從軍行
唐 王昌齡
青海長雲暗雪山,
孤城遙望玉門關。
黄沙百戰穿金甲,
不破樓蘭終不還。
**********************
。
從軍行
青海の長雲 雪山 暗し,
孤城 遙かに望む 玉門關。
黄沙 百戰 金甲を穿つ,
樓蘭を 破らずんば 終
(つひ)
に 還
(かへ)
らじ。
******************
◎ 私感訳註:
※王昌齢:盛唐期の詩人。700年?(嗣聖年間)〜755年?(天寶年間)。字は少伯。京兆の人。七言絶句に秀で、辺塞詩で有名。
※從軍行:樂府相和歌辞。辺疆塞外を詠う。全七首で、他に、盛唐・王昌齡の『從軍行』は「大漠風塵日色昏,紅旗半捲出轅門。前軍夜戰洮河北,已報生擒吐谷渾。」
などがある。
※青海長雲暗雪山:青海に長く広がる雲がたれ込めて、天山が暗くなっている。 ・青海:青海省にあるココノール湖。杜甫に『兵車行』「
君不見
青海頭
,古來白骨無人收。新鬼煩冤舊鬼哭,天陰雨濕聲啾啾。」
がある。 ・長雲:長く広がる雲。 ・暗:暗くたれ込めている。 ・雪山:天山
。天山一帯。当時の中国人の世界観では、最西端になる。天山山脈のこと。新疆ウイグル(維吾爾)自治区中央部を東西に走る大山系で、パミール高原の北部に至る。長安から見れば、西北西の遙か2000キロメートルの地になる。
※孤城遙望玉門關:前進基地の孤城から玉門関が遥か遠くに眺められる。 ・孤城:砂漠の中にある出城。前進基地。ぽつんと一つだけ離れてある要塞。 ・遙望:遥か遠くに見える。 ・玉門關:西域に通ずる交通の要衝。関。現・甘肅省燉煌の西になる。
王之渙の『出塞』「黄河遠上白雲間,一片孤城萬仞山。羌笛何須怨楊柳,
春風不度
玉門關
。」
や、李白の『子夜呉歌』に「長安一片月,萬戸擣衣聲。秋風吹不盡,
總是
玉關
情
。何日平胡虜,良人罷遠征。」
とある。
※黄沙百戰穿金甲:(西域の)黄沙地帯で多くの回数の戦闘を重ね、(ついには)金属の鎧にも穴があいてきた(が)。 ・黄沙:黄色い砂の砂漠。 ・百戰:多くの回数の戦闘。 ・穿:穴があく。長期の遠征のために金属の鎧にも穴があいてきたということ。 ・金甲:黄金の鎧。よろい。
※不破樓蘭終不還:(異民族の本拠地である)樓蘭を打ち破ることなくば、どうしても帰ってくることはない。 ・不破:打ち破る。前漢の昭帝の頃、傅介子が樓蘭王を殺したことに基づく。『漢書』本紀・昭帝紀に「平樂監
傅介子持節使,
誅斬樓蘭王安
,歸首縣北闕,封義陽侯。」とある。『資治通鑑』では、「陳湯之斬單于,
傅介子之刺樓蘭
,馮奉世之平莎車,班超之定西域,皆爲有漢之雋功。」と、その事績が残っている。李白の『塞下曲』の「五月天山雪,無花只有寒。笛中聞折柳,春色未曾看。曉戰隨金鼓,宵眠抱玉鞍。願將腰下劍,
直爲斬樓蘭
。」
にも同様に詠われている。 ・樓蘭:〔ろうらん;Lou2lan2○○〕漢代、西域にあった国。都市名。天山南路のロブノール湖(羅布泊)の畔にあった漢代に栄えた国(都市)。ローラン。原名クロライナ。現・新疆ウイグル(維吾爾)自治区東南部にあった幻の都市。天山の東南で、新疆ウイグル自治区中央部のタリム盆地東端、善〔善+おおざと〕県東南ロブノール湖(羅布泊)の北方にあった。そこに住む人種は白人の系統でモンゴリアンではなく、漢民族との抗争の歴史があった。四世紀にロブノール湖(羅布泊)の移動により衰え、七世紀初頭には廃墟と化した。現在は、楼蘭古城(址)が砂漠の中に土煉瓦の城壁、住居址などを遺しているだけになっている。岑参に『胡笳歌送顏真卿使赴河隴』「君不聞胡笳聲最悲,紫髯濠瘡モ人吹。吹之一曲猶未了,
愁殺
樓蘭
征戍兒
。涼秋八月蕭關道,北風吹斷天山艸。崑崙山南月欲斜,胡人向月吹胡笳。胡笳怨兮將送君,秦山遙望隴山雲。邊城夜夜多愁夢,向月胡笳誰喜聞。」
がある。 ・終:どうしても。いつまでも。とうとう。しまいに。ついには。 ・終不-:結局…ではあるまい。ついひ…せじ。ここの「不」は打ち消し推量で、「じ」と読む。 ・不還:還(かえ)らない。戻らない。かえってこない。
◎ 構成について
七言絶句。韻式は「AAA」。韻脚は「山關還」で、平水韻上平十五刪(關還山)。次の平仄はこの作品のもの。この作品の平仄は、次の通り。
○●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2003.11. 8完
2005. 1. 4補
5.16
2015. 4.11
5.27
漢詩 唐詩 漢詩 宋詞
次の詩へ
前の詩へ
「碧血の詩篇」メニューへ戻る
**********
辛棄疾詞
陸游詩詞
李U詞
李清照詞
花間集
婉約詞
歴代抒情詩集
秋瑾詩詞
天安門革命詩抄
毛主席詩詞
碇豊長自作詩詞
豪放詞 民族呼称
詩詞概説
唐詩格律 之一
宋詞格律
詞牌・詞譜
詞韻
詩韻
参考文献(宋詞・詞譜)
参考文献(詩詞格律)
参考文献(唐詩・宋詞)
わたしの主張
メール
トップ