2009.9.5
今度はアンカプラー線路を使わず、リモコンでカプラーそのものを動かしてみました。3分以内なら(訳はあとで)どこでも解放できます。
テンダー式機関車なら、テンダー内にカプラーの動力と受信機を置くことで、比較的簡単に実現できます。コスト的にはアンカプラー線路式のほうが現実的ですが、レイアウトによっては便利そうです。
下の写真は実際に製作したものです。線路の場所に関係なく、リモコン操作でカプラーが解放します。
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解放の様子はトミックスのMカプラーに似ています。突放もできますが、どこでも解放できるのであまり必要性はないかもしれません。リモコンでカプラーを下げるまでは、この状態を維持します。
駆動と送受信には、タカラトミーの「Qトレイン」を使ってみることにしました。中身だけ見ると、赤外線送信機と超小型受信機(モータードライバ付き)、駆動用モーター、操舵用ソレノイドが1式で2,000円程度というセットになります。この大きさになると、それぞれの市販品を買い集めて作るのに比べ、ずっと安くすみます。 説明書を斜め読みして(ここで大事なヒントを見落としてしまい、最後に困ったわけですが)、少しの間動きを確かめ、すぐ分解してしまいました。 当初狙っていたのは、前輪を左右に動かすステアリングの仕掛けで、これを利用してカプラーを動かそうと考えていました。 |
しかしこのまま使うには少し大きく、カプラーの機構も複雑になってしまうので、方針を変えてモーターのほうを利用することにしました。モーターは最近おなじみの携帯電話用と同種です。この時点で、利用素材がQトレインである必要はなくなってしまいましたが、小型の受信機などはそのまま便利に利用できます。 |
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モーター軸にカム(といっても真鍮線)を取り付け、シーソー式にしたアーノルドカプラーの後ろ側を叩いて、カプラーを跳ね上げようというものです。 上廻りに仕掛けるモーターと、床下にあるカプラーを完全に分離できるので、何かと取り扱いが楽です。 このほかに電池と受信機を積む必要がありますが、DCC化されているときはモーターだけ調達し、あとはファンクションで工夫ということで済みそうです(もっとも、動力カプラー自体も市販されている例があるのですが…)。 カムはそのままだとぐるぐる回ってしまうので、可動範囲を超えたらぶつかって止まるよう、適当な回り止めも用意します。 |
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まずはカプラー側を作ってしまいました。アーノルドカプラーの上側後部にプラ板を貼り、カプラーの柄の途中に穴を開けて真鍮線を差し込みました。真鍮線は両端を上に曲げて、テンダー床板の端に下から開けた穴に差し込みました。 あまりカプラー後部を高級に作ると、後ろが重くなってカプラーが上がりっぱなしになるので、余分なところを削って後部を軽くしておきます。 |
テストしたところ、解放はうまくいったのですが、発進時に後方に引っ張られる力が加わると、復元装置のないカプラーが上を向いてしまいます。 当初カプラーの回転軸を、カプラーの上端に設けたため、牽引時の力点とズレてしまったためでした。素直に柄の高さのど真ん中に穴を開ければまずOKです。上の写真は作り直したあとのものです。 |
カプラー動力と回路はすべて、テンダー上物に組み込みました。伝達機構や配線が上下にまたがっていると、メンテの際に大変だからです。 Qトレインの電源は、中間車に詰まれたLR44電池×3(4.5V)ですが、大きさの関係で積み込みにくいので、3V電池1個としました。時計用の小型の電池はたくさんありますが、あまり小さいとモーターを回すための電流が不足し、消耗も早くなってしまいます。ここではCR1620を1個使いました。 テンダー床板は、集電板のつまみをカットしました。前方台車のビスは先端を少し切って、2mmナットで止め、絶縁のため紙のシールを貼りました。 |
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モーター軸のウォームは、先端に横から穴をあけ、真鍮線を差し込んで利用しているだけで、ギヤとしての働きはしていません。 電源スイッチはもとのQトレインの電池ボックス基板から外して使いました。Qトレインの電池ボックス基板には他に小さい抵抗器が1個ついていますが、これは無視。 本体の基板は、石炭の裏側にちょうどよく収まります。受光部(これは買っても100円程度)は、石炭に四角い穴を開けて外側に出しました。 |
必要なものを全部上廻りに組み込んだので、あとはテンダー本体に差し込めばOKです。 電源スイッチと受光部は上から顔を出しています。 |
走行用モーターを動力に使ったので、リモコンのスロットルボタンの上下で操作します。 Qトレインにはリモコンのバンドが4種類あり、製品の外箱にバンド番号が書かれています。バンドを使い分ければ、走行中の別の機関車が勝手に解放することはありません。 リモコンの照射角は受光部から上下30度以内とされており、確かに真上からや真横からでは反応が鈍くなります。あまり近づけすぎず、適度に離したほうが反応がよいようです。 |
製作中、初めは調子よく動いていたものがまったく動かなくなる症状があり、接触不良なのか、電池と回路のマッチングが悪いのかなどと悩んでいました。
しかし、電池を入れなおしたり、電源を入れなおしたりするとウソのように直ります。そのうち、しばらく静止させていただけでも動かなくなることがわかり、そこではたと気付きました。この手のオモチャは、放っておくと自動的に電源が切れるようになっているのでは…?
もう一度説明書をよく読むと、やっぱりありました。
Qトレイン本体は約3分間何も操作しないと自動的に電源がOFFになります。その際はスイッチをOFFにしてから再度ONにしてください。
がーん。やっぱり…。自動解放の効果は電源投入後3分間までです。時々、ステアリングボタンなどを無駄に押して刺激を与えないと回路が寝てしまいます。 出庫時にスイッチを入れ、3分以内にひとつの列車の運転を終えて切り離しを行なうか、途中でリモコンのボタンを押すなど、運用で工夫しないといけません。 基板をいじってオートオフを非作動にできるかもしれませんが、ギリギリのところで作られているおもちゃのこと、あんまり無駄なサービス回路はついていないでしょう。
ただもし最初に気付いていたら、作らなかったかもしれないので、ろくに読まずに作り始めて良かったのかも知れません。これはたまたま流用したおもちゃの仕様であり、カプラーの可動機構の検討は無駄になりませんので、制御にはDCCなど他の手段を利用してもいいわけです。
しばらく使ってみた感想ですが、場所に構わず解放できるのは予想以上に面白いです。列車が駅に停車したあと、アンカプラーまで移動せずにそのまま切り離せるので、今まではできなかった遊び方ができます。編成の途中など、あちこちに仕掛けることは難しいですが、今までの方式も併用できますから不便になることはないでしょう。
解放場所が限られてもよいから、3分超えても使いたいという場合のために、リードスイッチを追加しました。主電源はOFFにしておきますが、磁石(アンカプラー線路)の上に移動すれば、そのつど回路に電源が入り、リモコンが作動します。
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この使い方は磁石の上でしか作動しないので、単なるオマケです(Mカプラーと変わりません)。狙いとしたのはあくまでも最初の使い方で、標準規格のアーノルドカプラーを使い、場所によらず解放させようというものです。回路を寝せない工夫が必要になってしまいましたが、これを使った運転はとても面白いことがわかったので、もし3分間の制限のない低価格のリモコンが見つかればまた作ってみたいです。