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        詩法・詩体・格律用語解説

1.始めに

  本サイトで使っている詩詞の用語、とりわけ填詞の制作や観賞に使われる詩法、詩体や格律用語を重点的に集めてみました。

  なお、煩雑さを避けるため、詞牌名は挙げていません。詞牌は「詞牌・詞譜」のページをご覧下さい。
  下記の説明中、「詩」と「詞」との使い分けには、比較的配慮しています。ただ、「詞」と「填詞」は、同義で使っています。基本的には「詞」を使い、記述内容から「単語、言葉、品詞」等と誤解が起こりそうな場合は、「填詞」と表しています。
  意味のより詳しい内容や実際の用例等は、当該するページを参照して御覧下さい。

2.用語集
                                                                                          同義、近似(包摂関係)の語。
対照語。反対の語。対義語。
類義。類似の語。
注意。似て非なるもの。
                           〔だけは他と異なっていますが、三者の境界は、微妙なものです。〕
用語                     語       義
 依韻 和韻の一。詩歌の応酬や共感のため、作詩の際、同一の韻部の中の韻字を使った詩作をいう。なお、全く同一の文字を同一配列(=次序)で使うことを特に次韻といい、同一の韻字を自由な配列で用いることを用韻という。⇔次韻。⇔用韻。
一韻到底 同一篇の詩詞で、同一の韻目のみで押韻する場合をいう。律詩、絶句の押韻がこれにあたる。⇒換韻。
一三五不論 作詩法の一で、一句の内、第一字、第三字、第五字目の平仄はあげつらう必要がない、ということ。例えば、「○○●●○○●」とすべき句の場合、 「○●」(×○×●×○●)として可、というもの。 もっとも、機械的に二、四、六字のみを重視するものではなく、平仄上「○○」や「●●」の配列による音韻上の美しさは重視すべきものであって、もし、第一字目を変えたのならば、第三字目で調整しなければならない。⇒拗救。これは、詩の平仄を緩く寛く扱うためのものではなく、ずらしても一定の平仄律にしておく際の、平仄の可動(可変)部分をいう。⇒二四不同。⇒二六対。⇒拗救。⇒反法。
一調多名 詞調が同一で、名称がいろいろあるもの。 ⇒異調同名。⇒異調同形。
異調同形 詞調の字数や格律という外形だけは同じだが、詞に充てられていた音楽が異なっているもので、本来は、同一の詞とは見なしにくいもの。⇒一調多名。 ⇒異調同名。
異調同名 詞調は異なっているが、名称が同じもの。 ⇒一調多名。 ⇒異調同形。
韻脚 詩詞で聯末や句末で押韻する文字を指す。「押韻」と近義であるが、「押韻」は「入声で押韻する」というように動詞として使うが、「韻脚」は「この『菩薩蠻』の韻脚は…」という風にその部分を指す名詞として使う。⇒押韻。⇒脚韻。⇒虚字脚。
韻式 押韻の形式。同一篇の詞で換韻して押韻する場合、換韻の規定を文字式に表したもの。本サイトでは例えば、平韻で三回押韻する場合は「AAA」。平韻二回でから仄韻二回、再び平韻の別な韻目に換わる場合は「AAAbbbCCC」。平韻二回でから仄韻二回、再び元の平韻の同一韻目に換わる場合は「AAAbbbAAA」と表している。大文字は平韻、小文字は仄韻を表している。王力方式。⇒平仄式。
韻頭 漢語の一音節の韻母(母音部)を三分した、第一番目の部分。例えば、「光」(guang)では、guangの内、uang部分が韻母であり、その中でのuの部分が、韻頭になる。⇒韻腹。 ⇒韻尾。
韻尾 漢語の一音節の韻母(子音部)を三分した、第三番目の部分。例えば、「光」(guang)では、guangの内、uang部分が韻母であり、その中でのngの部分が韻尾になる。北京語ではnとngがそれに当たる。東南方言では、p、t、kの音素のものがある(入声)。 ⇒韻頭。 ⇒韻腹。
韻部 詞などの韻目の分類。詞では、大きく十九の韻部に分け、それを声調別に細分している。詩韻が、声調別に分けたものを形によって細分したものとは大いに異なり、全体を十九部に分ける。(分類の詳細は「詞譜・詞牌」ページ参照。)填詞では、近体詩を作る際に用いられる『平水韻』(詩韻、百六韻(百七韻))を使わないで、独自の詞韻を用いる。(なお、本サイトでは「詩韻」・「詞韻」では紛らわしいため、多くは「詞韻」「詞譜」・「平水韻」と言い換えている。)
  詞韻を比較すれば、詞韻の方がより簡明で、現代語に近い。特徴的なところとしては、ang韻系統(平水韻の唐韻・陽韻と、独用であった江韻との統合)、eng韻、ing韻の統一、声調を超えて、同一韻母の韻部を同一の韻部にまとめるなど、作詞時、同一韻母の換韻(韻式で表すと「AAAaaaAAAaaaAAAA」等)に極めて便利に出来ている。実例を挙げれば、詞韻の「第一部」では平声としては「一東」と「二冬」「二東」があり、(同一の「第一部」に)仄声としては上声で「一董」「二腫」、去声で「一送」「二宋」があるという構成になっている。図表にすれば、こちらの通り。⇒詞韻。⇒韻目。
陰平 現代漢語(共通語。歴史的に見れば北京語)の声調の一。平声が別れて陰・陽二分したものの一。簡単に(第)一声ともいう。 ⇔陽平。 上平、下平。
韻腹 漢語の一音節の韻母(母音部)を三分した、第二番目の部分。例えば、「光」(guang)では、guangの内、uang部分が韻母であり、その中でのaの部分が韻腹になる。 ⇒韻頭。 ⇒韻尾。
韻母 漢語一音節の母音部分。押韻は、原理的にはこの部分の同じ漢字(音)を使い、韻を踏んでいるわけである。古詩(古典詞)では韻書に拠ってその分類をするが、現代詩では、韻母部分が共通した音、または類似した音の場合、韻を踏んでいる。声母に対応して使う。
韻目 詩韻の分類の項目をいう。『一東』『二冬』『三江』『四支』…というふうにいう。例えば、「上平」の中の韻目である『一東』グループには、「東同銅桐筒童僮瞳中衷忠蟲終戎崇嵩弓躬宮融雄熊穹窮馮風楓豐充隆空公功工攻蒙籠聾瓏洪紅鴻虹叢翁聰通蓬潼朧螽夢訌凍恫總窿種倥艨絨匆…」等の韻字があり、「上平」の『二冬』グループには「冬農宗鐘龍舂松沖容蓉庸封胸雍濃重從逢縫蹤茸峰…」という韻字があり、押韻のために韻脚に使う、その分類。⇔韻部。 ⇒詩韻、⇒平水韻。⇒韻部。
押韻 詩詞で聯末や句末で韻を踏むこと。伝統的な漢語音韻の分類の仕方で、同一韻母の語(字)を同一韻目として、韻を踏む。古詩(古典詞)では韻書に拠ってその分類をする。ただし、『詩經』などの上代の詩歌は特殊な押韻をする。⇒交韻。古典詩に反して、現代詩では、韻母部分が共通した音、または類似した音の場合、韻を踏んでいる押韻する文字を指す。最近では現代語に合わせた韻書も出ている。 韻脚と近義であるが、韻脚は押韻している文字そのものを指す。⇒韻脚。⇒脚韻。⇒虚字脚。
応制 詔(みことのり)に応じて詩文を作る。六朝は多く応詔という。
拗体 近体詩の規律に拠らない作詩。破格の詩作。或いは、部分的に近体詩の規律からはずれている部分のある詩作。〔拗體:あうたい、えうたい;ao4ti3〕。⇒拗救。
拗体絶句 絶句の常格に依らない詩。李白『山中與幽人對酌』(兩人對酌山花開)等。 拗絶。
下三連 近体七言詩で、句末尾の平仄の配列が「………●○○○。」或いは「………○●●●。」というふうになっているものをいう。近体詩では、忌む。「あさんれん」。⇒平三連、⇒三平調、⇒三平切。
漢魏にはやった、心の思いを勢いよく放出する詩。
換韻をする古詩の場合、押韻と意味上のまとまりとが合致しているのが普通で、換韻単位で見た場合の意味上でのまとまり。章。段。
隔句対 一句以上離れた句が対になること。一聯(二句)単位で対になること。上代の詩歌や、中唐以降に多く見られる。例えば、
A句B句(聯)。
  A’句B’句(聯)。」
となっている場合で、同じ色の句同士が対になっているものをいう。 扇対、開門対。
格律 詩詞を作る際の、規範、規則。厳密に分けて謂うと、格とは、近体詩などの格式で、基本的な構成形式と内容。律とは、声律、韻律等を指す。
下句 聯の偶数句をいう。また対句ともいうが、対仗と区別すること。
。下片。二段構成の詞の後半部分をいう。⇔下片。う。⇔上
下平 平水韻、詩韻の中で、平声を二分するいい方の一。一方を上平と云い、他方を下平という。編輯の便宜上二分されただけのものが、受け継がれしまっているものである。「広韻」では、平声の「上平声」「下平声」と、平声を二つに分けたのは平声に該当する文字数が他の声調よりずっと多く、その結果「平声上巻」「平声下巻」となったのである。 実際、「上平」の終わりの韻目と「下平」の始めの韻目は近似しており、本来は繋がったものである。その部分は皆、韻尾が「-n」のものである。それに対して、「下平」の終わりの辺りの韻目は、現代日本語や現代の北京語から見れば、同じようで韻尾が「-n」のものであるように見えるが、これは「-m」であって、「上平」の終わりから「下平」の始めにかけての「-n」韻目とは、異なる。
  それに対して、現代北京語の陰平、陽平の区分は、一義的には発音上の差異から来ているが、音韻史から見れば、唐代の後、平声の濁音が清音に変化し、それらが陽平とになったものである。
  現代語の「陰平・陽平」とは、全く無関係。詩韻の「上平・下平」との関係で、日本で出版されている何冊かの本では、「『上平』と『陰平』は、同じものであり、『下平』と『陽平』も同じものである。」という叙述がなされているが、これは間違っている。 ⇔上平。 →陰平、陽平。
樂府 漢の代、武帝は各地の音楽を採取する役所を設置したその役所名が起源の詩歌。後世、この時代の歌謡、この形式、この詩第(楽府題)を使った詩歌をも『樂府』というようになった。古代の民歌。後、そこで歌われた歌謡と詩体が同じもの(楽府旧題のもの)をも「樂府」と云い、同形式の古代歌謡の意味を持つようになった。この詩歌を「樂府」「古樂府」、「漢樂府」、「樂府體」、「樂府詩」、「樂府歌辭」ともいう。「古樂府」は「新楽府」に対して、「漢樂府」は「漢文、唐詩、宋詞、元曲」に対して、「樂府體」は「雜謠體、古體、近體」に対しての呼称になる。樂府詩を集大成したものの中、最大規模のものは、宋の郭茂倩の『樂府詩集』になる。この『樂府詩集』の分類に拠れば、『樂府』は、「郊廟歌辭」「燕射歌辭」「鼓吹歌辭」「吹曲辭」「相和歌辭」「C商曲辭」「舞曲歌辭」「琴曲歌辭」「雜曲歌辭」「近代曲辭」「雜歌謠辭」「新樂府辭」の十二篇に大別分類している。ここで『樂府』とされたもので、本サイトで採り上げているものに、項羽『力拔山操』(力拔山兮氣蓋世:『垓下歌』として広く知られている)、漢の高祖(劉邦)の『大風歌』(大風起兮雲飛揚)、漢の武帝(劉徹)の『秋風辭』、時代は下って、唐の王之渙の『涼州詞』(黄河遠上白雲間)、王昌齡の『出塞』(秦時明月漢時關)等絶句のものがある。楽府題には「…行」「…歌」「…曲」というようなものが多く、当然ながら同じ(楽府)題の作品は多い。とりわけ「…歌」「…吟」等は歌われていたことが明瞭に分かるものである。なお、この分類に拠れば、白居易などの新たな楽府以外に、『竹枝詞』も『樂府』に含まれ、遥か後代の清末の秋瑾の長詩もそれ(歌行)に該当する。
下片 二段構成の詞の後半部分をいう。⇔後⇔下⇔上片。過片。
過片 二段構成以上の詞で、上片から下片に移るところをいう。
  また、時に換頭も指し、双調で上片と下片の詞調の構成が基本的に同じで、下片は上片の繰り返しとなるが、下片の第一句のみが異なっているものをいう。下片の第一句・頭を換えることをいう。⇒換頭。下片。
換韻 同一篇の詞(詩)で押韻の韻目を途中で換えること。換韻は、詞では厳格な規定があり、随意にはできない。平韻から仄韻に、そしてまた平韻に換わるものもあれば、平韻の中で韻目が換わるだけのもの等多様である。本サイトでは韻式を掲げてそれを示している。⇔一韻到底。
換頭 双調で、上片と下片の詞調の構成が基本的に同じ場合、下片は上片の繰り返しとなるが、下片の第一句の歌い出しの部分が異なっているものをいう。下片の第一句・頭のみ(過片)を上片の第一句とは変えることをいう。⇒過片。
漢語 中国語のこと。「漢民族の言語」の義で、「漢語」とよぶ。Sino-Tibetan語族(漢蔵語系)に属する声調言語であり、Altai語族?(阿爾泰語系?)の日本語とは著しい差異を有する。「中国語」という名称は、“中国話”“中国語”“国語”等と口頭ではいわれるものの、言語の名称としては、現在中国ではあまり使われていない。中国は多民族国家であるという国是のため、この言語の名称は、「漢(民)族の言葉」というわけで、「漢語」とよんでいる。
  なお、 日本語では、音読みで構成される複音詞(熟語)をこうとも呼ぶが、それは別義。 
漢詩 漢代の詩の意。漢賦、漢樂府や先秦詩、『詩經』『楚辞』も含む場合がある。日本では、広く中国古典詩や日本での近体詩を指す。⇒近体詩。⇒古体詩。⇒詩。
脚韻 詩詞で聯末や句末で押韻する文字を指す。押韻と近義であるが、押韻は「平声で押韻する」というように動詞として使うが、韻脚は「この詞の韻脚は…」という風に名詞として使う。韻脚。⇒虚字脚。
旧体詩 旧詩とも。現代語で、自由詩に対して、古体詩、五言、七言の絶句、律詩、排律などの定型詩をいう。
金、元代に興った北曲。詞に似た形式。元代に流行ったので元曲ともいう。初め、劇で歌われた。注意を要するのは、填詞を唐代の文献では、その当時の詞の使われ方(音楽に合わせて歌っていたこと)に照らして曲、曲子とも言っていたことである。⇒散曲。⇒元曲。
曲子 金、元代に興った北曲。詞に似ている。元代に流行ったので元曲ともいう。初め、劇で歌われた。注意を要するのは、填詞(詞=曲子詞)を唐代の文献では、その当時の詞の使われ方(音楽に合わせて歌っていたこと)に照らして曲子、曲とも言っていたことである。⇒散曲。 ⇒元曲。
虚字脚 上代詩歌の特徴で、之、兮、哉、也、矣、などの虚字が句の末尾(脚)になっていた場合、その一つ前で韻を踏むことをいう。例えば、次の青字が虚字脚で、赤字が本当の押韻の箇所である。
                 登彼西山兮,采其
以暴易暴兮,不知其
神農虞夏,忽焉沒兮,吾適安
吁嗟徂兮,命之
之字脚、兮字脚、哉字脚、也字脚、矣字脚、…という。
去声 漢語の声調の一。伝統的に見て、平声・上声・去声・また入声の四声(四つの声調)がある、その一。現代語の場合は、簡単に(第)四声ともいう。唐詩の近体詩、宋詞の押韻の場合、上声との混用も見受けられる。⇒平声、⇒上声、⇒入声。現代語音声を聴く場合はここを押す
琴趣 詞、填詞、詩餘を指す云い方。唐詩の次に現れた宋代に隆盛を極めた長短句入り混じった規則の極めて多い複雑な詩形の歌辞、また、その韻文形式。燕樂の歌辞や民間歌謡、歌曲の歌詞、また、唐詩形式の発展したもの。初期には曲子とも称され、曲子詞というその起源をよく物語っている。本サイトが中心として挙げているところのもの。詞。填詞。詩餘。長短句。近体樂府。詞曲。小詞。寓声楽府。 楽章。歌曲。歌詞。曲子詞。以上は詞の別称。 曲子は、散曲を指す場合が多い。
近体詩 五言、七言の絶句、律詩、排律をいう。唐代に盛行を極めた、比較的規則の多い詩体古体詩に対していう。今体詩ともいう。現代語の自由詩に対して、古体詩をも含めて旧詩、旧体詩ともいう。日本で一般に「漢詩」と称されるものは、主にこれになる。
偶体絶句 絶句の一。第一聯が対に、第二聯も対になっている。四句全てが対になっているもの。唐・王王之渙『登鸛雀樓』(白日依山盡)、白居易『勤政樓西老柳』(半朽臨風樹)等。
詞の多くは前半部分と後半部分に別れて表現する。その各部分の名称。前段を前、後段を後という。双調。
また、詞の助数詞。「…首」に当たる。「一首詞「を「一詞」ともいう。
元曲 元代に興った雑劇(戯曲)と散曲(歌謡)の総称。このサイトでは、散曲の意で使っている。唐詩・宋詞・元曲と並び称されるときによく使う。 ⇒散曲。 ⇒曲子。
交韻 『詩經』独自の押韻で、二種の韻脚を次のように交互にふむ特殊な換韻。例えば、「黍離」第一句から第四句までが交韻で、「」韻と「」韻とが交互に現れ、「という風に並んでいる。
二段構成の詞の後半部分をいう。⇔下。下片。
古語  古漢語。古代漢語。日本でいう漢文。 また、上代独特の語彙。⇔古白話。⇔現代語、現代漢語。
古詩 古体詩の一部分を構成し、四言、五言、七言、雑言がある。また、“古詩”gu3shi1と言う場合は、現代詩の対義語として使う場合がある。
  固有名詞的な用法のものとしては、『文選』にある漢(魏六朝)の五言古詩『古詩十九首』(行行重行行,與君生別離)を指す。⇒古体詩。
古体詩 近体詩が隆盛を極める前の詩形。古代の詩で、四言、五言、七言、雑言の古詩や樂府の総称。近体詩に対していう。⇒古詩。
古白話 白話系ではあるが、現代語では使われていない語彙。古い白話。填詞では比較的多く、李C照ではよく見られる。⇔古語。⇒白話。⇒文言。
孤平 平仄の「……」という配列。音楽的な美しさを失うため、近体詩では忌む。律句の「○●●○」と「●●○●●○」の赤字部分の平声字は、仄声に変えられない。「●●○」、「●●●●○」と青字部分が孤平なるのを避けるため。
もとめに応じて詩詞をつくること。
散曲 元代に興り、清代まで栄えた歌曲にのる詩体。元曲の歌謡部分を指す。胡夷の曲と北方の民謡が結合したものと、南方の里巷の曲を主成分として発達したものの総称。本サイトで主として取り扱っている填詞(詩餘)に次いで現れてきたものである。⇒元曲。 ⇒曲子。
三畳(四畳) 詞で、複数段に別れる表現形式のものである。三畳は双調よりも一つ多く、詞が三段に別れているもの。詞牌は夜半樂など数例を数えるのみで、少ない。四畳は「鶯啼序」のみ。 ⇒双調、⇒単調。
通常は、五言、七言詩を指して、詞や騒体、四言は含まれない韻文形式。⇒近体詩。⇒古体詩。
広義の場合は、全ての韻文を指す。⇒漢詩。
填詞、詩餘のこと。唐代の中葉に現れ、宋代に隆盛を極めた長短句入り混じった規則の極めて多い複雑な詩形の歌辞、また、その韻文形式。燕樂の歌辞や民間歌謡、歌曲の歌詞、また、唐詩形式の発展したもの。初期には曲子とも称され、曲子詞というその起源をよく物語っている。本サイトが中心として取りあげているところのもの。填詞。詩餘。琴趣。長短句。近体樂府。詞曲。小詞。寓声楽府。 楽章。歌曲。歌詞。曲子詞。以上は詞の別称。現代語では“詞”(ツー、ci2)という。 曲子は、散曲を指す場合が多い。
心の思いを述べて歌い上げたもの。長江流域で興った『楚辞』が有名。抒情的な内容の長文で散文的な韻文。『楚辞』以降も、作られている。古代では「詞」とも書かれる場合があるが、晩唐詞、宋詞などの填詞と区別する必要がある。⇒楚辭。⇒漢賦。 晩唐詞、宋詞など填詞の意の「詞」。
詞韻 填詞を作る際の韻書と、それに拠る詞韻の分類を指す。填詞では、近体詩を作る際に用いられる『平水韻』(詩韻、百六韻(百七韻))を使わないで、独自の詞韻を用いる。(なお、本サイトでは「詩韻」・「詞韻」では紛らわしいため、多くは「詞韻」「詞譜」・「平水韻」と言い換えている。)。詞の平仄と詩の平仄とは、平仄そのものは同じであるが、押韻の韻目の分類で違うところがある。十九部に分ける。(分類の詳細は「詞譜・詞牌」ページ参照。)
  平水韻と詞韻を比較すれば、詞韻の方がより簡明で、現代語に近い。特徴的なところとしては、ang韻系統(唐韻・陽韻と、独用であった江韻との統合)、eng韻、ing韻の統一、声調を超えて、同一韻母の韻部を同一の韻部にまとめるなど、作詞時、同一韻母の換韻(韻式で表すと「AAAaaaAAAaaaAAAA」等)に極めて便利に出来ている。実例を挙げていうと、詞韻の「第一部」では平声としては「一東」と「二冬」「二東」があり、(同一の「第一部」に)仄声としては上声で「一董」「二腫」、去声で「一送」「二宋」があるという構成になっている。
 「第一部」を表にすると       
第一部 平声 一東 東同童銅銅桐瞳中衷忠蟲沖終弓宮穹雄熊窮風楓隆空公功工攻蒙朦籠朧蓬篷洪紅虹鴻叢翁聰通…
二冬 冬農宗鍾鐘龍松沖容蓉封胸凶匈濃從逢縫峰鋒豐…
仄声 上声 一董 董動孔總籠桶蓊汞…
二腫 腫種踵寵壟擁冗重冢捧勇甬踴涌俑蛹恐拱竦悚聳鞏慫奉…
去声 一送 送夢鳳洞甕貢弄凍痛棟慟仲中粽諷空控哄…
二宋 宋用頌誦統縱訟種綜俸供從縫重共…
というふうになる。入声は語形そのものが他の声調と異なるので、第十五部以降に入声のみの韻部が設けられている。
  詞の韻部は、明・沈謙、清・仲恒の先だつ規範があり、「詞林正韻」では、平水韻分類法を用いないで、廣韻を用いているので、このページでは、廣韻分類法を用いていくことにする。清・戈載の『詞林正韻』(写真)を基本として、音価は漢語音韻史(王力先生)を、参考として、清・梁僧実の『四聲韻譜』を用いる。廣韻の方が平水韻よりも韻目が多く、少し複雑になるものの大差はないので、そのままにしておく。詩詞の鑑賞、分析、また作詞にも、大胆に見れば、基本的には両者は同じと考えても特に問題はなかろう。
詳しくは、「詞韻」を参照。 ⇒詩韻。⇔韻目。  
詩韻 通常、『平水韻』、百六韻(百七韻)を指す。詳しくは「詩韻のページ」を参照。
次韻 詩歌の応酬や共感のため、作詩の際、全く同一の韻字を同一配列で使うことを次韻という。同一の韻字を自由な配列で使うことを用韻といい、同一の韻部の中の文字を使うことを和韻という。⇔用韻。⇔和韻。 
詩詞 広義では、詩歌、韻文の総称。狭義に謂えば、詩は近体詩古体詩等で、詞は填詞を指す。
四声 漢語の四種の声調。伝統的には、平声、上声、去声、入声の四種。韻母の抑揚や韻尾が異なる事によって分類している。ただし、北方方言を基軸とした北京語(現代語)では、陰平、陽平、上声、去声の四つの声調になり、入声が無くなり、代わって平声が陰平と陽平とに二分した。 古語と現代語(また、方言によって)とでは、その指す範囲が異なる。なお、現代北京語系では四つの声調(陰平、陽平、上声、去声)を1声、2声、3声、4声と呼び、ā、á、ǎ、àのように表記する。本サイトでは単に、a1、a2、a3、a4のように表記している。⇒声調。 ⇒平声、⇒上声、⇒去声、⇒入声。
詞調 填詞の平仄配列の様式。各種の填詞の配列一覧を詞譜という。 ⇒詞牌。
失対 律詩等で、対にすべきところを為していないこと、或いは、対仗が失敗していることを謂うのに使われる。但し、対の形式は中国古詩では数十種類あり、それが初心者の詩作ではない限り、軽々には言えないものである。その意味で、初学者用語とも謂える。 
失粘 作詩法の禁忌の一で、粘法がなされていないということ。反法になっている。或いは、顧慮していない、ということ。⇔粘法。近体詩の盛唐以降では、守られているが、それ以前や漢魏六朝の作では、粘法そのものが成立していないので、失粘と呼ぶのは不適切である。第二句と第三句の平仄の配列を同じにしないで、反対にすること。例えば、第二句が「○○●●○」という句の場合、第三句が「●●○○●」という具合になっていることなどをいう。 ⇒一三五不論。⇒二六対。⇔粘法。 ⇔反法。
詞派 詞の表現内容、風格による分類。詞は、男女の情愛を詠み込んだものを主とし、この傾向のものを婉約詞という。その傾向の作品を作る詞人グループをまとめて、婉約詞派と呼ぶ。それに対して、蘇軾は別として、主として南宋時代に起こった愛国詞群を豪放詞と呼ぶ。以上の二大流派をさらに細分化して多くの流派がある。『唐五代両宋詞人年表』には、花間詞派、南唐詞派、婉約詞派、豪放詞派、大晟詞派、格律詞派、風雅詞派、江湖詞派などを色分けして表示している。
形式、外見による分類が詞調、詞牌、詞譜であるというのとは、全く異なる概念。
詞牌 填詞の形式名、音曲名と謂えるもの。詞牌とは本来は詞の題名ではなくて、形式名、曲調名(南北曲の)のことであり、曲牌のことであったが、明代以降、曲調を曲牌と言い出したのにともない、詞調を詞牌というようになった。詞牌で「本意」でない場合は題を添えて書いている場合がある。題を附けるのではなくて、添え書きをしている場合もあるが、その区別に悩む場合がある。これは主として作者の個性と時代に因っている。ここでいう、本意とは詞牌と詠い込む詞の内容が合致しているものをいうのであって、比較的初期のもの(唐五代詞)に多い。
  また、詞調が同様でも、詞牌が違う場合がある。同一の形式なのに、異なった名称(詞牌)が複数個あるものによく出くわす。これは、一つには、後世の人が、自分の愛する先人の詞の句の一部を詞牌として使うことである。『大江東去』、『江月』などは、その例である。また、『烏夜啼』と『相見歓』、は詞調は同じでも、嘗て詞が歌われていた時代には、宛われていた曲が違うため、本来は、別物と謂ってもよいものである(⇒異調同形)。もっとも、詞は現在、曲が失われており(音楽を宛った試みがあるが)、文学作品として接しているため、平仄の配列が同じ事から、同じに扱われている。ただ、或るものは、唐の教坊の曲名、唐の曲名、楽府題など多方面に亘り、嘗てどういう風に歌われてきており、それがどのようにして「填詞」のジャンルに統合されてきたのか真に興味深い。なお、詞牌と詞調の関係については、異なる場合もあるので注意を要する。 ⇒詞調。
詞譜 各種の填詞の詞牌の平仄式の一覧表である。これは填詞を作る際の韻書の働きをするものであるといえる。伝統的に詞譜と云った場合は、大きく二種類になる。一種は、曲譜であり、音曲、音楽面の記録集のことである。もう一種が、前記、填詞の詞牌の平仄式の一覧表になっている。本サイトでは、詞牌の平仄式を指している。 ⇒詞牌。
辞賦 辞や賦の併称。漢代などの上代に興った、主として長文で散文的な韻文。楚辞や漢賦が代表的であるが、『□□辞』や『□□賦』は後世でも作られている。辞は、抒情的な内容で、賦は、叙事的な内容になる。<