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在北題壁 | |
北宋・徽宗 |
徹夜西風撼破扉,
蕭條孤館一燈微。
家山回首三千里,
目斷天南無雁飛。
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北に在 りて 壁に題す
夜 を徹して西風 破扉 を撼 かし,
蕭條 たる孤館 一燈 微 なり。
家山 首 を回 らすこと 三千里,
天南 を目斷 すれば雁 の飛ぶ 無し。
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◎ 私感註釈
※徽宗:北宋末期、第八代の皇帝。元豐五年(1082年)~金・天會十三年/南宋・紹興五年(1135年)。名は佶。書画芸術に通じたが、政治力に乏しく、国政は乱れた。当時、遼に悩まされ、満洲に興った金との協力と対立の結果、金軍の侵寇を来す。靖康元年(1126年)、再度の金軍の侵寇を受けて、汴京 (=開封)は陥落し、徽宗と欽宗は、捕虜となって北の金国に拉致され(靖康の変)、現・黒竜江省の五国城の配所で没した。
※在北題壁:北国の金国の五国城に居て、壁に詩文を記した(その詩)。 *徽宗と同じ立場の南唐後主・李煜には『破陣子』「四十年來家國,三千里地山河。鳳閣龍樓連霄漢,玉樹瓊枝作姻蘿。幾曾識干戈。 一旦歸爲臣虜,沈腰潘鬢消磨。最是蒼惶辭廟日,敎坊猶奏別離歌,垂涙對宮娥。」や『虞美人』「春花秋月何時了,往事知多少。小樓昨夜又東風,故國不堪回首 月明中。 雕欄玉砌應猶在,只是朱顏改,問君能有幾多愁。恰似一江春水 向東流。」
がある。 ・在北:北方にいて。北の金国(現・黒竜江省依蘭県)にある五国城に居ること。 ・題壁:壁に詩文を記す。
※徹夜西風撼破扉:夜どおし、西の(胡(えびす)の地より吹いてくる)風が、破れた扉を揺り動かし。 ・徹夜:夜どおし。夜を徹して。徹夜で。 ・西風:秋風。西から吹いてくる風。胡(えびす)の地より吹いてくる風。胡風。 ・撼:〔かん;han4●〕揺り動かす。揺さぶる。 ・破:破れる。割れる。穴があく。 ・扉:とびら。また、いえ。住まい。
※蕭条孤館一灯微:ものさびしいぽつんとひとつだけ離れてあるやかた(=徽宗の居所)では、一灯だけが微(かす)か(に灯(とも)っている)。 ・蕭条:〔せうでう;xiao1tiao2○○〕ものさびしいさま。東晉・陶潛の『挽歌詩 其三』に「荒草何茫茫,白楊亦蕭蕭。嚴霜九月中,送我出遠郊。四面無人居,高墳正嶕嶢。馬爲仰天鳴,風爲自蕭條。幽室一已閉,千年不復朝。千年不復朝,賢達無奈何。向來相送人,各自還其家。親戚或餘悲,他人亦已歌。死去何所道,託體同山阿。」とあり、盛唐・岑參の『山房春事』に「梁園日暮亂飛鴉,極目蕭條三兩家。庭樹不知人死盡,春來還發舊時花。」
とあり、後世、清・王士禛は『即目三首』其二で「蕭條秋雨夕,蒼茫楚江晦。時見一舟行,濛濛水雲外。」
や、同・『夜雨題寒山寺寄西樵禮吉』で「楓葉蕭條水驛空,離居千里悵難同。十年舊約江南夢,獨聽寒山半夜鐘。」
と使う。 ・孤館:ぽつんとひとつだけ離れてあるやかた。ここでは、徽宗の五国城での居所のことになる。 ・一灯:作者である徽宗の許を謂う。 ・微:かすか。
※家山回首三千里:三千里の(彼方の)故郷の山をふり返れば)。: ・家山:故郷の山。ふるさと。故郷。 ・回首:ふり返る。頭をふり向ける。顧みる。前出・李煜の『虞美人』に「小樓昨夜又東風,故國不堪回首 月明中。」がある。 ・三千里:前出・李煜の『破陣子』に「四十年來家國,三千里地山河。」
とある。
※目断天南無雁飛:空の南側(の作者の故郷である中原、汴京の方)の涯(はて)をながめやれば、(渡り鳥で便りを運ぶという)雁の飛んでくる(姿は)無い。絶望である。 ・目断:視力が届かない。ながめやる涯(はて)。じっと、見えなくなるまで。 ・天南:空の南側。作者の故郷である中原、汴京の方の空になる。 ・雁飛:(渡り鳥で自由な)雁が飛んでくる。なお、雁は便り(信)の象徴でもある。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「扉微飛」で、平水韻上平五微。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
○○○●○○●,
●●○○○●○。(韻)
2012.6.6 6.7 6.8 |
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