この記号や図は、秋○のキットの取説のと同じだ!」

「国は違っても、理屈はいっしょだもの。」

見覚えのある三端子レギュレ−タの記号と、抵抗、発振防止のコンデンサ、それぞれの能力の数字が少しちがうだけで、あとはそっくり。光が見えます。うきうきします。

「コンデンサの頭になにかことばがついてる。できれば、そうしたほうがいいって書いてあるみたい。」

トホホ妖精は少しは異国文字の意味がわかるようです。ぼくはいっしょうけんめいにその文字列を読み取ろうとしました。

コンデンサの属性を表すことばのようです。ぼくは異国のことばを意味はわからないまでも、音に替えてみることが少しはできます。

「たんたる...ああ、タンタルコンデンサ、聞いたことはあるな。」

元素のすべてを知ろうとした北国の大魔導師、かのメンデレ−エフが作った横並びの魔方陣の一角にその名をとどめる秘密の金属タンタル。その金属で作られたコンデンサです。名前だけでも、すごく性能よさそう。

「よし、その財宝探しの冒険だ!」

次の日、ぼくたちは再びアキバの地へ。コンデンサ探しのために、あちこちのお店を回ります。

「ううん、なかなかタンタルコンデンサって、ないねえ。」

秋○も、千○も、鈴○も、T○ゾ−ンにもありません。探し方が悪かったのかもしれないけど。ただの電解コンデンサならどっこにでもころがってるのだけれど。

「お店の人に聞けばいいのに。」

「こわいからいやだ」

ぼくにとっての最大の冒険はお店の人にものを尋ねることなのかもしれません。でも、不快な思いをするくらいなら、可能性のありそうな部品を全部買って端から試したほうがいい。ぼくは日本砲兵伝統の一発必中という考え方よりも、アメリカやソ連の砲兵が、敵のいそうな地域をまんべんなく公算射撃することで、面破壊を行って、敵を確率的に無力化するという豪快な考え方の信奉者なのです。(ぼくのおじいさんは砲兵だったらしい)いにしえの名将の残した偉大なことば、「一発必中の一門は、百発一中の百門に値する」は訓練をたくさんしなさいというニュアンスで語られた精神的な心構えであって、じっさいに一発必中の一門と百発一中の百門が撃ちあったら最初の一撃で一発必中側は戦力ゼロ。片や99門が残ります。戦争は必中側の負け。それを、ことばのかっこよさだけ真に受けてランチェスタ−法則に照らしてまともに計算しようとしなかった昭和の軍人たちと、それを真に受けた当時の世論はとってもおばかさんです。軍事バブル時代とでもいいましょうか。ノスタルジ−とことばのカッコよさだけで戦争すると負けます。国を運営するとつぶれます。カッコよさの中に、なにもないという現実を忘れたときに。歩兵をわざわざ装甲擲弾兵なんて呼ぶロ−マ帝国かぶれの国とか・・・

そんなこんなで、最後にたどり着いたのがラオックスのマック館の斜め前のネジを売ってるお店。そのダンジョンの上の階には、忘れ去られた財宝の宝庫があることを思いだしたのです。工具やケ−ブルにまじって、抵抗やコンデンサ−もあったような気がしました。今まで、必要がなかったので覚えていなかったのです。

「ここになかったら、どうしよう!」

「お店の人に聞けば。」

「どうしよう!」

エスカレ−タの上で不安が増幅されます。目的のフロアに降り〔昇り?)、目当てのコ−ナ−をめざします。

「タンタルコンデンサ...あった!」

引き出しはあったものの、中に入っていたのはたったふたつ。二つとも小皿に乗せます。

「わ〜い、あったあった。」

やっと手に入れることができたコンデンサを、昨日買った三端子レギュレ−タとともに、秋○の電源キットに組み込みます。出力は可変じゃないので抵抗を組み込むはずのところはジャンパします。

「できた!」

630につないで、テスタ−をはさみ、スイッチオン!いきなりG3アクセラレ−タつきでテストしました!

「ぽ〜ん」

いつものように一度リセットがかかります。問題は、次の段階です。

「うごいた!」

思わずガッツポ−ズ!ざまみろ!得意の悪態が口を突きます。

「すごい!2.5アンペアだって!」

おそるべしG3アクセラレ−タ!起動時に2.5アンペアも食われた日には、秋○のキットではひとたまりもありません!でも、こうしてぼくの630はG3マシンになりました!うれしさ500%!その日はただただベンチテストをとりました。

でも、やっぱり電源容量45ワットというのは、増設したHDD専用電源のことを考えてもやっぱりプアです。

というわけで、ぼくの頭はもう次の冒険へと飛んでいたのです。

ちなみに、三端子レギュレ−タを動作中にショ−トさせると、「ばちばちッ」と音がして、電圧が入力から下がらなくなります。永遠に。新しいものと交換しましょう。

 

開発コ−ド名「ミンスク」! 6200の電源 840AV基板
でっちあげ6400 恐怖!アメ車タブレット!