漢詩 陸放翁　　　客從城中來
　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　南宋　陸游

客從城中來， 相視慘不悦。 引盃撫長劍， 慨歎胡未滅。 我亦爲悲憤， 共論到明發。 向來酣鬪時， 人情願少歇。 及今數十秋， 復謂須歳月。 �ｩ將爾何心， 安坐望旄節。

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　　　　　　　　　客　　城中 從（よ）り　來（きた）る
　　　　　　　　　　　
客　　城中 從（よ）　來（きた）り，
相ひ視て　　慘として　悦ばず。
盃を引きて　　長劍を撫し，
慨歎す　　胡　未（いま）だ滅せずと。
我も亦（ま）た　　爲（ため）に　悲憤し，
共に論じて　　明發に到る。
向來　　酣鬪の時，
人情　　少しく 歇まんことを　願ふ。
今に及ぶまで　　數十秋，
復（ま）た謂ふ　　歳月を須（ま）たんと。
�ｩ將　　爾（なんぢ）　何の心ありて，
安坐して　　旄節（ばうせつ）を望まんや。

。詩罷聞呉詠，扁舟意不忘。」や、白居易の「竟夜無客來，

成素霓，嘯咤起�C風。震響駭八荒，奮威曜四戎。濯鱗滄海畔，馳騁大漠中。獨歩聖明世，四海稱英雄。」
※慨歎胡未滅：（悲しんだり心配したりして、）気持ちを昂ぶらせながら、胡（えびす）は、まだ滅んでいない」と（いった）。　・慨歎：悲しんだり心配したりして、気持ちを昂ぶらせる。ここでは､「胡未滅」といった歎き。前出張華『壯士篇』「壯士懷憤激…

成素霓」 という部分に該ろう。　・胡：えびす。（西方の）異民族。　・未滅：まだ滅ぼしていない。
※我亦爲悲憤：わたしもまた、（客人の慷慨の）ために悲しみ憤（いきどお）って。或いは、わたしもまた、（客人の慷慨とともに）悲しみ憤（いきどお）りをなして。　・亦：…もまた。　・爲：（介詞では〔ゐ；wei4●〕）…ため（に）。ため。後に名詞句などの受益者や原因、目的、動機を示す語句がくる。ここでは「爲之（此）悲憤」とすべきところの「之（此）」の省略とみた。　（動詞では〔ゐ；wei2○〕）する。なす。…とみなす。後に目的語をとる。　・亦爲：（前者の意では）「…もまた、（…の）ために…」。　（後者の意では）「…もまた、…となる」。前者の例では李白の『出妓金陵子呈盧六』「我

爾，祈請走兒童。」温庭『郭處士撃甌歌』「我

鬼雄。至今思項�秩C不肯過江東。」がある。　・悲憤：悲しみ憤（いきどお）る。
※共論到明發：一緒になって議論して、夜明け方にまでおよんだ。　・共論：一緒になって論議する。　・共：副詞。　・論：動詞。〔ろん；lun2○〕。　・到：（…に）およぶ。（…に）いたる。　・明發：夜明け方。また、夜通し。ここは、前者の意。
※向來酣鬪時：これまで、戦闘が酣（たけなわ）で、苦戦が続いていたときには。　・向來：これまで。従来。　・酣：〔かん；han1○〕（物事の）真っ最中。たけなわ（である）。　・鬪：たたかい。戦闘。ここでは金とのレコンキスタ運動、祖国恢復戦争をいう。　・酣鬪：戦闘が盛ん（なとき）。戦闘が酣（たけなわ）（のとき）。苦戦（の時）。
※人情願少歇：人としての正直な気持ちとしては、少し休みたいと願ったこともあった（が）。　・人情：気持ち。人間が本来持っている心の動き。　・願：ねがう。　・少：少し…。すこしく。副詞的に使われる用例。　・歇：〔けつ；xie1●〕憩う。休む。やめる。
※及今数十秋：（靖康之変から）今まで、（もう）数十年になる（が）。　・及今：今まで。　・数十秋：数十年。靖康之変（１１２７年）で徽宗、欽宗が金に拉致され、（北）宋が滅亡してから、更に、南宋が金との和議が成立（１１４２年）から、已に多くの歳月が流れたということ。
※復謂須歳月：まだまた、歳月を待た（なければいけない）のか　・復：また。ふたたび。更に。　・謂：いう。　・須：待つ。とどまる。また、もちいる。　・歳月：年月。時間。
※�ｩ將爾何心：各位の将軍たち、あなたはどのようなつもりで。　*前出『宋史・本紀・寧宗』の「

。」への苛立ち。　・�ｩ將：行軍の密計の詔を受けた、各将軍や軍の将領たち。陸游同様に軍部首脳を批判的に使ったものとしては、杜甫の『�ｩ將五首』其二「韓公本意築三城，擬絶天驕拔漢旌。豈謂盡煩回馬，翻然遠救朔方兵。胡來不覺潼關隘，龍起猶聞晉水�C。獨使至尊憂社稷，�ｩ君何以答升平。」 がある。　・爾：〔じ；er3●〕なんぢ（なんじ）。前出「諸将」を指す。　・何心：どのような思い。何を思って。
※安坐望旄節：何もしないで坐ったまま、（皇帝からの軍事指揮者の到着するのを）待ち望んでいるのか。　・安坐：何もしないでいる。落ち着いて坐っている。　・望：のぞむ。待ち望む。　・旄節：〔ばうせつ；mao2jie2○●〕旗。牛（からうし）の尾を飾ったはたじるしで、軍事の指揮者が持つもの。




◎　構成について

２００６．８．１９ 　　　　　８．２０ 　　　　１０．２６ 　　　　１０．２７

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