ぼくの630、すてきな630は、みごとにG3マシンになったのですが、ぼくは電源に関してはまだ満足はしていませんでした。

「45ワットでしょ?6300/160とかは、150ワットの電源でしょ?それって、かなりムリさせてるって事じゃない。電源の寿命が早くきそうだよねえ。」

エジプトのファラオにはじまって、なにかにつけ、人は永遠を望むもの。よくかんがえれば、コンピュ−タなんてものは使い捨てで、せいぜい使って三年。そんなものに永遠を願うのは笑止のかぎりで、よく販売店の広告に「メモリ永久保証!」なんてコピ−を見つけるたびに「バカがよう、シムなんて規格自体が何年続くンだよう!」などど罵声を浴びせていたぼくでしたが、こと630にたいしては、ひたすら永遠を願うただの親バカユ−ザ−に成り果てていました。

「やっぱりなにかあってからじゃ遅いからな!今のうちに電源について、保険をかけておこう!」

反動とは恐ろしいものです。スカジ−ドライブの時もそうでしたが、三端子レギュレ−タなんて未知だったものを、浅知恵がついて、ちょっとわかった気になってしまった今では、ぼくはすっかり電源マニア。広告に「電」や「源」や、「三端子」なんてことばを見るだけで、すっかり飛びつくようになってしまっていたのです。

「じゃ、アキバいこ、アキバ!」

五千年も前に、ファラオ達に永遠をそそのかしてピラミッドなどというものを作らせた実績を持つトホホ妖精にとって、これはまたとないチャンス!さっそくぼくの理性をふきとばし、バ−サク状態にしてしまいました。土曜日はバ−サク状態になりやすい。

「でもなあ、6300/160の電源なんか、そうめったにお目にかかれるアイテムじゃないよなあ。」

「でもホラ、6400筐体みたいなこともあったし!」

「最近の630筐体のジャンクって、みんな電源無しなんだよね。」

アルケミ−系用G3アクセラレ−タがでてからというもの、630系筐体のユ−ザにとって一番の人気アイテムともいえるのは、6300/160の150ワット電源です。しかし、中古マック業者がこんなおいしい話を見逃すわけがありません。かくして6300/160の電源は、「あなたの630をパワ−マックに!」という有料アップグレ−ド改造サ−ビス用に全部キ−プされてしまったようなのです。

でも、ぼくは人にお金を払って改造してもらうのなんてつまらない。価値も認めない。だいいち金がない。

ひたすら自分の責任で、ヒヤヒヤしながら、半端な知識で納得のいく改造をするのが好きなんです。たとえ失敗して青くなったとしても。

案の定、どこにも電源はありません。当時はその手の探し物が、いちばん難しかった時期でした。今はどうかわかりませんが。

「最後の望みは・・・行きたくないけどマ○サスか。」

同人オタクちゃんたちといっしょにエレベ−タに乗り、ビルの上へと上がりました。あの、「オタク死ね!」の近親憎悪のラブレタ−は、もう見当たりませんでした。

「あ、なんか、それっぽい電源!」

意外にも、お店には630系のそれと思える電源がごろごろしていました。

「ラベルを見ると、何ワットかわかるんだよね。」

アップルのいやなところは、仕様を知られないようにするためにファンとか、そういったもののラベルをはがしてから実装しているところなのですが、電源関係だけは安全責任上そうも行かないので、ラベルに仕様が書いてあります。そこを見れば何ワットかすぐにわかります。

「55ワット。6200かなんかの電源だね。」

630筐体最後の機種、6200/6300系列は、LCIIIPDSスロットベ−スのマシ−ンでしたが、なぜかクロック160メガヘルツのマシ−ンである6300/160からは基板がアルケミ−になって、それもとてもひっそりと発売されたのでとてもレア。市場にごろごろしているのは6200系列のの55ワットの電源ばかり。

「でも、考えようでは630の電源よりも10ワット大きいから、替える価値はあるんじゃない?」

トホホ妖精の言うことはもっともです。ト−タルで見たら22%の容量アップです。値段も安かったので、ぼくはこの電源を買うことにしました。

さっそく古い630の電源から3.3ボルト部分を解き放ち、買ってきた55ワットの電源につなぎます。完全に固定する前にテスタ−をはさみました。当時のマイブ−ムは電流計でしたから。さらに、HDD用増設電源も6200電源へつなぎ替えました。起動。

「2.5アンペアは変わらないね。」

「そりゃそ−だ。肝心なのは、仕事量の上限に余裕ができたということなんだ。制限速度100キロのところを100キロで走ってて、限界ですって壊れそうになりながら走ってる軽乗用車と、まだサ−ドギアで余裕の大型車くらいの違いだね。」

二人は、しばしテスタ−の窓をうっとりしながら見つめていました。

「よし、ちゃんとつなごう。」

一度電源を落とします。テスタ−を外し、アルケミ−を外して6400ヘ戻します。PCIスロットがひとつしかない630はスカジ−カ−ドしか挿せないのでグラフィック性能のいいガゼルをいれておくつもりだったのです。630にガゼルを挿し、電源オン。

「ぽ〜ん」

「ア、3.3ボルト!」

うっかりしていました。3.3ボルトをつなぐのを忘れました。まずい!ちょっとあわてるぼくの目には、普通に起動する画面が。

「あれ?3.3ボルト...」

「なしで動いてるね。」

二人は目が点。3.3ボルトの電線はつながっていないのに、ガゼルは起動しました。

「この電源、どっかから3.3ボルトがでてる?」

メインのコネクタの電線は、その供給する電気の種類で色分けされています。赤い5ボルト、黄色い12ボルト、黒いグラウンド。6400の電源では、それにピンクの3.3ボルトが加わっていましたが、この6200の電源には、赤と黄色と黒の三種類しかありません。電源基板までたどっても、根元は3つです。

「じゃあ、こっちのちっちゃな6ピンのプラグかな?」

630コネクタと、電源は、メインの14ピンコネクタのほかに、小さな6ピンのプラグでもつながっています。取り外した630の電源基板のプリントを読むと、それぞれの役割を知ることができました。筐体の前面から奥へ向かって順に、「-12ボルト」「コモン」、「5ボルトTRKL」、「名無し」、「パワ−オン」、「名無し」となっています。さっそく電源オンのまま電圧を測ります。メインの14ピンのグラウンドとの電位差を測りました。

「コモンてのは、グラウンドのことだな。パワ−オンはきっとパワ−を入れる信号の線だし、この、二つの名無しが怪しい。」

名無しのうちのいちばん端の方のプラグから3.3ボルトがでていました。

「一応、630からグレ−ドアップしてたんだね。」

納得。またひとつお利口に。でも、念のため特製3.3ボルト部分は組み込んでおきました。

開発コ−ド名「ミンスク」! さよなら三端子レギュレ−タ 840AV基板
でっちあげ6400 恐怖!アメ車タブレット!