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アーノルドカプラーで自動解放

2006.11.14〜2009.10.3

9mmゲージの蒸気機関車で自動解放する場合、マグネ・マティックカプラー(旧ケーディーカプラー)が使われることが多いですが、ここでは標準のアーノルドカプラーをなるべく生かしてみることにしました。
ここでの「自動解放」とは、車両に手を触れることなく切り離しができるという程度の意味で、ある条件で勝手に切り離しが行われるというような意味ではありません。

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トミックスMカプラーを機関車に取り付ける

トミックスの機関車に標準装備されている「Mカプラー」は、アーノルドカプラーと互換性があり、連結相手のカプラーを交換せずに自動解放ができるカプラーです。解放ランプは永久磁石なので配線も必要なく、そのまま客車や貨車を押して遅延解放(DU)もできる優れたカプラーです。

しかし、Mカプラーを装備している蒸気機関車は、トミックスの旧C57と9600しかありません。現行のKATOなどの蒸気機関車で利用するには、機関車側にMカプラーを取り付ける改造が必要です。
※トミックスの新C57への取り付けはこちら→4

試作1.カプラーを分解して取り付け

Mカプラーを用意

Mカプラーのカプラーポケットには、カプラーを水平に保つための小さい永久磁石が内蔵されており、通常のアーノルドカプラーとはカプラーポケットに互換性がありません。従って、KATOなどの蒸気機関車にそのまま取り付けられるようなMカプラーは、残念ながらありません。

そこで、トミックスのEF81などに付属している、ボディマウント型のMカプラーを利用しました。交換用パーツJC06です。

Mカプラーを分解 いくつかの方法が考えられますが、まずは機関車のカプラーポケットを改造し、Mカプラーを取り付ける方法を試しました。
Mカプラーのカプラー受けの上部のキャップを引き抜けば、カプラー本体が取り出せます。カプラー受けにはさんである小さい磁石も取り外します。
カプラーポケットの改造 カプラーポケットの前側を切断し、後方のスプリングポストも切り詰めて、磁石を接着します。その前方にカプラー本体が付くので、0.5mm厚プラ板を張り重ねてカプラーポケットを作ります。もちろんちゃんとMカプラーが引っかかって上下に首を振るように、内側に軸受けを切り欠いておきます。
Mカプラーを組み込んだ台車 加工が終わった台車です。実際に解放ランプに乗せて、カプラーの高さや磁石の前後の位置を何度も調整する必要がありました。磁石とカプラーの距離が近すぎると、解放ランプの上に来てもなかなか解放してくれません。また、Mカプラーの高さは通常のアーノルド・カプラーよりも少し低めになります。
客車の解放

この作例はC58に施しました。パレオエクスプレスの客車を解放してみましょう(ちょっと線路が古くて恥ずかしいですが)。この状態で客車を押していけば、好きな位置で切り離してくることが可能ですから、解放ランプはそんなにあちこちに設置する必要はありません。

ただ、この加工方法では調整が面倒くさくて、工作時間が2時間近くかかってしまいました。というわけで、次の試作2の方法をお勧めします。

試作2.カプラーを分解せず取り付け

Mカプラーを加工

用意したMカプラー(JC06)は、せっかくユニット単独で機能するようになっているので、なるべくそのまま利用できれば簡単です。今度は、このユニットをそのまま台車に接着することを試みます。

そのままでは高さの関係で台車マウントにできないので(上部が床板に引っかかる)、カプラー受けの上部のキャップを取り外し、代わりにプラ板でフタをしました。

台車を加工

台車側はカプラーポケットを切断し、形がなるべく合うようにナイフで削って、先ほどのMカプラーをそのまま接着しました。加工はこれだけで、調整といえば他のMカプラー車に高さを合わせるだけです。ものの30分で終わりました。

台車を裏から見たところ

裏から見た様子です。カプラーポケットを切断して、その前にMカプラーのカプラー受けを単に接着してあるだけです。ここでは寸法を何も考えなかったので、ちょっとカプラーが後方に長く出っ張っていますが、もう少し引っ込めることはできます。

解放の様子

何の問題もなく解放できました。こちらの方法のほうがずっと簡単です。

Mカプラーは、走行中は解放しにくいように設計されているようですが、実際には解放ランプの通過中にカプラーがちょっと上がったり、解放してしまったりすることがあります。一応解放ランプは本線に置いても差し支えないとされていますが、なるべく本線は避けたほうがよいでしょう。

ごあいさつ

というわけで、Mカプラー同士、ご挨拶です。

解放ランプの説明書を見ると、Mカプラーとは「トミックスマグネマティックカプラー」の略とありますが、「Mカプラー」のほうが通りがいいですね。

※追記
現在のファイントラックの解放ランプの説明書では、「トミックスマグネマティックカプラー」の表記はなくなっています。また、本線に設置するとカプラーが解放する可能性についても触れられています。


アーノルドカプラーのまま自動解放

次は標準装備のアーノルドカプラーをそのまま使う方法です。この方法なら、専用のアンカプラー線路さえ用意すれば、車両には加工が必要ありません。ただし遅延解放ができないので、解放させたい場所のすべてにアンカプラーを設置しなくてはなりません。

アーノルドカプラー用アンカプラー

本来、アーノルドカプラーは解放機能のあるカプラーで、以前はKATOからも「#2508 電動アンカプラー」が販売されていました。1977年に発売された「電磁アンカプラー」とは違います。現在こういったものは国内メーカーからは売られていないようです(その後いくつかの古い製品をじっくり試す機会がありましたが、原理は以下と同じものでした)。
市販の機械式アンカプラー

とりあえず、同様の働きをするものを用意しました。

ランプの上昇時

これはとても単純な仕掛けです。アンカプラーはレバーの操作で上下に動きます。上昇時に手前のカプラーの解放ピンを押し上げます。
アンカプラーが手前に寄って配置されているのは、反対側のカプラーが一緒に上がらないようにするためです。

解放前

解放するときは、車両をアンカプラー上で正確に停止させます。昔のパワーパックと車両ではこれが難しく、せっかくのアンカプラーも十分効果を発揮できないことがありました。

解放中

レバーを動かすと機関車側のカプラーが上がります。停止位置が悪いと、客車のカプラーポケットを押し上げてしまいますが、そんなときは少しバックすればOKです。

解放後

機関車を前進させれば解放します。最初は停止位置が難しく感じますが、慣れれば簡単です。

逆方向

逆方向の場合は、大体の位置でアンカプラーを上げ、ゆっくり前進すればOKです。

アンカプラーのレバーを動かすのも、手で車両を持ち上げるのも同じじゃないの!…それを言ってはおしまいですが、遠方に置くなら電動化したほうがいいですね。

(電動化した例は次ページにあります)

ランプの中身

車両の加工が不要な代わり、アーノルドカプラーは遅延解放ができないので、解放を行ないたい場所の数だけアンカプラーを設置しなくてはいけません。しかし、1本の列車に対し、機関庫のいくつかの機関車を付け替えて走らせるという用途であれば、1箇所ですみます。

アンカプラーさえ用意してしまえば、これは結構確実な方法で、BタンクのドックサイダーからC62まですべて解放できます。アーノルドカプラー派の方は試してみてはいかがですか。意外に楽しくて、しばらくの間遊んでしまいました。

アーノルドカプラーの下側に出ているピンが何の意味なのか、かなり前からほとんど意識されなくなっていますね。台車マウントが基本だったアーノルドカプラーも、最近はボディーマウントのものも増え、解放ピンを装備しないものも出てきました。
昔、鉄道模型のカプラーはHOのベーカー型カプラーしか知らなかったので、初めて9mmゲージのアーノルドカプラーを見たときは、これでもずいぶん実物に似たカプラーだなと思いました。


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