630は55ワットになったものの、ぼくはまだ満足していませんでした。

「やっぱり150ワット以上にならないとイヤだ。」

「不安だよね。全部のスロット埋まってるしね。」

でも、6300/160電源なんてものは永遠に手に入りそうにありません。あってもぼったくり価格でしょう。なによりアップル純正品を使うということが気に入りません。そうです。ぼくの改造の原点はできるだけアップル純正じゃない環境を目指すことだったのです。

「電気にはアップルもインテルもないよな。5ボルトは5ボルトで、グラウンドはグラウンドだよな。」

ぼくはこの間組み立てたドスブイの基板の取説をひっぱり出しました。ドスブイはキ−ボ−ドから電源が入るATX仕様で、その規格には3.3ボルトが入っていることは知っていました。取説にコネクタの内訳まで書いてあるドスブイの世界は、何も書いてないアップルの閉鎖的なファシズム世界よりも好きです。とくに、パソコンに限らずアップルや日本の大手家電メ−カ−製品の取説にはそういった仕様の表記がまったくないのは困りものです。修理に出す際も簡単に「修理不能です」とかいわれて新品をすすめられると、かなり不信感を持ちます。単に一個ン十円のヒュ−ズが飛んでるだけかもしれないのに。最低限、電源周りとその安全機構部分くらいの構造は解説しておくべきです。買って使用する側も、そのくらいは知っておいたほうがより安全に聞きを使用できると思うのですが。とくに、アップルは475の電池切れマザ−ボ−ド全損判断事件以来、ぼくは彼等の発表をかなり信用してません。

「コネクタの内訳を見ると、パワ−オンとパワ−オ−ケイと、5ボルトスタンバイと、マイナス5ボルトってのがマックにはないね。でも、キ−ボ−ドからオンできるんだから、パワ−オンは同じでしょ。パワ−オ−ケイは、きっと電圧のセンシングだよね。-5ボルトはマックにはないから無視するとして、5ボルトスタンバイは何だろう。」

ドスブイの本をたくさんあさりましたが電源の内訳の解説なんかどっこにもありません。また、マックの方の「5ボルトTRKL」というのも謎のままです。

「せっかくインタ−ネット始めたんだからインタ−ネットで探せば?」

「なるほど。」

そのために作ったドスブイマシンです。ぼくはさっそく検索を始めました。「電源」で。ありました。「5ボルトトリクル」という表現が。「5ボルトTRKL」とかさなります。英和辞典をめくると、「TRICKLE」=少しづつ流す。

「5ボルトが少しづつでるンだそうな。なんのこっちゃ。」

相変わらず「5ボルトスタンバイ」はわかりません。

「ATX電源、買ってきちゃえば?きっと手ごろなのが安く転がってるよ!」

トホホ妖精がそそのかしたので、ぼくはATX電源を探しに、アキバへとでかけました。

色々なドスブイのお店を回ります。なかなか手ごろなものはなかったのですが、とある店頭に、小さな電源が安売りされていました。しかも250ワット。

「250ワットの630!」

想像しただけで失神しそうになったので、買ってしまいました。大きさは調べなかったけど、きっと入るでしょう。入らなかったらもう一台ドスブイを作るだけのこと。ぼくは電源コレクタ−になる気だってあったのです。

「14ピンコネクタも買っちゃえば?」

14ピンコネクタはアップル純正かと思っていたら、実は汎用品で、ラジオデパ−トの2階で売っていたのです。

家に帰って、買ってきた電源をコンセントにつなぎました。テスタ−で電圧を調べます。どの線も当然0ボルト。だってスイッチオン状態じゃないんだもん。問題の5ボルトスタンバイは、5ボルトでていました。電源オフでも。パワ−オンを測ったら電源が入ったらしく、ファンが回り始めました。

「グラウンドとパワ−オンをつなぐとスイッチが入るのか。ふうん。5ボルトスタンバイは、いつも5ボルトでてるのか、ああ、トリクルって、そのことかも!」

さっそく630の電源を持ってきて、コンセントにつなぎ、テスタ−で測ります。

「わ〜い、5ボルトでてた。」

5ボルトトリクルは、コンピュ−タのオンオフに関係なく、いつも基板ヘ5ボルトを供給しているみたいです。これはATX電源の5ボルトスタンバイと同じ役目と見ました。

「じゃ、パワ−オンはグラウンドとつなぐと...」

電源が立ち上がりました。理屈はATXと同じみたいです。ぼくは勢いづきました。

「14ピンコネクタをつけちゃおう!」

あっという間にATX電源から電源コネクタが切り取られ、14ピンコネクタがくっつきました。あまった線は熱収縮チュ−ブで絶縁されました。630の電源コネクタが外されて、ATX電源がつなげられました。630コネクタへの6ピンプラグ部分へは、買ってきてあったピンヘッダにそれぞれの線がハンダ付けされたものが接続されました。ATX側のマイナス5ボルトとパワ−オ−ケイ、630側の名無しの二本はつないでいません。

「パワ−オン!」

キ−ボ−ドの電源キ−を押しました。動きませんでした。

「あらら、パワ−オ−ケイかな?」

パワ−オ−ケイに5ボルトや12ボルトや、3.3ボルトをつなげてもダメ。

「電源側のパワ−オンでつくかしら?」

電源側のパワ−オンとグラウンドをショ−トさせてみました。

「ポ−ン」

起動しました。電源が切れない以外はちゃんと動きました。

「やっぱりパワ−オ−ケイとかはいらないみたいだ。」

問題は、パワ−オン機構です。630コネクタからのパワ−オンにテスタ−をつないでみます。パワ−オンすると、5ボルトきています。

「よし、リレ−使ってみよう!」

630からのパワ−オンでリレ−がATXのパワ−オンをショ−トさせるようにすればいいのです。さっそくリレ−がハンダ付けされました。パワ−キ−を押しました。

「かち。ぱっ...」

一瞬ファンが回っただけで、すぐに落ちてしまいます。

だめだこりゃ。しばらく放っておくことにしました。

・・・

「ネットで検索すれば?」

友人がメ−ルでアドバイスをくれたので、ぼくは再びネット検索。今度は「マック、ATX電源」で、引っかかったのがマックパワ−とかでクロックアップの連載記事を書いておいでの方のホ−ムペ−ジ。パワ−オン信号を変換する部品の、そのものの回路図がでていました。

「これは作るしか!」

回路図を書き写し、検討します。回路図なんかまじめに見るのは生まれて初めてです。抵抗やダイオ−ド、コンデンサの記号はすぐにわかったのですが、問題は三角に丸のついた記号。「HC004」と書いてあります。なんだこりゃ。さっぱりです。

電気の参考書を買ってきて、必死にながめます。同じ記号はないか...ありました。「NOT回路」ICの仲間らしい。信号がこないときに電気を流す仕組みらしいです。

今度はICの参考書を買ってきます。ノット回路の使用例がいっぱいでています。

「後ろが××4で終わってるのは全部ノット回路だね。どこがちがうのかな。」

「ううむ、わかんない。」

とりあえず、記号の意味はわかりました。更にICのカタログを買ってきます。

「へえ、14番ピンは電源で、7番ピンはグラウンドかあ。」

なんか、おもしろい。部品を集めることにしました。メモを作ってアキバへ。ユニバーサル基板とか、バラの抵抗とかを買うのは初めて。問題は「HC004」です。

どこを探しても、そんな引き出しはありません。

「not回路なら何でもよかろう」

74HC04というので間に合わせました。意外だったのがコンデンサーで、0.47マイクロファラッドのものが全然見当たりません。でも秋○でよっくさがしたらありました。よかった。 かえって組み立ててセット。ユニバ−サル基板に回路図だけ見て部品を取り付けるのは初めてなので、とっても新鮮な気分です。

「ICの使わない入力はひとつにまとめておかないといけないんだよ。」

さっそく教科書の受け売りをしました。そんでもって完成!さっそく630に組み込みます。630の電源ケ−スから、基板を取り外して、ATX電源のケ−スからとりだした電源基板を取り付けます。あたらしい電源基板の取り付け穴に合わせて穴を開けて、タップでネジを切り、金属のスペ−サをねじ込んで、飛び出たネジはヤスリでさらっておきます。そこへATX電源基板を固定して、100ボルト側を接続しました。電圧切替スイッチとメインスイッチは省略しました。

こうしてセットアップ完了ついにスイッチオンです。

「ぽ〜ん」

「やった!」

起動しました!まったく問題なし。

「わははははははははははは!これで世界はワシのものじゃああ!」

舞い上がってしまって、いってることがよくわかりません。

ラックに戻すために、電源を落とします。が、

「ぽ−ん」

「あれれ!」

まちがって再起動しちゃった...もう一回。

「ぽ−ん」

「あれれ!」

電源が落ちません。ぼくは憮然としてコンセントを引き抜きました。

その後、もう一個パワ−オン変換回路を作って替えてみたけどいっしょ。思いきって回路の情報をくれた方の掲示板に書き込んでみました。おばかさんの書き込みに、返事いただければもうけ物、ままよ。

「うごくはずですよ。でも、調べてみますね。」

あっさりとお返事を頂きました。うああ、ちゃんと返事くれた!人間扱いされた嬉しさに、なにか元気が出ました。もう一度見直そう!

630コネクタにささっているマザ−ボ−ドの端子が、一枚めくれ上がっていて、ちゃんとささっていませんでした。とほほほほ。

めくれた端子を戻して差し込み直しました。起動しました。ちゃんと電源を切ることができました。

回路の情報をくれた方の掲示板にお礼の書き込みをしました。ありがとうございました。

「よおおし!つぎはデュアルPCI化じゃああ!」

あんなに苦労した三端子レギュレ−タがもうお払い箱。ちょっと惜しい気もするけどね。

やっぱり630好き。

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月蝕とG4