張九齢　照鏡見白髪　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩 zhangjiuling

照鏡見白髪

                     　       　　
      照鏡見白髮
　　　　　　　　　　　　　　      　　　　　　　　　　唐・張九齡

宿昔青雲志,
蹉跎白髮年。
誰知明鏡裏，
形影自相憐。

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鏡に照らして　白髪を見る　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
宿昔(しゅくせき)　　青雲の志(こころざし),
蹉跎(さた)たり　　白髮の年。
誰(たれ)か知らん　　明鏡(めいきゃう)の裏(うち)，
形影(けいえい)　　自(おのづか)ら　相ひ憐まんとは。

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◎　私感註釈

※張九齡：盛唐の詩人。字は子壽。（現・広東省）韶州曲江の人。６７３年（咸亨四年～７４０年（開元二十八年）。校書郎、左拾遺、中書舍人、冀州刺史…を歴任する。

※照鏡見白髪：鏡で見て、白髪を見つけた。　・照鏡：鏡で見る。鏡を見る。鏡を使う。現代語に至るまで使われる用法。　・見：みる。　・白髪：しらが。

※宿昔青雲志：昔は、立身出世の願いを持っていたが。 *「宿昔青雲志，蹉白髮年」は対句で構成されている。

宿昔 青雲志

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蹉跎 白髮年

「宿昔」〔しゅくせき；su4xi2●●〕と「蹉」〔さた；cuo1tuo2○○〕とは畳韻。同じ韻母（母音など）が組み合わさったことば。「宿昔」〔しゅくせき；su4xi2：siuk siek〕と「蹉」〔さた；cuo1tuo2：ts‘a da〕となる。　・宿昔：昔から。前々から。昔から今までの間。また、昔。白居易のこの詩は前者の意。白居易の『代鄰叟言懷』「人生何事心無定，宿昔如今意不同。宿昔愁身不得老，如今恨作白頭翁」がある。王維の『歎白髮』は「宿昔朱顏成暮齒，須臾白髮變垂髫。一生幾許傷心事，不向空門何處銷。」は「昔」の意。　・青雲志：立派な人物になろうとする志。立身出世の願い。

※蹉白髮年：時機を失して、白髪の老年になってしまった。　・蹉：〔さた；cuo1tuo2○○〕つまづく。転じて、時が無駄に流れる、時機を失う。明・文嘉の『明日歌』「明日復明日，明日何其多。日日待明日，萬世成蹉。世人皆被明日累，明日無窮老將至。晨昏滾滾水流東，今古悠悠日西堕。百年明日能幾何，請君聽我明日歌。」、秋瑾の『日本服部夫人屬作日本海軍凱歌』「仁乎壯哉赤十字，女子從軍衞戰士。吁嗟一綫義勇隊，喚起國魂強宗類。掀天掲地氣不磨，吮血呑冰勿蹉。幾欲起舞乘風去，拍手樽前唱凱歌。」がある。　・白髮年：白髪になった老年。

※誰知明鏡裏：一体誰が分かろうか、澄んだ鏡のなかに。　・誰知：一体誰が分かろうか。　・明鏡：澄んだ鏡。李白に『將進酒』「君不見黄河之水天上來，奔流到海不復回。君不見高堂明鏡悲白髮，朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡，莫使金尊空對月。天生我材必有用，千金散盡還復來。烹羊宰牛且爲樂，會須一飮三百杯。岑夫子，丹丘生。將進酒，杯莫停。與君歌一曲，請君爲我傾耳聽。鐘鼓饌玉不足貴，但願長醉不用醒。古來聖賢皆寂寞，惟有飮者留其名。陳王昔時宴平樂，斗酒十千恣歡謔。主人何爲言少錢，徑須沽取對君酌。五花馬，千金裘。呼兒將出換美酒，與爾同銷萬古愁。」や、劉希夷（劉廷芝）の『公子行』では「願作輕羅著細腰，願爲明鏡分嬌面。與君相向轉相親，與君雙棲共一身。願作貞松千歳古，誰論芳槿一朝新。」とある。　・裏：…のなかに。

※形影自相憐：実際の自分が、鏡に映っている自分の姿を見て、自然と憐れみの情が起こってきているのを。　・形影：肉体とその影。陶淵明はその意で『形影神序』（貴賤賢愚）、『形贈影』（天地長不沒）　『影答形』（存生不可言）がある。ここでは、実際の自分と鏡に映っている自分の姿をいう。　・自：おのづから。自然と。　・相憐：憐れみあう。　・相：あい

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◎　構成について

　韻式は、「AA」。韻脚は「年憐」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。

●●○○●，
○○●●○。（韻）
○○○●●，
○●●○○。（韻）