ハンダ鏝が暖まるまでの間、僕たちは買ってきたテスターの取り説を読んでいました。

「うわあ、20アンペアの端子、ヒューズがついてないじゃん!」

「十五秒以内に放さないと壊れるなんて、そんなのできねえよな!」

「いいじゃない、壊れたらまた買えば。」

人間様の体に流れても大丈夫な電流は、たしか5アンペア....だったかな...まあ、うちの630の3.3ボルトからは間違っても1アンペア以上は出ていそうにないので気にしなくてもいいのではないかと思いました。ハンダ鏝の先からは、溶け始めたハンダの煙がのぼりはじめています。 3.3ボルトの電線を基板から解き放ちました。電流を計るためには、回路に直列につながなくちゃいけないんです。

「ワニ口をつないで..と」

テスターのリード先につけたワニグチアダプターで3.3ボルト端子とコードを結びました。テスターのレンジが「20アンペア」になっているのを確認します。 スイッチオン!

「ポ〜ン」

起動プロセスが始まりました。

「うわあ、パワーピーシーって、全然電気、食わないんだ!」

トホホ妖精もびっくり、僕も驚き!だって、テスターの窓に出ている数字ときたら、「0.05アンペア」からプラスマイナスで、決してそれ以上の桁に届こうとしなかったんです!おそるべしパワーピーシー603イーブイ!機能拡張を読み終わって、ファインダーが開くときに少し大きくなったほかはそんなものでした。

「フォトショップのフィルターは?」

ぼくはフォトショップを立ち上げました。適当な画像を開いて、「ぼかし」とかけてみます。

「なあんだ、ぜんぜんくわないじゃない!」

妖精はがっかりしています。

「ねえ、ついでだからG3カードの電力もはかろ?」

僕は630の電源を落とし、6400のマザーからG3カードを取り外しました。

「立ち上がらないのはわかってるけど、何アンペアくらいいってるのか知りたいものね!」

取り出したガゼル基板の、何メガかわからない二次キャッシュをぬいて、G3カードをさしました。起動します。

「あ、初っぱなから1アンペア!」

案の定起動しません。機能拡張のところで永遠に動かなくなってしまいます。

「うう〜ん、三端子レギュレータをパワーアップしたいね。」

三端子レギュレータとは、三本の足を持った一センチ四方くらいのトランジスタに似た板型のアイシーで、入力した電気の電圧を欲しい電圧の大きさに下げてくれる電子部品です。ぼくの630の3.3ボルトの外付け回路のそれは、3アンペア保証なのでもっと大きな、たとえば5アンペアのものに返れば、G3カードも動くかも!

「でも、来年だね...」

ぼくはG3カードを6400に戻し、32のメモリを抜いて、替りに6400の64メガのを付けて、ワイドスカジーをつけて、4ギガのHDDものせて、630は603イーブイのプリンタサーバになりました。

そして1999年。年が明けるとすぐに、ぼくはアキバへとでかけました。

 

開発コ−ド名「ミンスク」! 630と三端子レギュレ−タ 840AV基板
でっちあげ6400 恐怖!アメ車タブレット!