それでは、『イーハトーボ農学校の春』の第一話です。
* 『或る農学生の日誌』 26p * .
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農学校=リアル、農業=シビア、だにゃぁ、『或る農学生の日誌』。
っつーことで、『賢治童話を丸写しシリーズその57』だよん。(^ ^;
一九二五、四月一日 火曜日 晴
今日から新らしい一学期だ。けれども学校へ行っても何だか張合いがなかった。一年生
はまだはいらないし三年生は居ない。居ないのでないもうこっちが三年生なのだが、あの
挨拶を待ってそっと横眼で威張っている卑怯な上級生が居ないのだ。そこで何だか今まで
頭をぶっつけた低い天井裏が無くなったような気もするけれどもまた支柱をみんな取って
しまった桜の木のような気もする。今日の実習にはそれをやった。去年の九月古い競馬場
のまわりから堀って来て植えて置いたのだ。今ごろ支柱を取るのはまだ早いだろうとみんな
思った。なぜならこれからちょうど小さな根が出るころなのに西風はまだまだ吹くから幹が
てこになってそれを切るのだ。けれども菊池先生はみんな除(と)らせた。花が咲くのに支柱
があっては見っともないと云うのだけれども桜が咲くにはまだ一月もその余もある。菊池先
生は春になったのでただ面白くてあれを取ったのだとおもう。
その古い縄だの冬の間のごみだの運動場の隅へ集めて燃やした。そこでほかの実習の
組の人たちは羨ましがった。午前中その実習をして放課になった。教科書がまだ来ないの
で明日もやっぱり実習だという。午后はみんなでテニスコ−トを直したりした。
(丸写しオシマイ)
『賢治童話を丸写しシリーズその57』でした。
ps.旱魃(かんばつ)の描写は、後の『グスコーブドリの伝記』の下敷きになっでるだなや。
『或る農学生の日誌』の漫画の紹介はできましぇん。
さびしかぁぁぁぁ。
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漫画版『或る農学生の日誌』は、おそらく多分ありましぇん。
漫画版『台川(だいかわ)』も、『イーハトーボ農学校の春』も、『イギリス海岸』も、
おそらく多分ありましぇん。
っつーことで漫画の紹介は、ずうっとしばらくシバラク暫く、お待ちくなさい。(^ ^;
『或る農学生の日誌 』 お気に入りのオノマトペ
季節:大正14(1925)年4月1日〜昭和2(1927)年8月21日
◆オラが好きなオノマトペ(初読)=☆
(☆5つが最高。)
31ぼしょぼしょ:【せきはとめたし落し口は切ったし田のなかへはまだ入られないしどうするこ
ともできずだまってあのぼしょぼしょしたりまたおどすように強くなったりする雨の音
を聞いていなければならないのだ。】
▼ボクの好きなオノマトペ(再読)=★ (★5つが最高。)
21こぼこぼ:【くろへ腰掛けてこぼこぼはって行く温い水へ足を入れていてついとろっとしたら
なんだかぼくが稲になったような気がした。】
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「オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)なんて集めてどうすんの?」
ぼしょぼしょ、っつーの雨の降る感じが田舎っぽくて、いんでないかぃ?
@そっ:【一年生はまだはいらないし三年生は居ない。居ないのでないもうこっちが三年生なのだ
が、あの挨拶を待ってそっと横眼で威張っている卑怯な上級生が居ないのだ。】
Aやっぱり:【教科書がまだ来ないので明日もやっぱり実習だという。】
Bだんだん:【斉藤先生が先に立って女学校の裏で洪積層と第三紀の泥岩の露出を見てそれか
らだんだん土性を調べながら小船渡(こぶなと)の北上の岸へ行った。】
Cギザギザ:【河へ出ている広い泥岩の露出で奇体なギザギザのあるくるみの化石だの赤い高
師(たかし)小僧だのたくさん拾った。】
Dゆらゆら:【河原からはもうかげろうがゆらゆら立って向うの水などは何だか風のように見え
た。】
Eすっかり:【今年は肥料だのすっかり僕が考えてきっと去年の埋め合せを付ける。】
Fきっ:【きっと去年の埋め合せを付ける。】
Gぼんやり:【ぼんやりとしてそれでいて何だか堅苦しそうにしている新入生はおかしなものだ。】
Hのろのろ:【それにすぐ古くさい歌やなんか思い出すしまた歌など詠(よ)むのろのろしたような
昔の人を考えるからどうもいやだ。】
Iぐるぐる:【ああ北海道、雑嚢(ざつのう)を下げてマントをぐるぐる捲いて肩にかけて津軽海峡を
みんなと船で渡ったらどんなに嬉しいだろう。】
Jさっぱり:【ぼくはけれども気持ちがさっぱりした。】
Kどんどん:【汽車は闇のなかをどんどん北へ走って行く。】
Lぼうっ:【盛岡の上のそらがまだぼうっと明るく濁って見える。】
Mぐんぐん:【黒い藪だの松林だのぐんぐん窓を通って行く。】
Nはっきり:【なぜ修身がほんとうにわれわれのしなければならないと信ずることを教えるものな
ら、どんな質問でも出さしてはっきりそれをほんとうかうそか示さないのだろう。】
Oちゃん:【僕は郡で調べたのをちゃんと写して予察図にして持っていたからほかの班のように
まごつかなかった。】
Pやっ:【やっと仕付かった所も少しも分蘖(ぶんけつ)せず赤くなって実のはいらない稲がそのま
ま刈りとられずに立っていた。】
Qずっ:【僕のうちの近くなら洪積と沖積があるきりだしずっと簡単だ。】
Rもじもじ:【僕がもじもじしているとこれは新らしい高価(たか)い種類だよ。君にだけやるから来
春植えて見たまえと云った。】
Sそこそこ:【なぜならいままでは塩水選をしないでやっと反当二石そこそこしかとっていなかった
のを今度はあちこちの農事試験場の発表のように一割の二斗ずつの増収としても一
町一反では二石二斗になるのだ。】
21こぼこぼ:【くろへ腰掛けてこぼこぼはって行く温い水へ足を入れていてついとろっとしたらなん
だかぼくが稲になったような気がした。】
22とろっ:【ついとろっとしたらなんだかぼくが稲になったような気がした。】
23どきっ:【そしてぼくが桃いろをした熱病にかかっていてそこへいま水が来たのでぼくは足から
水を吸いあげているのだった。どきっとして眼をさました。】
24ゆっくりゆっくり:【水がこぼこぼ裂目のところで泡を吹きながらインクのようにゆっくりゆっくりひ
ろがって行ったのだ。】
25さっぱり:【三時ごろ水がさっぱり来なくなったからどうしたのかと思って大堰(おおぜき)の下の岐
(わか)れまで行ってみたら権十がこっちをとめてじぶんの方へ向けていた。】
26むくむく:【顔がむくむく膨(ふく)れていて、おまけにあんな冠(かぶ)らなくてもいいような穴のあい
たつばの下った土方しゃっぽをかぶってその上からまた頬かぶりをしているのだ。】
27むっ:【ぼくもむっとした。】
28とうとう:【稲がとうとう倒れてしまった。】
29しっかり:【あれぐらい昨日までしっかりしていたのに、明方の烈しい雷雨からさっきまでにほと
んど半分倒れてしまった。】
30こっそり:【喜作のもこっそり行って見たけれどもやっぱり倒れた。】
31ぼしょぼしょ:【せきはとめたし落し口は切ったし田のなかへはまだ入られないしどうすることも
できずだまってあのぼしょぼしょしたりまたおどすように強くなったりする雨の音を聞い
ていなければならないのだ。】
『或る農学生の日誌』のオノマトペ、これで、おすめえだぁ。えがっだなす。
スネオ 拝 (^
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2006.4.9.
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