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このページでは、筆者がつくった以下の工具・冶具についての作り方や、そのポイントを説明します。
てづくりツール:パート T |
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スクレーパー | 板を少しずつこすって曲線を削るための道具 |
キャリパー 新作を追加 (07.8.28) | 表板・裏板・側板などの板厚の測定器 |
バスバー・クランパー | 表板にバスバーを貼る冶具 |
ベンディング・アイロン | 側板やバフリングを曲げる加熱工具 |
ボディ圧着用ホイール・クランパー | 裏・表板を、組み立てた側板に貼る冶具 |
パフリング・カッター | 幅・1.8mm程度のパフリングの溝をつくる工具(けがき) |
ニカワ湯煎器 | ニカワを溶かして湯煎するための加熱器 |
木工用小型ロクロ | エンドピンなど、丸く削るたるの回転切削工具 |
インスペクション・ミラー | 魂柱のおさまりなど内部を見る鏡(歯科用も市販) |
てづくりツール:パート U は下記の内容でこちら | |
大型?ロクロ | バットも削れるほどの長さと大きさのロクロ |
弓の毛替え台 | 毛替えの際、弓を固定し作業をサポートする台 |
弓の銀線捲き器 | 弓・グリップ部の銀線捲き器(手動) |
スティックのカーブ・ゲージ | 弓・スティックの曲がり具合やバネの調整用の型紙 |
弓の毛替え台U | さらに使いやすく、進化させたもの |
不用な、使い捨て鋸刃でスクレーパーを | 動画でアップしました。 |
新しくつくったキャリパー (追記07.10) | こちらは木工でつくったキャリパー・ベースのアーム |
ハンドルーターによるパフリング・カッター('08) | 木工テクを応用して・・・。 |
ボディ内用・ライトの作製 (09.9) | あれば便利、「貧者の一灯?」です。 |
てづくりツール:パート V は下記の内容で こちら。 | |
木製クランプ | ちょっとレトルトな感じで面白い仕掛け |
ドリル・サンダー | 電ドルスタンドを利用したサンダー |
ペーパー・ホルダーなど、補助ツールはこちら(08.3.30) フィッティグについてはこちら。
◇スクレーバー Scraper:仕上げに近い板を、少しずつ削る道具)
ノミや豆カンナで荒削りした後は、スクレーパーで丁寧に削って仕上げていく。
つまり、ノミやカンナでは削ったあとの刃の削り痕が筋状に残りやすいものだが、
スクレーパーではその削り痕の出っ張っている部分だけに刃があたって削れることになる。
用具の構造上・凹んでいるところはまったく削れず出っ張っているところだけが削れるという、
削る面の平滑性という観点からでは優れた工具といえる。
筆者も若いときから木工に親しんできているが、日本の工具にはこの種のものがなかったため、スクレーパーのよさには驚いている。
だから、ヴァイオリン製作においていちばん長時間使用する、簡単にしてもっとも大切な用具のひとつといえる。
本場・ヨーロッパ製のもの (市販のカタログより) | |
写真のような市販品もあり、結構、高い割りに、どうせ使ったらすぐ研がなければならないから、始めから作ることをお勧めする。
意外に簡単にできることと、また、自分でつくることで、自分の使いやすい、好きな大きさ、好みのカーブのものをつくることができる。
刃の材質は、市販のスクレーパー(台所用)の替え刃とか使い捨てノコの替え刃、カッターナイフの刃などなど・・・。
下の左から3枚は、上の、替え刃ノコを使い、不要になった刃を適当な幅にカットしてつくったもの。
下の、右側・2枚は、DIYなどで市販されている 台所用スクレーパーの替え刃。 これは、流し台やタイルの汚れを削り落としたり、 鉄部再塗装の際、下地を削って剥がすのに使う。 市販のスクレーパーの替え刃(オルファ製、45×45mm)を削りだしてつくったもの。 この製品にはプラスチックの柄がついるが不要。 柄は不要、替え刃だけで結構。 これは、黄色いケースに入って売られている。 小生は長時間使うことから、ご覧のようにカエデ材の端材で取っ手をつけたものも愛用しているが、 この刃はスクレーパーとして良く切れる。 |
意外に切れがいいのが、カッターナイフの替え刃。 その替え刃には、大・中・小、また、普通タイプの厚さのものと、ごく薄い「薄刃」のものもあり、これらは、いずれも普通の厚さのものからつくったもの。 鋼質がいいのか、厚みが具合いいのか? 理由は分かりませんが、実に具合よく削れる。とくに、やわらかい表板の仕上げには最適で、きれいに仕上がる。 |
左2枚が、普通の大きさのカッター。 右の2枚は大型の替え刃で、刃幅が厚い。 このほか、細い、普通の鉄ノコの刃でつくったものもありますが、これは、もっぱらネックのスクロール仕上げ用に愛用しています。 |
貧者にとっての『伝家の宝刀』、ここでもディスク・グラインダーが威力を発揮するばかりでなく、
何かを作るときの有力な工具になります。
わたしは、以前に仕事用に買った1万円ちよっとのものと、ホームセンターの特売で買った3,980円のものと
二台、もっているが、機能はまったく変わらない。安いから、切れが悪いと言うこともない。
その分、使う砥(ディスク)の種類が多くあった方のが便利。
スクレーパーのような、鋼を切り出したり刃の曲線をつけるとき、あまり長時間削りつづけないで、少しずつ削るのがコツ。
◇ キャリパー (Caliper:板厚の測定器)
最初作ったのが、下・中央の写真。
ともかく厚さが測れるようにと考え、テコの理屈で、力点、支点、作用点の、この関係を1:2の比率でつくりました。
例えば、実寸(左側に挟んである板)が2.5ミリのものとすると、
表示(右端の垂直になった白い部分に目盛りをつけてあり)が、その倍の5ミリの幅で表すようにしたもの。
それは、1:1の実寸表示より、より細かく、正確に読み取れるようにしたため。
しかし、コンマ単位以下の数値は感による読みとりしかなく、
バーを長くした分、アーム部分のたわみなどもあって不安定なものになってしまいました。
300年以上も前、イタリアの名工たちだって 1/100ミリの精度の測定器など使っていなかったはずだと、
自分に言い聞かせ、最初のキットはこれで済ませました。
その後まもなく、市販のダイヤルゲージ(1/100mm)を使い、固定する台には丈夫な、L字型に溶接した鉄パイプの腕と、
台から垂直の「受け手」をつけただけのものですが、ずっと精度のいいキャリパーになりました。
そのうちに市販品のような手で持って計れるようなものを作ろうと思っていたのですが、
結局、これで何年もそのまま使いつづけていました。
こんなものでも、使用上、何の問題なく使えるということです。
市販品のキャリパー |
テコの応用で計測するようにしたもの |
ダイヤルゲージでつくったお手製。 このように、はかる板を挟んで使う。 |
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あちらのサイトで見かけた木製の既製品 |
それを参考にして木工でつくった新しいもの '07年8月 |
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今回のものはヴァイオリンやヴィオラだけではなく、チェロにも使えるようにふところを広く(190mm)してある。
その製作過程などの詳細は、こちら ⇒ 製作工程に戻る |
◇ バスバー・クランパー (
Bassbar-Clamper)
表板が削り上がり、エフ字孔も彫り、仕上がった板にはバスバーを貼りますが、それをクランプ(圧着する締め具)です。
ほどよい固さの木の棒(カエデ材やヒノキ、タモ、ナラ、ラワンなど)から、両サイドからボルトで締め付けるタイプのものと、 いわゆるピンセット構造(写真・右端)のものをつくる。 やわらかい表板の表面に触れてキズがつかないように、1〜2ミリの厚さのコルクシート、 もしくはラシャ布やパンチカーペットを裁断したものをパッキンとして貼り、養生にする。 それに、6ミリのボルトと蝶ナットを付ければ出来上がりです。 このボルトには、 下に余分な出っ張りを出したくないので、半丸頭のものが最適。 六角ボルトしかない場合、座彫り(六角の頭部分を埋め込むように、 大きめの穴をその厚さ部分だけ空けること)で補える。 締める位置の下には6ミリ、上には6.5ミリの穴をドリルであけてやる。 両方、6.5mmの穴にしてしまうと、締め付ける際にボルトが回ってしまい、 やりにくいからだ。 下のボルトがちょっときつめなら、左手でクランパーと本体をささえ、右手一本で蝶ナットを締め付けることができる。 中央の写真のように使って、バスバーを貼り付ける。 |
◇ ベンディンク・アイロン
(Bending-Iron: 側板の曲げに使う、すみやオリジナル・ツール)
このアイロンには、写真のような普通に市販されている40Wの電気半田ゴテを使い、
それに直径40ミリの丸い銅を継ぎ足すことで、程良い曲線と熱容量を大きくするために使いました。
ただ、半田ゴテには銅をつぎたすのに便利がいいように、コテ先が丸い物を選んであります。
丸なら角とは違い、ドリルや旋盤で簡単にあけられますからね。
つまり、抜き差しできるということは、 熱すぎれば少し抜いて使い、ぬるすぎれば深く差し込むという、温度に対してアジャスタブルになる。
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市販品:断面がD型のアイロン |
実際には、この40Wのものでは、根元近くまで差し込んでちょうどよい熱量でした。
古い本には、丸い鉄棒に、ただ木の取っ手がつけてあるだけのものを見かけましたが、
この方法だと、多分、ガスか炭火であぶって使うのでしょう。
素材も、銅や真鍮なら鉄とは違って錆もつかず、焦げることもないはずだし、熱伝導率も高いはず。
結果、これはほどよく曲げることができる、筆者お手製のすぐれものになりました。
銅材は、寸法を書いたイラスト図面を元に、知人の鉄工場でつくってもらいました。
最初に、錆びなくて熱伝導率が高い、銅か真鍮、またはアルミ材でということでたのみました。
たまたまこれは、在庫の端材のため「ただ」でいいというので、菓子折ひとつと、プラスアルファの謝礼。
これを製作工程の写真のように、柄の部分を万力で挟んでテーブルに固定し、使っています。⇒ 製作工程に戻る
◇ ボディ圧着用スプール・クランパー (内型用Body-Clamper)
ボディを組み立てるのには、内型法と外型法に別れます。私は内型ですから、ここでは内型で説明します。
丸い直径35ミリ程度の木の棒を準備し、まず、2〜2.5センチで輪切りにします。
それが上下の押さえになり、これに6ミリの6角ボルトを差し込むのです。
でも、後のことを考え、直径12ミリ程の、ボルト頭・埋め込み用のほぞ穴(座彫り)を空けておきます。
そのため、写真でお分かりのように、下からは六角ボルトの頭部分がいっさい出っ張っていません。
これにも、上下ともコルクシートを貼りますから、コルクシートを丸くカットして貼り付けます。
センターをしっかり出して、ドリルスタンドで6ミリの穴を空けます。
私の本業は内装屋(インテリア)ですから、この丸棒にはカーテン用のウッディ・レールの端材を流用。
(↑つまり、すみやが大好きなタダのものだし、その上、すでに吹きつけ塗装がされている。)
左側の真ん中・ひとつに、中央に短い釘をペンチで頭をカットして埋め込み、カッターナイフの折った歯を固定するようにすると、
コルクシートを丸くくりぬく専用カッターになります。
(中央斜めに置いた物 : 数多くくり抜きますから、 こんなものでも、とても効率よく○を切り抜くことができますよ。)
◇ パフリング・カッターとパフリング専用用彫刻刀
Pafling-cutter:いずれも、すみや・オリジナル)
市販品もありますが、つくりたい人のために、あえて、わたしの実例で紹介します。
パフリング・カッターには、木工用のケガキを使うように川上氏のマニュアルにはありましたが、
それではいくら改良しても内側の曲線部が不安定になります。
いろいろ工具店で探しましたが、改良しても使えるケガキがなく、そこでつくったのが写真(右上)の物。
下のガイド部分のアールの取り方に工夫がしてあり、C部の先端部近くまでこれで切り込みを入れている。
ヴァイオリンの例だとパフリングの溝は、外側から4ミリとパフ材の厚さの1.3ミリ加えた5.3ミリ、
それに平行した2本の切り込みを入れ、
そこを彫刻刀で彫っていきます。
刃幅が1ミリなどという彫刻刀やノミも売っていませんから、これもつくらなければなりません。
木の柄がついた方が、精密ドライバーの不要なビットを研ぎだして、刃幅1ミリの彫刻刀になっています。
曲線がきれいに彫れるように、つま先を伸ばした人の足のように、
アキレス筋部分がやや直角に立ち上がるように刃をつけることが肝要です。⇒ 製作工程に戻る
◇ ニカワの電気湯煎機 (
Glue-Heaterすみや・オリジナル)
ニカワは60℃の温湯でゲル化(溶かす)させるのがもっとも良いようで、60から65℃の温湯が保てるものをつくればいいのです。
メーラーさんの中には、晩酌の酒を熱燗にする特価品を買い、代用している方もいらっしゃいます。
(これはいいアイディアですよね、でも。筆者は飲まないので、ここは、やはり廃品利用のお手製。)
こちらが市販の既製品・ニカワ湯煎器、電気式のものが左側、コーヒーポットのアルコールランプ式が左側。
お値段は左が132US$、右が100.5US$と、国によってはTAX(消費税)と航空運賃がそれぞれかかってしまいます。
小さな空き缶だってかまいませんが、 お湯の中では軽すぎて浮いてしまい、それだと使いにくい。
湯煎のお湯は、ミルクの空き缶とアルコールランプとの組み合わせた簡単なコンロ?状のものと、湯煎する何かしらの器、
あるいは、 どんぶりでお湯をチーンして、湯飲み茶碗を沈める程度でもかまわないわけです。
結果として「湯煎」になっていればいいのです。なお、ニカワについての詳細は、こちら→
さて、酒を飲めない私は、電気熱燗器があることなどは知らず、ここでも手づくり。
温度管理には、私は手持ちの100℃の温度計でチェックしました。
最初につくったのは、写真の現像用として寒い冬場に使用する「現像液用保恒バツト」という保温機を改良したもの。
メカは簡単で、所定の太さ、長さのニクロム線と温度ヒューズ、それと簡単なバイメタル式サーモスタットだけ。
私のは4つ切りという、印画紙用のややA4ほどの大きさですが、
作業台の大きさ、溶かすニカワの量から、かなりコンパクトに組み替えました。
そのアルミのケースは、昔、秋葉原で買い求めた、プリアンプ用のアルミシャーシーのシャンク品を使いました。
なぜ、改良が必要だったかというと、現像液の場合は標準で液温が20度になるような設定にします。
現像は化学反応(一種の還元反応)ですから、液温が高ければどんどん進行してしまい、
真っ黒になってしまうような、正しい現像ができなくなってしまいます。
だから、サーモだけを調整しても、とても60度にはならないわけです。
そこで、コイル状に巻いたものが張られているニクロム線を少しずつ引っ張り出して(短く)カット、
抵抗値を下げることでワット数を上げられるわけです。
(テスターのある方は、使うニクロム線の抵抗値を計り「オームの法則」の W=Iの2乗×R ∴ W=I*R*R =V*R
で何ワットかを計算。
消費電力、W{ワット}=V{ボルト:電圧}×R{抵抗}であるから、一般家庭の電圧は100Vであり、あと抵抗さえ分かれば100÷R(オーム)で、
その値が、即消費電力:{W=ワット}になる。ご用とお急ぎでない方、ぜひ、お試しあれ!)
さて、そうして何度か切っては温度を確かめ、また切っては水温を計りを繰り返し、目的のワット数値になるまで試しました。
それから、サーモスタットのビスを調整して60度前後の調整も可能にしたのです。
結局、何台かはこれで煮ましたが、まだ大きすぎて邪魔になるので、さらにコンパクトな物につくり替えたものが下の写真。
廃品利用(電気あんか)のニカワ湯煎器 | |
アンカの中身(メカ部分を)全部取り出し、 シャーシーの中に、コンパクトに小さく組み直したもの |
使用例 |
木工用小型ロクロ
(こけしのようなものを削り出す道具)
電気ドリルとサイドスタンド、それに簡単な軸受けがあればつくることができる。
エンドピン程度なら、ロクロ専用のバイト(削る刃物)を使わなくても、あらかじめナイフやノミで荒削りしておき、
あとは鉄工用のヤスリや、サンドペーパーで仕上げると、実用上、問題ないほどきれいな物ができます。
この軸受けには、壊れた機械部分の回転ローラー軸を、そのままディスク・グラインダーで切り先端を尖らせて流用。
こういう性格ですから、将来、何かに使えそうな物はバラしてでもとっておきます。
バットも削れるような大型のロクロは、こちら(tools パートU)
ドリルとサイド・スタンドはいっしょ
部材を固定させるための回転軸受け
譜面台の脚部B
こちらは安定がいいように少し大きくし、三分割。
譜面台の脚部A 〜 四分割は楽なので当初は4本足。
ご覧のように、長いものでも対応しています。
よく家内から、「これ捨ててもいい?」とか、「これ、かたずけられないの!」など、とても嫌がられました。
◇インスペクション・ミラー
(Inspection mirror内部を見るためのミラー)(10/26追加)
中央、魂柱を刺してあるのがサウンドポスト・セッター。上が、魂柱のおさまりや、その他内部を見るたのミラー。
といっても、作ったといえないほど簡単なものですが、ひとつはあると「歯医者さんごっこ」にも便利かも・・・!。
とくに筆者は、ストップ(駒の正しい位置)に、表板の裏にはあらかじめ組み立てる前に、鉛筆の線を軽く入れておきますから、
魂柱の、標準の正確な位置を確認するためにはかかせません。それから、左右、前後に音を確かめながら調整しています。
ご注意 :
ニクロム線使ったニカワ湯煎器など、小型でも熱の出る物は安全性を鑑み、その電源回路には温度ヒューズなどをご使用下さい。
本体内部に、スイッチ回路と直列で、この温度ヒューズを使っていると、その規格温度に達すると溶けてOFFになり、安全です。
ちなみに、ペレット型のごく小さい温度ヒューズが、ひとつ500円程度で(アマゾンでも)売られています。
そんなものまで作るんですか?と思われる方。電気や配線にはまったく自信のない方。お金を出しても買った方が楽だという人たち、
そして、よい子の皆さんは決して真似をしないで下さい。
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