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2003 USA/F/UK 111 Min. 劇映画
出演者
Mark Wahlberg
(Charlie Croker - 泥棒の親分)
Joel Homan
(Charlie、子供時代)
Donald Sutherland
(John Bridger - 金庫破り)
Charlize Theron
(Stella Bridger - 金庫の技術者)
Jason Statham
(Rob - 車の専門家)
Seth Green
(Lyle - コンピューターの専門家)
Mos Def
(左耳 - 爆発物の専門家)
Christopher Moore Jr.
(左耳、子供時代)
Edward Norton
(Steve - 潜入の専門家)
Franky G
(レンチ - 自動車の修理工)
Boris Lee Krutonog (Yevhen - 延べ棒の買取屋、ロシア・マフィア)
Olek Krupa
(Mashkov - 自動車の解体屋、ヤーヴェンの従兄弟、ロシア・マフィア)
Gawtti (Pete - 町の顔役)
見た時期:2003年11月
1963年マイケル・ケイン主演の同名の作品があり、そのリメイク。一部役名も同じです。先輩の泥棒にマイケル・ケインを持って来てもいいのですが、代わりにドナルド・サザーランドを連れて来ました。役にぴったりしています。彼はつい最近見たパニック 脳壊では思いっきり意地の悪い役を演じていますが、ミニミニ大作戦では普通のお父さん。
このところずっとあくの強い作品、徹底的にアクションや特殊効果に徹した作品、暴力、えげつない作品も見ていましたが、ミニミニ大作戦は珍しくさわやかな、60年代を思わせるおしゃれな作品です。主演はマーク・ウォールベルク。ボストンの社会の底辺から実力で上がって来た人です。しかし悲壮さを感じさせず、明るい表情。それがこの作品に良い効果をもたらしています。
ついもう1つのリメイクシャレードと比較してしまいます。今年のファンタに出ていました。両方とも欧州が舞台で、ミニミニ大作戦がイタリア、シャレード はフランスです。あくの強い作品ばかり見た後ですと、こういう作品がさわやかに思えます。とはいえ、個性がないと行けません。で、ミニミニ大作戦には物凄いカー・スタントが長時間出て来ます。それなのにミニミニという名前がぴったりで、かわいらしい印象になるのは、車が大型トラックなどではなく、モーリスのミニだからです。しかしこのアクション・シーン、侮っては行けません。かなりの迫力です。アクションはそれだけでなく、映画が始まってすぐ、イタリアのシーンも凄いです。ベニスのゴンドラを蹴散らしながらモーター・ボートのチェイス、007 を思い出します。
一見軽く、おしゃれだけのように見えますが、ミニミニ大作戦は各界の専門家を集めた《作戦映画》で、ちょっと前にご紹介したリーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦いよりずっと手際がいいです。ギャンブルプレイ、オーシャンズ11、スパイ大作戦、黄金の7人を混ぜ合わせたような話です。
作戦の内容ですが、泥棒の話。ですから集まって来るのは悪人ばかり・・・でもなく、盗むけれど殺さないというタイプがほとんど。あれだけ物凄いチェイスをやれば事故死する人が出るかも知れませんが、ペーター・ストルマーレのような故意に殺す殺人鬼は出て来ません。盗むのは黄金の7人を彷彿させる金の延べ棒約1トン。ミニミニ大作戦は「黄金の6人」です。ドイツでは復讐劇といううたい文句も出ていますが、キル・ビル!のような壮絶な復讐劇ではありません。
仲のいい黄金の6人はベニスで守備よく1トンの黄金をいただき。警察に追われることもなく、元の持ち主に追われることもなく、アルプスの雪の中で落ち合います。そこでスタンド・プレイに及び、仲間を殺してでも1人占めと考えた者が1名。彼だけは殺しもいとわず、殺ってしまいます。
死んだはずだよお富さん・・・生きていたとはお釈迦様は知りませんが、西洋の神様がついていたようで、犠牲は約1名。6−1−1=4、と犯人と犠牲者を引いて、残った4人は取り敢えず意気消沈しながら帰国。死んだのは師匠とも言うべきジョン。しかしジョンには同じ道を歩む娘がいました。同じ道?そうです、金庫をあける商売。しかし仕事の依頼主は警察。娘はまっとうな道を歩んでいたのです。
1年後、この娘を暗黒の世界に誘うべくチャーリーはリクルートにかかります。と言っても悪気ではなく、親父を殺った奴に一泡ふかせてやろうと持ちかけます。で、キュートなシャーリーズ・セロンも参加。これで5対1。裏切り者のスティーヴはここから後不利。とは言ってもスティーヴは一種のオタクで、完璧主義。護りは堅いです。
作戦はイタリアと全く同じ。問題は水の国ベニスでなく、アメリカの大都市ロサンジェルスという点。5人はそれでも同じ作戦を敢行し、金(きん)を手にします。後はトンズラ。イタリアとアメリカという土地の差が効果的で、同じ作戦でも実行する時はバージョンが違い、その差をテーマにしたところはユニークです。こちらでもえげつない殺人はなく、もしかしたら事故に巻き込まれて貧乏籤を引いた人がいるかもしれないという程度。画面には車が壊れるシーンしか出ません。ハリウッド式のハッピー・エンドですので、スティーヴだけ死にますが、マフィアに連れ去られるシーンまで。それ以上の残虐シーンは出ません。
イタリアで金庫破りをした元のメンバー6人を見ているとエドワード・ノートンだけがちょっと皆に背を向けている感じです。実は彼はパラマウントから言われてしぶしぶの出演。制作が終わった後、わざわざ「この作品は自分で選んで出演したのではない」とコメントまで出しています。あたかも私生活の不機嫌が作品に反映したかのようですが、それが筋にぴったりマッチしていて、邪魔になっていません。何しろ彼が裏切る役なのですから仲間はずれになっているのも当然。
もう1つノートンの役でおもしろいのは、彼1人だけ夢のない人間を演じているところ。無邪気に「1トンの分け前をもらったら君は何をする」とお互いにたずね合い、凄い車を買うとか、ステレオを買うとか、靴のコレクションをするとか、皆それぞれ自分の夢を言います。ところがスティーヴ1人夢がなく、「君たちの夢をみんな合わせる」と答えます。そして実際に金を1人占めした後豪華な自宅で仲間5人の夢を実現しますが、彼の夢だけありません。さりげないシーンですが、現代の若者が陥り易い危険を示しています。オタクになりやすいコンピューターの専門家ライルでさえ、「凄いステレオを買いたい」という夢があるのに、スティーヴだけそういう物がないのです。そして最後に裏切った仲間につかまり、ロシア・マフィアに引き渡されるシーンでは、状況を悟って感じる恐怖が顔一杯に出ていました。さすが演技派。嫌々演じたにしてはほんの1秒程度のシーンですが、ノートン、ギャラの分しっかり演技しています。そのせいでしょうか、ドイツの雑誌に載っていたウォールベルクのコメント「確かに無理に出演させられたが、あいつは手を抜いていない」。俳優は肝心な所で一瞬輝くかどうかが勝負です。
他愛ないおしゃれ活劇ですが、よく見ると色々おもしろいシーンが詰まっています。モーリス3台のカー・チェイスシーンは凄いですが、そのうちの1台とヘリコプターの闘牛シーンというのがあります。まるで闘牛師と牛が一騎打ちをするような形で、それも屋内。これ頭の良い方が勝ちます。
コンピューター、インターネット・ファンには愉快なギャグがあります。コンピューターの専門家ライル(井上さん、顔に見覚えありませんか?)が映画中最初から終わりまで、「真のナップスターのプログラムの作者は僕だ、あれは同級生に盗まれたのだ」と言い続けるのです。ハッカーの腕を発揮して市交通局のコントロール・センターを襲う時も、モニターに「真のナップスターをシャット・ダウンできないぞ!」と表示を出します。回想シーンでライルが眠っている間にフロッピーを盗む役を演じているのが、映画初出演の Shawn Fanning (ナップスターの創始者本人)。ユーモアがあります。なんの、なんの・・・で余裕の出演。
泥棒メンバーには、アクションにぴったりのジェイソン・ステーサム、本職は歌手のモス・デフも参加しており、新旧中堅俳優、本職は俳優がでない人などのいいアンサンブルです。他愛ない話でも手を抜かず、手間隙かけて作ってあります。
貰い損ねたサウンドトラック・・・。映画の券にはよく当たるのですが、時々、見に行くとさらに景品がもらえるという催しがあります。私は映画の券をもらえてありがたいのだから、これ以上欲張ってもしょうがないと思い、のんびり眺めていることが多いです。それでも去年1度、東の映画館でクリスマスに中古のサウンドトラックをもらったことがあります。ミニミニ大作戦では新品のポスターやサウンドトラックが景品でした。映画を見始めて、うんんん・・・このサウンドトラックは欲しいと思いましたが、時すでに遅し。他の人が射止めています。この間音楽のコーナーにチラッと書きましたが、冒頭からゴキゲンな音楽が流れます。おしゃれ映画のスタイルに合わせて、きれい、ピカピカのサウンド。ヘンリー・マンシーニなどを思い出してしまいますが、凝っているのはその曲が西洋音楽のオーケストラで演奏していながら、アラビア風なところ。その後は所々にソウルが顔を出します。特に愉快なのは子供の頃から手癖が悪かったというチャーリーがご幼少の頃を思い出すシーン。ご幼少の頃のマイケル・ジャクソンが ABC を歌う声が聞こえて来ます。小学校1年生でABCを習う時から、盗みのABCを覚えていたというしゃれ。
冒頭に音楽映画と書いたのは素敵なサウンドトラックのせいだけではありません。元々マーク・ウォールベルクは音楽家。左耳を演じているモス・デフも音楽家。そしてこの2人が訪ねて行く町の顔役も音楽家。この町の顔役は日本の方にはドイツより知られているかも知れません。なにしろ日本に住んでいたこともあるのだそうです。(そう言えばノートンも暫く大阪に住んでいましたっけ。)実生活で町のチンピラをやめて身内でバンドを結成するというところはウォールベルク一家と経歴が似ています。サモア・マフィアとか Boo Yaa T.R.I.B.E. という名前で活動しているそうです。 うたむらさんがご存知かも知れません。
マーク・ウォールベルクはご存知9人兄弟の末っ子。カソリックの教義を守っておりますなあ。9人兄弟でありながら両親は敢え無く離婚(マークより年下の子供は母親の再婚後の兄弟かも知れません)。いずれにせよたくさんの子供を抱えた母親は途方にくれ、マークは町のチンピラに。悪さがエスカレートして監獄に入ったのが幸いして、考え直し、出て来てからは逆方向へ。兄のバンドが The New Kids On the Block といい、当時大当たりしていて、大スター。その兄の助けで音楽の道に入り、Marky Mark and the Funky Bunch でブレーク。まるで映画に出て来る出世話のような事が現実に起こり、その後はもう出世街道を驀進。ドイツではカルバン・クラインのモデルとしても有名です。紆余曲折があり、タブロイド誌のヘッド・ラインに載ることも多かったようです。その後映画界に乗り出しましたが、音楽から来たとは思えない才能を発揮し、元から俳優だったのではないかと思えるほどです。ブギーナイツは共演俳優も皆その後大成功したという作品。その主演がウォールバークです。その後はあまり彼を上手に生かした作品を見ませんでしたが、そこへこのミニミニ大作戦が登場。バッド・ボーイやポルノ・スターのイメージはがらっと変わり、最近珍しい目元の涼しい若者に成長。物は盗んでも人はあやめないという彼のモットーを目だけできれいに表現しています。チャーリー役は私が見た中では最高の出来です。
さて、この3人のミュージッシャンが同時に登場するシーンがあります。「痩せっぽっちのピート」と呼ばれる町の顔役ピートは体重150キロを超えているのではと思わせる巨漢。彼に仕事で会いに行くチャーリーと左耳。チャーリーは左耳にピートをじろじろ見るなと警告します。しかし左耳はピートがあまりにも太っているのでついジーっと見てしまいます。この視線、ただ太っているから見てしまうというようにも見えますが、音楽のライバルをジーっと見るやっかみ半分の目つきにも見え、とても愉快です。
というわけであちらこちらに愉快なシーンがちりばめてあり、アクション・コメディーと言われるのも納得。続編作ったら必ず見に行きます。
後記: 続編本当にできそうです。
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