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◎私感訳注:
※應天長:詞牌の一。詞の形式名。双調。五十字。仄韻一韻到底。詳しくは「構成について」を参照。花間集巻第二所収。
※綠槐陰裏:青々と茂ったエンジュの木陰で。 ・裏:なかで。
※黄鶯:ウグイス。コウライウグイス。
※語:ここでは、さえずる。詩詞では、花や鳥が声を出すときは「花語」「鳥語」という。
※綠槐陰裏黄鶯語:青々と茂ったエンジュの木陰でウグイスがさえずっている。
※深院:奥深い庭。深院は詞人に好かれていて、歐陽脩(馮延巳)、李淸照などに「庭院深深深幾許」 と、よく使われる。塀に囲まれた奥深いにわ。中国の庭は塀で細かく区切られ、奥深くなっている。 ・院:中庭。
※無人:(静かで)人気がない。
※春晝午:春の昼下がり。
※深院無人春晝午:奥深い庭は(静かで)人気がなく、春の昼下がり。
※畫簾:美しく縫い取りをしたカーテン。カーテンは簾帳幔幃幄帷…とまだまだ多くある。これは、つける場所や形、材料から決まるといえるが、詩詞では、平仄と語調で決まることも多いだろう。 ・畫:飾りをした。画堂、画角…と多い。
※金鳳:金の鳳。ここでは、カーテン地の縫い取り模様を指す。
※畫簾垂、金鳳舞。:美しく縫い取りをしたカーテンを下ろすと、カーテンの縫い取り模様の金の鳳が動く。
※寂莫:さびしい。
※綉屏:縫い取りのある屏風。また、女性の部屋の屏風。
※香:香炉。香木。
※一炷:(香が)ひとすじ。 ・炷:灯心。焼く。「線香一本」というときの「本」にあたる量詞。
※寂莫綉屏香一炷:寂しげな女性の部屋の縫い取りのある屏風のそばの香炉からは(煙が)一すじたっている。。
※碧天雲:青空にある雲。この女性の恋人のことを暗示している。後に続く「無定處」からそういえる。
※無定處:寄る辺がない。一ところで留まらないで、あちらこちらに移りゆく。この女性の恋人の行動でもある。
※空有:ただむなしく…のみあるだけだ。
※夢魂:夢の中にいる魂。夢を見ている魂。婉約詞ではよく使われる語。
※來去:やってくる。動きを表す。
※空有夢魂來去:(恋しい彼はどこをさすらっているのだろうか。わたしの所へは、)ただむなしく夢の中にいる魂だけがやってくるだけだ。
※夜夜:よごと。
※綠窗:女性の部屋の窓。
※風雨:あらし。ここでは、帰ってくるのを待っている女性の心の中を吹きすさぶ嵐のこと。
※夜夜綠窗風雨:夜毎、女性の部屋の窓辺には嵐が吹き荒ぶ。
※斷腸:非常な嘆きをいう。
※君:人に対する尊称。ここでは恋しい人のこと。
※信否:信じるだろうか。 ・否:主として文末に付き、疑問文にする働きがある。
※斷腸君信否:この深い嘆きを貴男は信じるだろうか。
◎ 構成について
双調。五十字。仄韻一韻到底韻。韻式は「aaaa aaaa」。韻脚:「語午舞 處去雨否」は第四部上声、去声。
○ ●○○●。(仄韻)
● ○○●●。(仄韻)
○ ,
 ●。(仄韻)
○○●●。(仄韻)
●○○,
○●●。(仄韻)
● ○○●。(仄韻)
● ○○●。(仄韻)
○ ●●。(仄韻)
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