歸山深淺去,
須盡丘壑美。
莫學武陵人,
暫游桃源裏。
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崔九を送る
山に歸り 深淺に去り,
須(すべか)らく 丘壑(きうがく)の美を 盡すべし。
學ぶ 莫(なか)れ 武陵の人を,
暫く 游(あそ)べ 桃源の裏に。
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◎ 私感註釈
※裴迪:盛唐の詩人。王維と川で詩を倡和した。関中(現・陝西省)の人。蜀州の刺史、尚書省郎となる。
※送崔九:崔興宗のこと。王維の妻の弟。九は排行。また、『崔九欲往南山馬上口號與別』とするもの、或いは親友の王維に贈ったもので『留別王維』ともする。王維にも『送別』「下馬飮君酒,問君何所之。君言不得意,歸臥南山陲。但去莫復問,白雲無盡時。」があるが、これは孟浩然に贈ったものともいう。
※歸山深淺去:隠棲のため故郷の山奥に行く(と聞くが)。 ・歸山:山に帰るの意で、隠棲することを謂う。 ・深淺:〔しんせん;shen1qian3○●〕山の奥深いところや浅いところ。奥深いところか浅いところか判断がつかない所。後出の「丘壑」の意でもある。ただし、詩詞では「深淺」といえば「深」義が勝つ。「浅」字は語調でつられて出てきたとも謂える。 ・去:さる。行く。
※須盡丘壑美:山や谷の自然のすばらしさを堪能すべきである。 ・須:当然すべきである。すべからく…べし。 ・盡:〔じん;jin4●〕つくす。ここでは、堪能することをいう。 ・丘壑:〔きうがく;qiu1huo4○●〕丘と谷。陶潜の『帰去来兮辞』「歸去來兮,請息交以絶遊。世與我以相遺,復駕言兮焉求。ス親戚之情話,樂琴書以消憂。農人告余以春及,將有事於西疇。或命巾車,或棹孤舟。既窈窕以尋壑,亦崎嶇而經丘。木欣欣以向榮,泉涓涓而始流。羨萬物之得時,感吾生之行休。」の情景でもある。 ・美:すばらしさ。良さ。
※莫學武陵人:(間違っても)『桃花源記』に出てくる武陵の漁人の真似をして(現実世界に還ってくること)はいけない。 *しばらくは山でゆっくりとしたらよいのであって、武陵の漁師のようにこちらの世界に戻ってくるというようなことはしないように。 ・莫學:まねをするな。現代で毛澤東が『人民解放軍領南京』「鍾山風雨起蒼黄,百萬雄師過大江。虎踞龍盤今勝昔,天翻地覆慨而慷。宜將剩勇追窮寇,不可沽名學覇王。天若有情天亦老,人間正道是滄桑。」と使う。 ・莫:…なかれ。動詞の前に附き、禁止や否定を表す。ここでは、前者の意。 ・學:まねをする。まなぶ。 ・武陵人:晉・太元の時代の武陵の漁師のこと。彼が谷川の水源の奥、桃の花の林の奥で世を逃れた人々の村里である桃源郷を訪れた故事。陶淵明(陶潛)の『桃花源記』に出てくる武陵の漁人を指す。「晉太元中,武陵人捕魚爲業,縁溪行,忘路之遠近,忽逢桃花林。夾岸數百歩,中無雜樹。芳草鮮美,落英繽紛。漁人甚異之,復前行,欲窮其林。林盡水源,便得一山。山有小口。髣髴若有光。便舎船從口入。初極狹,纔通人。復行數十歩,豁然開焉B」のこと。漁人は、やがて、元の世の中に帰っていく。そうして二度とは桃花源を訪れることはできなかった。
※暫游桃源裏:しばらくは、桃源郷で過ごせばよい。 ・暫:しばらく。暫時。 ・游:遊ぶ。 ・桃源:桃源郷で。桃花源で。『桃花源記』。や『桃花源詩』の世界。 ・裏:…の中。…の内。
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◎ 構成について
韻式は「aa」。韻脚は「美裏」で、平水韻上声四紙。次の平仄はこの作品のもの。
○○○●●,
○●○●●。(韻)
●●●○○,
●○○○●。(韻)
2005.12.6 12.7完 2007. 7.19 |
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