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ザ・ミッション 非情の掟 /
鎗火 /
Cheung fo /
Qiang huo /
The Mission

杜h峰/Johnnie To

1999 HK 81 Min. 劇映画

出演者

高雄/Eddy Ko
(文哥/Lung - 狙われるボス)

施綺蓮/Elaine Eca Da Silva
(文哥の妻)

任達華/Simon Yam
(南哥/Frank - 文哥の弟)

王天林/Tian-lin Wang
(肥祥 - 文哥と南哥のおじ)

呉鎮宇/Francis Ng
(來/Roy - 文哥の護衛)

黄秋生/Anthony Wong
(鬼/Curtis - 文哥の護衛、理容師)

呂頌賢/Jackie Lui Chung-yin
(信 - 文哥の護衛)

張耀揚/Roy Cheung
(Mike - 文哥の護衛)

林雪/Suet Lam
(肥/James - 文哥の護衛、武器の調達役)

シュク
(レストランの持ち主)

佐藤佳次
(殺し屋)

終わりまで見た時期:2007年1月

要注意: 別なページに行くとネタばれあり!

このページだけなら決定的な所はばれません。

驚いたことに井上さんも別な杜h峰監督の作品を見て、途中で引っかかってしまい、ある日意を決して最後まで見たら物凄くおもしろかったという意見を述べています。

教訓: 杜作品、めげるな、最後は呆気に取られる

この作品の欠点は音楽と、最初の60分。井上さんは音楽が気に入った(ちょっと下へスクロールして下さい)様子なのですが、私は使われた楽器が神経に響き、同じメロディーでも電気関係の楽器をやめて自然なサウンドにすればよかったのにと思いました。それだけでかなり印象が変わります。

冒頭林雪演じる肥(これは《太っちょ》という意味なんでしょうか。デブというほどの太さではありませんが、來(あの呉鎮宇!)よりは太目です)がトイレット・ペーパーで汗を拭くシーンがあり、井上さんも言及しています(同じく下へスクロール)。ドイツ人でもひどく風邪を引いてひっきりなしに鼻をかまなければ行けない時にはトイレット・ペーパーを持ち出す学生がいます。普通の場所では見ませんが、学生時代にはいろいろなことが許されるようです。

2度ほど途中でめげていたのですが、ついに最後まで見ました。そしてラストに「やられたっ!」と感心しました。井上さんからはずっと《お薦め作品》扱いだったのですが、なぜか途中でめげるのです。理由は今日に至るまで分かりません。大体60分ぐらい来たところでめげます。

詳しい説明は井上さんのページにあるので私は感想中心に行きます。上から2番目の記事なので少し下にスクロールして下さい。

町に勢力を伸ばしているやくざのボスが時々殺し屋に狙われ、その対策として5人の腕利きが雇われ、護衛をするというストーリーです。観客の注意を引きつけるため、殺し屋を雇っているのが誰か伏せてあります。60分ぐらいしても殺し屋と護衛がドンパチやっているだけなので、私はめげてしまうのです。

ようやく3度目の正直で終わりまで見た結果、アッと驚く為五郎(古いねえ・・・)。

最初の60分を見ていると「監督のスタイルがまた出ているなあ」と思います。香港を人の少ない町として描いていて、観光客が持っている中心街の《人の多い町》、《雑踏》というイメージとは全然違う雰囲気を出しています。私は何度見せられてもこのスタイルが好きで、フィルムに杜h峰の判子が押してあるような気持ちになります。

最初の3分の2で特徴と言えるのは、ストーリーの展開ではなく、話の中心になっているやくざの生活の方。ボスが殺し屋に狙われているというので、5人の護衛が雇われというか、抜擢されて来ます。最初にそれぞれのこれまでの生活がざっと紹介されます。理容師・美容師、ディスコのドアマンなどそれほどでもない職業でチップや理髪料を稼いでいます。一応裏の社会に属しているので、それなりのルールもあり、引退しても時々所謂裏の世界の仕事もあります。大ボスが5人に声をかけてくれたので、5人はまんざらでもありません。

本来なら周囲の者から恐れられるはずのボスですが、人間ができていて、自分の役割、年齢などを年相応に悟っています。5人が家に来た時にボスがコーヒーを入れてやろうとして、5人が驚いて何も言えなくなってしまったりするシーンがあり、ボスの人柄が分かり易く描かれています。やくざを人間味を出して描いて犯罪者を増やしては行けませんが、このシーンは紙くずのボールでやるサッカーと共に前半の重要なポイントになっています。

紙玉サッカーはボスの家で5人が退屈している時に何とはなく始まります。紙くずを丸めたボールを誰かが蹴ると、そのボールが目の前に来た別な男が蹴り、それがまた次に・・・と言う風に広がって行きます。最初はばかばかしいと思って斜に構えていた男までが参加。秘書の女性が来ると、さっとボールを隠して何食わぬ顔。いなくなるとまた始めます。人を殺すような仕事を引き受けているやくざが子供のような一面を見せ、観客は思わずクスリ。粋な演出です。やくざを礼賛しては行けないと思いつつつい引き込まれてしまいます。

こういうシーンと逆に銃撃戦はマジ。最初ちょっと箍が緩んだように見える5人ですが、大きなショッピング・モールで撃ち合いになったりすると、しっかり誰かが前に出ると他の誰かが援護をする、周囲を見る角度もお互いにしっかり自分の領域を守るなど、まるで特殊部隊の兵士のように手際がいいのです。

そしてドンパチやるばかりではなく、人間ドラマも。このショッピング・モールで掃除夫をしている男がかつて裏切り者と思われて制裁を受けたことがありました。実は出入りでビビってしまって隠れただけなのですが、それでも裏の世界ではルール違反。ようやく命は助けてもらい、掃除夫になったわけですが、目の前に大ボスを見て体がこわばります。ボスの方は一応事情を知っていて、「あの時は悪かったな」という気持ちがあるので、弟に金を渡させ「これで勘弁しろ」という流れになります。掃除夫はちょっと呆気に取られますが、札束を受け取ります。

しかしこのショッピング・モールには敵の差し向けた暗殺者が複数出動中。そこへまた運の悪いことに5人の1人鬼(冷血な男だというので、仲間からも「お前は本当に鬼だ」と文句が出ます。あの黄秋生です!)の昔の仲間とばったり。その友達は鬼に出会ったのが幸いと「仕事を回してくれ」とせがみます。ちょうど今勤務中の鬼は困ってしまいます。5人の精神的なバランスがこの男のために崩れそうになった時、掃除夫が刺客に気付き「ボス、危ない!」と刺客とボスの間に割って入ります。そのため弾は掃除夫に命中。台詞は節約してありますが、観客にも事情が分かるように撮影されているのでスリル満点です。

私がめげてしまい最初の2回見なかったシーンも捻ってありました。捨て置かれた工場のような場所までたどり着いた5人は中に入ろうとしますが、工場にはスナイパーがいて、ライフルで狙って来ます。5人は外から狙う組と、工場の中へ忍び込む組に分かれます。工場に忍び込んだ組はもう敵の陣地にたどり着いているのですが、1人がまだバンバン仲間を撃っているのを黙って見ています。一瞬「何やってんだろう」と思いましたが、間もなく思いついたのは「1人は生かしておかないと行けないんだ」ということ。

私が2度もめげてしまったのは、延々撃ち合いや警備の内部事情などが示されるのに一向にボスを狙う犯人や動機が分からなかったからです。「それをスナイパーから聞き出そうと思ってるんだ」と納得。ですから皆殺しにするわけにはいかないのです。「ははあ、これから真相に近づくんだな」と思ったとたん、あっけなく依頼人はばれてしまいます。スナイパーを拷問する必要すらありませんでした。ほっ。

それから暫くスナイパーと5人はタバコを勧めたり友好的な雰囲気。全員がこれからどうなるか心得ているかのようで、できれば乱れた態度は取りたくないという雰囲気です。そして問題の電話。上からの命令が下ります。誰もが納得していることで、誰もがそのルールに逆らいません。日本にも似たような伝統があるので、私も「ギャング映画なら仕方ないか・・・」。

さて真犯人が分かったので、何人かはそちらへ出動。大ボスの方でも協議され、処分が検討されます。動機も発表され、処分を受ける方も処分をする方も納得。弾が飛んで来ておしまい。

これで物語りは終わらないのです。60分に差し掛かるあたりから動きはやたら活発になるのです。

私がめげた1時間になる直前あたりからの経過は急に慌しくなります。あと数分見ていれば、ジェットコースターに乗れたのですが、私は乗り損ねています。この先を読むと何もかもがばれてしまうので別なページに書きます。見る機会がないからという方、ばれてもいいよという方はこちらへどうぞ

60分を過ぎたあたりから結末まではジェットコースターに乗ったように次々と危ない展開が続き、息をつく暇もありません。後から考えると、それを最初から計画に入れてあったので、最初の60分をのんびりしたトーンで押して行ったのかも知れません。最後の30分はどこまで続くか分からない意外な展開で、終点がなかなか見えて来ませんでした。映画館で座っていたら途中でめげるというわけにいかず終わりまで一気に見ることができたでしょうが、逆に「あそこはどうなっているんだ」と思っても見直しはききません。ドイツでは毎回入れ替えなので、もう1度見たければ2倍の料金がかかります。

さて、杜h峰監督はまたしても驚くべき81分という時間の中で密度の濃い物語を語りました。簡単に140分とか200分を超える映画の予算が取れるハリウッドの有名監督もすばらしいですが、さほどお金ももらえず、ギャラの安い俳優ばかりを使っても、このような作品ができてしまう不思議の国香港。生活のために1年に何本も似たような映画に出続ける俳優は気の毒だと以前は思っていたのですが、このところ続けて杜h峰監督の映画を見直し、その考えは捨てました。ハリウッドに進出して物凄いギャラをもらい、世界中に名が知られるようになってみても、出演依頼が減り、こういうおもしろい作品に協力するチャンスがなくなるとしたら俳優としてはどちらがいいか、そう考えて誘われても香港にとどまっている人もいるかも知れません。

結論: 井上さんが杜h峰ファンになるのは仕方がない。

井上さんに知らせてもらったりしたので、時々香港映画を見ますが、私に取ってもおなじみの顔が少しずつ増えて来ました。香港の良い所は、今回警察官を演じたからと言って、その俳優が次も正義の味方とは限らない点。警察官でも事件に巻き込まれて悪人になっている人もいますし、やくざでも人情の分かるいい親父さんを演じる人もいます。特定の顔を見て最初から「この人が犯人のはずはない」と決めつけることができません。

ファンタには最近韓国から佳作が来ることが多く、香港勢は日本と同じく押され気味。しかし杜h峰のような監督がいる場所。そのうちにまた盛り返して来るかも知れません。

などと書いている最中に井上さんからぶっ飛びの杜作品を見たというニュースが入りました。

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