Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye




                    
                   
      兵車行
              
                  杜甫 
車轔轔,
馬蕭蕭,
行人弓箭各在腰。
耶孃妻子走相送,
塵埃不見咸陽橋。
牽衣頓足闌道哭,
哭聲直上干雲霄。
道旁過者問行人,
行人但云點行頻。
或從十五北防河,
便至四十西營田。
去時里正與裹頭,
歸來頭白還戍邊。
邊庭流血成海水,
武皇開邊意未已。
君不聞漢家山東二百州,
千邨萬落生荊杞。
縱有健婦把鋤犁,
禾生隴畝無東西。
況復秦兵耐苦戰,
被驅不異犬與鷄。
長者雖有問,
役夫敢申恨。
且如今年冬,
未休關西卒。
縣官急索租,
租税從何出。
信知生男惡,
反是生女好。
生女猶得嫁比鄰,
生男埋沒隨百草。
君不見青海頭,
古來白骨無人收。
新鬼煩冤舊鬼哭,
天陰雨濕聲啾啾。


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兵車行       
                       
車 轔轔
(りんりん)
馬 蕭蕭
(せうせう)
行人の 弓箭
(きゅうせん)  各ゝ(をのをの) 腰に在り。
耶孃
(やぢゃう) 妻子  走りて 相(あ)ひ送り,
塵埃
(ぢんあい)に 見えず  咸陽橋(かんやうけう)
衣を牽
(ひ)き 足を頓し  道を闌(さへぎ)りて 哭し,
哭聲 直上して  雲霄
(うんせう)を干(をか)す。
道旁の 過ぐる者  行人に 問へば,
行人 但
(た)だ云(い)ふ  點行 頻(しき)りなりと。
(あるひ)は 十五 從(よ)り  北のかた 河に防ぎ,
便
(すなは)ち 四十に至るも  西のかた 田を營む。
去る時 里正  與
(ため)に 頭を裹(つつ)み,
歸り來
(きた)れば 頭 白くして  還(ま)た 邊を戍(まも)る。
邊庭の流血  海水を 成せど,
武皇 邊を開く  意は 未だ已
(や)まず。
君 聞かずや  漢家 山東の二百州,
千村 萬落  荊杞
(けいき)を 生ずるを。
(たと)ひ 健婦の  鋤犁(じょり)を把(と)る有りとも,
(いね)は 隴畝(ろうほ)に生じて  東西(とうざい) 無し。
(いは)んや復(ま)た  秦兵は 苦戰に耐ふとて,
驅らるること   犬と鷄とに 異らず。
長者  問ふ有りと雖
(いへど)も,
役夫
(えきふ)  敢(あへ)て恨みを申べんや。
且つ  今年の冬の 如きは,
未だ  關西
(くゎんせい)の卒を 休(や)めざるに。
縣官  急に租を索
(もと)め,
租税  何
(いづ)くより 出(い)ださん。
(まこと)に 知る  男を生むは惡(あ)しく,
反って是れ  女を生むは好
(よ)きを。
女を生まば 猶
(な)ほ  比鄰(ひりん)に嫁するを得るも,
男を生まば 埋沒して  百草に隨
(したが)ふ。
君 見ずや  青海の頭
(ほとり)
古來 白骨  人の收むる 無く。
新鬼 煩冤
(はんゑん)し  舊鬼 哭し,
天 陰
(くも)り 雨 濕(しめ)るとき  聲 啾啾(しうしう)たるを。

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◎ 私感註釈

※杜甫:盛唐の詩人。712年(先天元年)〜770年(大暦五年)。字は子美。居処によって、少陵と号する。工部員外郎という官職から、工部と呼ぶ。晩唐の杜牧に対して、老杜と呼ぶ。さらに後世、詩聖と称える。鞏県(現・河南省)の人。官に志すが容れられず、安禄山の乱やその後の諸乱に遭って、流浪の生涯を送った。そのため、詩風は時期によって複雑な感情を込めた悲痛な社会描写のものになる。

※兵車行:戦いに使う車の歌。「行」は楽府の「詩・歌」の意。『代朗月行』『前有樽酒行』『蒿里行』など。府兵制、募兵制に対する批判の意を込めた詩。この詩のイメージは白居易の『新豐折臂翁』「新豐老翁八十八,頭鬢眉鬚皆似雪。玄孫扶向店前行,左臂憑肩右臂折。問翁臂折來幾年,兼問致折何因縁。翁云貫屬新豐縣,生逢聖代無征戰。慣聽梨園歌管聲,不識旗槍與弓箭。無何天寶大徴兵,戸有三丁點一丁。點得驅將何處去,五月萬里雲南行。聞道雲南有瀘水,椒花落時瘴煙起。大軍徒渉水如湯,未過十人二三死。村南村北哭聲哀,兒別爺孃夫別妻。皆云前後征蠻者,千萬人行無一廻。是時翁年二十四,兵部牒中有名字。夜深不敢使人知,偸將大石槌折臂。張弓簸旗倶不堪,從茲始免征雲南。骨碎筋傷非不苦,且圖揀退歸ク土。此臂折來六十年,一肢雖廢一身全。至今風雨陰寒夜,直到天明痛不眠。痛不眠,終不悔,且喜老身今獨在。不然當時瀘水頭,身死魂孤骨不收。應作雲南望ク鬼,萬人冢上哭。老人言,君聽取,君不聞開元宰相宋開府,不賞邊功防黷武。又不聞天寶宰相楊國忠,欲求恩幸立邊功。邊功未立生人怨,請問新豐折臂翁。」 に受け継がれている。

※車轔轔:車はガラガラ。 ・轔轔〔りんりん;lin2lin2(lin4lin4)◎◎〕車のきしり轟(とどろ)く音。さかんなさま。動詞は●。車の形容は、『詩経』では王風『大車』では「大車
檻檻,毳衣如。豈不爾思,畏子不敢。」や秦風『車鄰』の「有車鄰鄰,有馬白顛。未見君子,寺人之令。」などとある。後者がこの作品と似ている。後世、晩唐〜・韋荘は『長安春』で「長安二月多香塵,六街車馬聲轔轔。家家樓上如花人,千枝萬枝紅?新。簾間笑語自相問,何人占得長安春。長安春色本無主,古來盡屬紅樓女。如今無奈杏園人,駿馬輕車擁將去。」と使う。

※馬蕭蕭:馬はヒヒーン。 ・蕭蕭:〔せうせう;xiao1xiao1○○〕風や雨の音のさびしいさま。ものさびしいさま。『詩経』小雅『車攻』の「蕭蕭馬鳴」は、のどかな(馬の)さま。

※行人弓箭各在腰:出征兵士は、弓矢をおのおの腰に着けている。 ・行人:〔かうじん;xing2ren2○○〕出征兵士。『中国軍事史略』(軍事科学出版社)中巻「第七節募兵制」の章では募兵(徴兵)に応じた家族の場合は、永年に亘り免租で家族が共に行きたい場合は田宅が支給される。兵士の家族には食糧と春冬の衣料が支給されるという。 ・弓箭:〔きゅうせん;gong1jian4○●〕弓矢。 ・各:おのおの。 ・在腰:腰に着けている。

※耶孃妻子走相送:父と母、妻と子は、走って見送ってくる。 ・耶孃:〔やぢゃう;ye2niang2○○〕父と母。≒爺孃。 ・妻子:妻と子。 ・走:はしる。 ・相送:見送ってくる。見送りかける。「相」は動作が対象に及ぶ表現。動詞の頭に附ける。

※塵埃不見咸陽橋:すなけむりで、咸陽橋が見えなくなる。 ・塵埃:〔ぢんあい;chen2ai1○○〕すなけむり。ちりとほこり。 ・不見:見えなくなる。見失う。 ・咸陽橋:長安と咸陽(渭城)の間を流れる渭水に架かる橋の名。 ・咸陽:〔かんやう;xian2yang2○○〕秦の都。渭城のこと。渭水を夾んで長安の対岸(北岸)の街になる。

※牽衣頓足闌道哭:上着を引っ張ったり、地団駄を踏んだり、足にしがみついたり、道をさえぎって、声をあげて泣いている。 ・牽衣:上着を引っ張る。 ・牽:〔けん;qian1○〕ひく。ひっぱる。ひきとめる。 ・頓足:〔とんそく;dun4zu2●●〕地団駄を踏む。足を踏みならす。足にしがみつく。 ・頓:〔とん;dun4●〕やどる。とどまる。とどこおる。ぬかづく。 ・闌道:道をさえぎる。 ・闌:〔らん;lan2○〕さえぎる。ふせぐ。 ・哭:〔こく;ku1●〕声をあげて泣く。

※哭聲直上干雲霄:啼き声は、真っ直ぐにたち上って、雲のある大空にまでとどいている ・哭聲:啼き声。 ・直上:真っ直ぐに立ち上る。王之渙『出塞』「黄沙
直上白雲間,一片孤城萬仞山。羌笛何須怨楊柳,春風不過玉門關」(普通は『涼州詞』「「黄河遠上白雲間,一片孤城萬仞山。羌笛何須怨楊柳,春光不度玉門關」の方が有名)。 ・干:〔かん;gan1○〕おかす。凌ぐ。 ・雲霄:〔うんせう;yun2xiao1○○〕雲のある空。遠い空。天。

※道旁過者問行人:道端の通りすがりの者(である作者)が問い尋ねる(と)。 ・道旁:道端。路傍。 ・過者:通りすがりの者。道を過ぎった者。この場合この詩の作者である杜甫のことになる。 ・問:問い尋ねる。

※行人但云點行頻:出征兵士がただということには、徴兵が頻(しき)りであり。 ・但:ただ。ただ…だけ。 ・云:…という。伝聞の表現。 ・點行:徴兵。 ・頻:しきりである。

※或從十五北防河:或る者は十五歳から、北の方の黄河(上流)の防衛戦の守備に就き。 ・或:或る者。 ・從:…から。…より。 ・十五:十五歳。立志の歳である。人が一人前となる年。唐代の徴兵年齢については、『中国軍事史略』(軍事科学出版社)中巻「第七節募兵制」の章で、「如先天二年(713年)詔令將過去21歳入軍、61歳退役,改爲25歳以上入軍,50歳放歸。若頻繁被徴召,則10年可解除兵役。」(72ページ)となっている。 ・防河:黄河防衛線の護り。『中国軍事史略』中巻「第五節 唐朝同邊境各族的和戰」中の「一、唐與突厥的和戰」「二、唐與吐蕃的和戰」に拠ると、高宗から睿宗の時期に吐蕃との戦乱が続いた。開元十五年727年)には吐蕃と青海の西で戦った。このころの北方の戦争は突厥との闘いよりも吐蕃との戦いに移っていた。『舊唐書・本紀・玄宗』の開元二年の條では、「薛訥吐蕃渭州西界武階驛,斬首一萬七十級,馬七萬七匹,牛羊四萬頭」。開元八年の條では「突厥涼州,殺人掠羊馬數萬計而去」。開元十四年の條では「辛丑,涼州都督王君吐蕃青海之西,虜輜車、馬羊而還。」とある。

※便至四十西營田:そのままで、四十歳になって、西の方の屯田兵を命ぜられた。 ・便:そのままで。白居易の『香爐峯下新卜山居草堂初成偶題東壁』「日高睡足猶慵起,小閣重衾不怕寒。遺愛寺鐘欹枕聽,香爐峯雪撥簾看。匡廬
便是逃名地,司馬仍爲送老官。心泰身寧是歸處,故ク何獨在長安。」 に同じ。 ・至:…になる。…にいたる。 ・四十:四十歳。不惑の歳である。 ・營田:屯田兵となる。

※去時里正與裹頭:出征する時、村長は(わたしの)ために出征の装束の頭巾をかぶせてくれた。 ・去:行く。 ・里正:村の長。里長(さとおさ)。 ・與:〔よ;yu3,yu2yu4◎〕ため(爲)に。 *中日両国とも伝統的に(『孟子・離婁上』「得其心有道:所欲,
聚之;所惡,勿施爾也。」)と同様に、「ため(爲)に」と読み、そのように解しているが、恐らくそれは「去時里正與裹頭」と「歸來頭白還戍邊」とが対句であると見なしてであろう。「」と「裹頭」とは、語法上、同類と見られるか。「去時里正與(之)裹頭」の変形と見なすのか。 ・裹頭:〔くゎとう;guo3tou2●○〕三尺の黒いうすぎぬで頭巾のように頭を包む。戦争に行く時の装束。

※歸來頭白還戍邊:帰ってくたら、(もう)頭髪が白くなっているのに、なおまた辺疆を防備する(ことを命ぜられた)。 ・歸來:帰ってくる。戻ってくる。 ・頭白:頭髪が白くなっている。 ・還:なお。なおまた。 ・戍邊:辺疆を防備する。 ・戍:〔じゅ;shu4●〕まもる。国境をまもる。

※邊庭流血成海水:国境附近の戦闘による流血は、海のようになった。 ・邊庭:辺疆。辺境。辺境の領土。国境附近。 ・海水:湖水。湖の水量。湖水のように広がっていること。

※武皇開邊意未已:漢の武帝(唐・玄宗を暗示)の辺疆を開こうという意図は、まだ終わらない。 ・武皇:漢の武帝 。第七代の皇帝。前159年〜前87年。廟号は世宗。対外的積極政策を推進して、戦国時代以来中国を圧迫していた匈奴の征討を遂行して、数十万人の大軍による外征を繰り返した結果、匈奴の撃破に成功しし、漢朝の安全を脅かしてきた北方異民族・匈奴の問題を解決した。中央集権的専制主義を完成させた大帝。現在、「漢武大帝」と称えられている。ただ、詩詞の上では蘇武、李陵の故事、また劉細君、王昭君の悲話を遺している。やここでは、同様に吐蕃征討を繰り返した明皇(唐の玄宗)を指している。 ・開邊:辺疆を開く。辺疆の異民族を征討して、漢土の領地を拡げていくこと。 ・意:意図。意味。心。 ・未已:まだ休(や)まない。まだ終わらない。

※君不聞漢家山東二百州:あなたは、聞いたことがあるでしょう、我が国家の山東の二百州のことを。 ・君不聞:あなた、聞いたことがあるでしょう。聞こえるでしょう。君、お聞きなさいよ。詩をみている人(聞いている人)に対する呼びかけ。樂府体に使われる。「君不見」「君不聞」がある。使用法は、七言が主となる詩では「君不見□□□□□□□」とする場合が多いものの、「君不見…」の後(青字部分)は必ずしも一定でない。岑参『胡笳歌送顏真卿使赴河隴』「君不聞胡笳聲最悲紫髯濠瘡モ人吹。吹之一曲猶未了,愁殺樓蘭征戍兒。」、李白の『將進酒』「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復迴。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡,莫使金樽空對月。」 顧況「君不見古來燒水銀,變作北山上塵。藕絲挂身在虚空,欲落不落愁殺人。」、白居易『新豐折臂翁』「君不聞開元宰相宋開府,不賞邊功防黷武。又不聞天寶宰相楊國忠,欲求恩幸立邊功。邊功未立生人怨,請問新豐折臂翁。」など。  ・漢家:朝廷、皇室の意で使われる。本来、漢の朝廷。劉家のことを指すが、現王朝を憚ってのこと。白居易の『長恨歌』に「聞道
漢家天子使,九華帳裡夢魂驚。」がある。 ・山東:原義は、山の東。作者の位置や詩の舞台に因って、比定される場所が異なってくる。@太行山の東:現・河北省、河南省、山東省…を指す。この場合の「山」は現在の「山西省」名(現在の「山西省」は太行山の東の地の意)の「山」に通ずる。A函の東:戦国時代の六国の地、現・山西省、河南省、河北省、山東省…を指す。B華山の東:現・山西省、河南省、河北省、山東省…を指す。なお、現代の「山東省」名は、金代に山東東西二路が置かれたことに起因するが、その場合の「山」は泰山になろう。 ・二百州:天下の半分の地。「四百餘州」は全中国。

※千邨萬落生荊杞:あらゆる村々では(荒れ果てて)いばらや枸杞(くこ)の雑木が生い茂ったことを。 ・千村萬落:極めて多くの村落では。どこの村でもすべて。邨=村。 *このフレーズは杜甫『詠懷古跡』「
群山萬壑赴荊門,生長明妃尚有村。一去紫臺連朔漠,獨留青冢向黄昏。畫圖省識春風面,環珮空歸月夜魂。千載琵琶作胡語,分明怨恨曲中論。」や韓の「水自潺湲日自斜,盡無鷄犬有鳴鴉。千村萬落如寒食,不見人煙空見花。」やに似ている。 ・荊杞:〔けいき;jing1qi3○●〕いばらや枸杞(くこ)。ともに荒れ地に生える雑木。

※縱有健婦把鋤犁:たとえけなげな妻が、鋤(すき)などの農機具を(手に)執り持って(健闘した)としても。 ・縱有:〔しょういう;zong4you3●●〕たとえ…であっても。 ・健婦:けなげな妻。 ・把:手にとる。(手に)執り持つ。手に握る。 ・鋤犁:〔じょり(しょれい);chu2li2○○〕すき。

※禾生隴畝無東西:稲や穀類が田圃に生えても、(穫り入れるべき)穀物が出来なかった。或いは、稲や穀類が田圃に生えても、荒れて茫茫に生えた中に畝も隠れ、西も東もなくなった無秩序な状態になっている。 ・禾:〔くゎ;he2○〕イネ科。穀類の総称。 ・隴畝:〔ろうほ(りょうぼう);long3mu3●●〕うね。畝(うね)と畦(あぜ)。畑、田圃をいう。また、民間。 ・無東西:物が無い。また、東や西といった規矩が無くなる。 ・東西:〔とうざい;dong1xi0○○〕物。品物。なお、方位を表す場合は〔とうざい;dong1xi1○○〕となる。ここは「西東」ともする。その場合は「西や東」といった方角を表す後者の意の語となり、茫茫に生えた中に畝も隠れ、西も東もなくなった無秩序な状態の意になる。

※況復秦兵耐苦戰:まして、秦の兵士は、いくら(勇猛で)苦戦に耐えていく(能力がある)とはいっても。 ・況復:〔きゃうふく;kuang4fu4●●〕ましてや…であったとしても。いはんやまた。 ・秦兵:秦地方(甘肅省、陝西省出身)の兵士。勇猛な兵士。 ・耐:耐える。 ・苦戰:苦しい戦闘。

※被驅不異犬與鷄:追い立てられて、(使役されるのは)犬やニワトリといった小動物や家畜と異ならない。 ・被:…される。…(ら)れる。受け身表現。 ・驅:〔く;qu1○〕駆り立てる。追い払う。追い立てる。かける。 ・不異:異ならない。同様である。 ・犬與鷄:犬とニワトリ。犬やにわとりのような家畜(小動物)。 ・與:…と…。

※長者雖有問:あなたさまがそのようにお訊ねになりますが。 ・長者:あなたさま。目上の人に対する尊称。その指される人物は前出「道旁過者」に同じで、作者杜甫のことになる。 ・雖有:〔すゐいう;sui1you3○●〕(そのように)…であっても。…であるとはいっても。 ・雖:〔すゐ;sui1○〕(そのように)…であっても。…であるとはいっても。 ・問:御下問。問いかけ。質問。

※役夫敢申恨:それがしは、積極的にうらみごとを申せましょうか。 ・役夫:〔えきふ;yi4fu1●○〕わたくしめ。それがし。前出「長者」に対応する謙譲表現。 ・敢:〔かん;gan3●〕積極的に。勇気を出して。あえて。 ・申:申す。もうしあげる。 ・恨:うらみ。

※且如今年冬:今年の冬のごときは。 ・且如:〔しょじょ(そじょ)qie3ru2●○〕…のごときは。…などは。≒即如。

※未休關西卒:関西(秦の故地である陝西)への出兵が、終わることがない(のに)。 *『舊唐書・列傳・王子顏』「王子顏…天寶七載(748年),從哥舒翰吐蕃積石軍,虜吐谷渾王子悉弄參及子壻悉頬藏而還,累拜左武衛將軍、關西遊奕使。(天寶)九載(750年),撃吐蕃,收五橋,拔樹敦城,補白水軍使。(天寶)十三載(754年),從收九曲,加特進。」と出兵、戦闘が続く。 ・未休:まだ終わらない。。『中国史稿地図集』下冊(郭沫若主編 中国地図出版社)の19−20ページ「安禄山之乱」「史思明之乱」に詳しく、西京(長安)、扶風郡、彭原郡、順化郡、霊武郡、平凉郡…で戦闘が繰り広げられている。 ・關西:〔くゎんせい;guan1xi1○○〕函谷関以西。秦の故地、陝西省。前出「秦兵」に似た用語になるが、ここでは、地域名として使われている。 ・卒:兵卒。兵士。下級戦士。ここでは「派兵、出兵」といったような動詞的用法。

※縣官急索租:県の徴税吏は、租税を急にもとめていました。 ・縣官:地方の官吏。ここでは、徴税吏をいう。 ・急:急に。 ・索:〔さく;suo3●〕もとめる。さがす。ぬきとる。

※租税從何出:租税(の穀物)なんて、一体どこから出てきましょうか。 ・租税:穀物納の税制。租・庸・調のうちの租のこと。唐の税制では粟(もみ)二石になるという。 ・從:…から。 ・何:どこ。なに。 ・出:供出する。

※信知生男惡:男の子を産むことは好くないことだと本当に分かった。 *唐代の均田制は、男のみがその土地支給対象であり、募兵の対象であったので、男の方が苦労をしたことをいう。男は『企喩歌』のように「可憐虫」で「男兒可憐蟲,出門懷死憂。尸喪狹谷中,白骨無人收。」 ということ。後世白居易は『長恨歌』で「姉妹弟兄皆列土,可憐光彩生門戸。遂令天下父母心,
不重生男重生女。驪宮高處入雲,仙樂風飄處處聞。緩歌謾舞凝絲竹,盡日君王看不足。」とうたう。 ・信:まことに。副詞。 ・知:分かる。 ・生男:男(の子)を生む。 ・惡:〔を;wu4●〕たいそういやがる。あし。

※反是生女好:(これと)反対に、女の子を産むことは好いことだ。 ・反是:かえって。反対に。 ・反:かえって。反対に。 ・是:これ。 ・生女:女(の子)を生む。 ・好:〔かう;hao3●〕よい。よし。前出「惡」の対義語。ただ、「好悪」という場合は〔かうを;hao4wu4●●〕というが…。

※生女猶得嫁比鄰:女の子を産んだら、まだ近所へお嫁に行かせることができるが。 ・猶:〔いう;you2○〕なお。なおも。 ・得:える。できる。 ・嫁:〔か;jia4●〕嫁(とつ)がす。嫁(とつ)ぐ。よめに行く。 ・比鄰:〔ひりん;bi3lin2●○〕となり。近所。軒を並べる隣家。近隣。

※生男埋沒隨百草:男を生めば、(兵卒となって屍を)雑草の中に埋もれ伏してゆくことになる。 ・埋沒隨百草:草莽の間に埋もれてしまう。我が国で謂えば、『萬葉集』卷十八にある大伴家持の長歌「山行者草牟須屍(4094番)」〔山ゆかば 草 生(む)す屍(かばね)〕になろうか。その価値附けは異なるが。 ・埋沒:埋没する。日本語の感覚では、庶民が日常生活に追いまくられていくさまをいうことになる。しかし、後出の「君不見青海頭,古來白骨無人收」を考えれば、よりリアルな草莽の間に屍を晒すことではないか。 ・隨:したがって。…とともに。 ・百草:雑草。千草(ちぐさ)。

※君不見青海頭:あなたは、見たことがないのか、ココノール湖の畔(では)。 ・君不見:あなた、ご覧なさい。詩をみている人(聞いている人)に対する呼びかけ。樂府体に使われる。李白に『將進酒』「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復迴。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡,莫使金樽空對月。」 岑参は『胡笳歌送顏真卿使赴河隴』「君不聞胡笳聲最悲紫髯濠瘡モ人吹。吹之一曲猶未了,愁殺樓蘭征戍兒。」 、顧況「君不見古來燒水銀,變作北山上塵。藕絲挂身在虚空,欲落不落愁殺人。」などがある。この「君不見」はどこまでかかるかで、読み方が変わる。解(換韻をする古詩の同一押韻の部分。押韻単位で見た場合のまとまり。章。段)単位でみれば「青海頭,古來白骨無人收。新鬼煩冤舊鬼哭,天陰雨濕聲啾啾」までかかっていくことになる。また、「君不見」の「見」を視覚に訴えることと範囲を絞って「青海頭,古來白骨無人收」とするかだ。それぞれ「君見ずや…」と倒置での読み下しをするので、かかっていく最後の語のところで「…を」とする必要がある。上掲の読み下しは前者の読み。 ・青海:ココノール湖。中国語では青海湖(チンハイ湖(フー)Qing1hai3(hu2))。現・青海省東北部にある湖。高適の『九曲詞』に「鐵騎行鐵嶺頭,西看邏取封侯。
只今將飲馬,黄河不用更防秋。」 とある。 ・頭:ほとり。

※古來白骨無人收:昔から今まで(戦死した兵士の)白骨を誰も収めていない。 *前出・梁の『企喩歌』「男兒可憐蟲,出門懷死憂。尸喪狹谷中,
白骨無人收。」に依る。同じ盛唐の人でも杜甫よりも数十年前に世に出た王翰は『古長城吟』(『飮馬長城窟行』)で「長安少年無遠圖,一生惟羨執金吾。麒麟前殿拜天子,走馬西撃長城胡。胡沙獵獵吹人面,漢虜相逢不相見。遙聞撃鼓動地來,傳道單于夜猶戰。此時顧恩寧顧身,爲君一行摧萬人。壯士揮戈回白日,單于濺血染朱輪。歸來飲馬長城窟,長城道傍多白骨。問之耆老何代人,云事秦王築城卒。黄昏塞北無人煙,鬼哭啾啾聲沸天。無罪見誅功不賞,孤魂落魄此城邊。當昔秦王按劍起,諸侯膝行不敢視。富國強兵二十年,築怨興徭九千里。秦王築城何太愚,天實亡秦非北胡。一朝禍起蕭墻内,渭水咸陽不復都。」 と、長城を築くためにかり出された民衆の屍骸の意で使ったが、杜甫は兵卒の屍骸と、意味を変えて使っている。 ・古來:むかしより(今まで)。 ・白骨:ここでは、戦死した兵士の白骨化した屍体のことになる。 ・無人:だれも…をする人がいない。だれも、してくれない。 ・收:おさめる。容れるところがあってその中に入れる。ここでは遺骨を収集する意になる。

※新鬼煩冤舊鬼哭:(今回の戦役で亡くなった)新たな霊は、わずらいもだえて、(昔の戦役で亡くなった)霊は、声をあげて啼いており。 *この聯は土屋竹雨の『原爆行』「胡軍更襲崎陽津。二キ荒涼鷄犬盡,壞墻墜瓦不見人。如是殘虐天所怒,驕暴更過狼虎秦。
君不聞啾啾鬼哭夜達旦,殘郭雨暗飛燐。 でも使われた。 ・新鬼:新たに亡くなった亡霊。 ・鬼:亡霊。幽鬼。死者の魂。 ・煩冤:〔はんゑん;fan2yuan1○○〕わずらいもだえる。憂いが胸にいっぱいになる。 ・舊鬼:以前に亡くなった亡霊。 ・哭:声をあげて啼く。

※天陰雨濕聲啾啾:空が曇り、雨で湿る折には、死者の魂が悲しげにしくしくと泣いている声を。 ・天陰:空が曇る。 ・雨濕:雨で湿る。 ・聲:ここでは鬼哭のことになる。幽鬼の泣き声。 ・啾啾:〔しうしう;jiu1jiu1○○〕死者の魂が泣く声。悲しげに泣く声。小声で泣く。しくしく泣く。北魏の『木蘭詩』に「喞喞復喞喞,木蘭當戸織。不聞機杼聲,惟聞女歎息。問女何所思,問女何所憶。女亦無所思,女亦無所憶。昨夜見軍帖,可汗大點兵。軍書十二卷,卷卷有爺名。阿爺無大兒,木蘭無長兄。願爲市鞍馬,從此替爺征。東市買駿馬,西市買鞍。南市買轡頭,北市買長鞭。旦辭爺孃去,暮宿黄河邊。不聞爺孃喚女聲,但聞黄河流水鳴濺濺。旦辭黄河去,暮至K山頭。不聞爺孃喚女聲,但聞燕山胡騎鳴
啾啾。」 とある。前出・王翰に『古長城吟』(『飮馬長城窟行』)で「歸來飲馬長城窟,長城道傍多白骨。問之耆老何代人,云事秦王築城卒。黄昏塞北無人煙,鬼哭啾啾聲沸天。無罪見誅功不賞,孤魂落魄此城邊。」 とある。

               ***********




◎ 構成について

 韻式は「AAAABBCCdddEEffgghhIII」で、韻脚「蕭腰橋宵 人頻 田邊 水已杞 犁鷄 問恨 卒出 好草 頭收啾」。次の平仄はこの作品のもの。

○◎◎,
●○○,(韻)
○○○●●●○。(韻)
○○○●●○●,
○○●●○○○。(韻)
○○●●○●●,
●○●●○○○。(韻)
●○◎●●○○,(韻)
○○●○●○○。(韻)
●○●●●●○,
●●●●○○○。(韻)
●○●●◎●○,
○○○●○●○(韻)
○○○●○●●,
●○○○●●●。(韻)
○●◎●○○○●●○,
○○●●○○●。(韻)
●●●●●○○,(韻)
○○●●○○○。
●●○○●●●,
●○●●○◎○。(韻)鶏
●●○●●,(韻)
●○●○●。(韻)
●○○○○,
●○○○●。(韻)
●○●●○,
○●○○●。(韻)
●○○○●,(韻)
●●○●●。(韻)
●○○●●●○,
○○○●○●●。(韻)
○●●○●○,(韻)
●○●●○○○。(韻)
○●○○●●●,
○○●●○○○。(韻)
2005.7.23
     7.24
     7.25
     7.26
     7.27完
     8. 3補
2007.8. 5補
     8.24
    11.20
2008.3.28
2009.9.10

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