江上望青山憶舊 | ![]() |
|
清・王士禛 |
揚子秋殘暮雨時, 笛聲雁影共迷離。 重來三月靑山道, 一片風帆萬柳絲。 |
![]() |
揚子に 秋は殘るる 暮雨の時,
笛聲 雁影 共に迷離。
重ねて來る 三月 靑山の道,
一片の風帆 萬の柳絲。
******************
◎ 私感訳註:
※王士禛:清代初期の詩人、文学者。1634年(明・崇禎七年)~1711年(洪煕五十年)。現・山東省新城県の人。字は貽上、また子眞、号して漁洋。士禎と名を賜る。(王漁洋と呼ばれることも多い)。
※江上望青山憶舊:河の畔から青山を眺めて昔のことを思い出した。 *この詩は前半(第一、二句)で前年の秋を思い出して詠い、後半で眼前の春の風景を詠う構成になっている。これは『江上望青山憶舊二首』のその一。その二「長江如練布颿輕,千里山連建業城。草長鶯啼花滿樹,江村風物過清明。」はこちら。 ・江上:〔かうじゃう;jiang1shang4○●〕川の畔。河の畔。また、川の水面。ここでは長江の畔を謂う。 ・望:ながめる。 ・青山:固有名詞で山の名。江寧(現・南京附近)にある山の名称で江蘇省儀徴県の西南にある。地名では青山汛のことで江蘇省儀徴県の西。 ・憶舊:以前のことを思い出す。昔のことを思い出す。ここでは、去年のことを思い出している。年表に拠れば、1660年(順治十七年)八月に江南の郷試の試験官として江寧(現・南京)に赴き、翌・1661年(順治十八年)三月に再び南京に行った。これは翌年度の1661年(順治十八年)三月に作られた。
※揚子秋殘暮雨時:(去年に来た時は)揚子のある揚子江の秋が終わろうとする夕暮れに降る雨の折で。 ・揚子:〔やうし;Yang2zi3○●〕揚子江(やうすかう;Yang2zi3jiang1)。長江下流の一部地域(揚州から鎮江の間)での名称。また、同地域(北岸)にある県名・揚子:〔やうし;Yang2zi3〕。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)の54ページ「唐 淮南道」にある。唐・鄭谷の『淮上與友人別』に「揚子江頭楊柳春,楊花愁殺渡江人。數聲風笛離亭晩,君向瀟湘我向秦。」とある。 ・秋殘:秋の終わり。秋が終わろうとしている。 ・殘:くずれる。すたれる。 ・暮雨:夕暮れに降る雨。(蛇足になるが、「揚子」の「子」を「し」と読むか「す」と読むかは国語(日本語)での問題だが、どちらを採用するかで、県名か川の名とするのかが判る。)
※笛聲雁影共迷離:笛の音(ね)も(空を飛んで行く)カリの姿も、どちらもともにぼんやりとしていた。 ・笛聲:笛の音(ね)。 ・雁影:(空を飛んで行く)カリの姿。 ・共:どちらもともに。 ・迷離:〔めいり;mi2li2○○〕ぼんやりとしたさま。
※重來三月靑山道:(今回、)春の終わりの陰暦三月に再び青山道にやって来たが。 ・重來:去年の秋に来て、半年後の今、再びやって来たから。 ・三月:旧暦三月。新暦の四月後半頃。春の終わり。
※一片風帆萬柳絲: ・一片(ひとひら)の風に吹かれて進む帆掛け船に、あまたの柳の枝が枝垂(しだ)れている。 *句中の対を構成している。 ・一片:ひとひら。また、(水面などの平たく広いものを指して)一面。ここは、前者の意。 ・風帆:風に吹かれて進む帆掛け船。 ・萬:たくさん。あまた。数の非常に多いことを表す。 ・柳絲:柳の枝の枝垂(しだ)れる形容。
◎ 構成について
2009.6.11 6.12 |
![]() トップ |