年賀状大作戦〜あるいはフェイルセ−フ〜

会社での空き時間に、ちょろっと牛の絵を描きました。それはネズミ年ももう終わりのころのこと。

「結構うまくかけたね。年賀状に使うの?」

トホホ妖精が現れました。彼女はお絵書きが好きです。なんにでもラクガキしたがります。

「うう、パソコンで描いても、プリンタ−持ってないからなあ・・・一枚づつ手書きだとやんなるからあんまり数できないんだよなあ・・・」

年賀状を書くのは毎年、気が重い作業でした。一枚づつ手書きだと、出す人別に文句を変えてみたくなったり、干支の絵にもばらつきが出たり、だいいち、気が重くて面倒くさくて年が明けてせっぱ詰まらないと描く気が起きません。そんなわけで、毎年、年賀状を出す数ももらう数も減ってゆき、まっこと寂しいお正月を過ごさなければならなかったのです。

「プリンタ−買えば?あの、リボン式のがいいっていってたじゃない。」

ちょうどその頃、アルプス電気が熱転写式のカラ−プリンタ−を発売したてで、ぼくはそのプリンタ−の昇華モ−ドでの印刷のきれいさには一目置いていたのです。

「うむう・・・買ってみるか・・・」

思い立ったが吉日。冬ボ−がでるとすぐにアキバへ。部品を買うときと違って、こういったものを買うときはなんとなくソ○マップとかの、大きな店の方が買いやすい。なんででしょう。

おそろしいことに、このバカ重いスカジ−プリンタ−は、当時9万円近くしました。いまなら5万円以下でもっといいのが買えるのに・・・いい世の中ですな。もっとも、最初に買ったアップル純正スタイルライタ−は7万円近くしていて、ト−タルでプリントした枚数が50枚いきませんでしたから、ぼくのコストパフォ−マンス意識の低さは今に始まったことじゃありません。

腕が榊原健吉みたく太くなるかと思うくらいの苦行の末に、家にたどり着き、梱包を解いて、パソコンへつなぎ、タ−ミネ−タをつけて電源オン。クアドラ650は立ち上がりました。ひとまずスカジ−関係の問題はないようです。ドライバ類をインスト−ルします。

セレクタで認識したので一安心。お絵書きソフトを立ち上げます。

いよいよ試し刷りです。

デ−タ転送開始。(というより、ラスタライズイメ−ジのスプ−ル開始)ところが、わけのわからない画像をプリントしたあとで、コンピュ−タが凍ってしまいます。

「あれれ?」

何度やっても同じ。出力ファイルを換えても同じです。ケ−ブルを変えても同じ。タ−ミネ−タを変えても以下同。

「サポ−トに電話・・・」

「それで相手がぼくにこう聞くわけだ?『お客様のご使用のパソコンは?』で、ぼくはこう答える?『あのう、40メガヘルツにクロックアップしてワイドスカジ−で起動してるクアドラ650なんですけど・・・』で、帰ってくる答えがこうだ。『お客様の環境では当社の機器の動作は保証いたしかねます。また、そういった環境下で発生した故障は保証の対象外となって・・・』で、ぼくは受話器をたたきつける。完ぺきだ!ぼくの予想は外れたためしがない!」

「じゃ、じゃ、新しいプリンタを・・・」

「プリンタデュアルにしてど−すンだよ!だいいちどこにそんな金がある!」

ぼくも妖精も、しばし黙り込みました。背中の皮が緊張で縮み上がり、熱いような寒いようないやな感覚です。背筋が凍るというやつでしょう。9万円は痛い。

「じゃ、こうしよ!」

「?」

「プリンタをクアドラ630に挿してみようよ。すくなくともこれでプリンタが悪いかどうかははっきりすると思う!」

「なるほど」

630から出力した画像を、プリンタはきれいに紙に転写して見せました。まことにあっけなく。ぼくは冷や汗をぬぐいながら、思わずにこにこしてしまいました。

「プリンタ専用マシンも、630できまりだね。」

650はこれまでもスカジ−機器の調子が悪かったのです。なんでかしらんけど。

630にはスキャナとプリンタ、外付けHDDとサイケストドライブとエムオ−ドライブがつながって、スカジ−アイディ−の空きが無くなりました。わ〜い、すごい。

「ね、いったでしょ?」

恩着せがましくトホホ妖精が話しかけてきます。

「こういうときのために、パソコンは2台以上必要だって。」

今では年賀状もまったく楽しい作業になって、出す相手もたくさん増えました。でも、まだほとんど年賀状しか刷ったことがない。

 

開発コ−ド名「ミンスク」! RIP大作戦 840AV基板
でっちあげ6400 恐怖!アメ車タブレット! 表紙へ