寄弟 | |
明・徐熥> |
春風送客翻客愁,
客路逢春不當春。
寄語鶯聲休便老,
天涯猶有未歸人。
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弟に寄す
春風 客 を送らんとして客愁 を翻 す,
客路 春に逢 へども 春に當 らず。
寄語 す鶯聲 便 ち老 ゆるを休 めよ,
天涯 猶 ほ未 だ歸らざる人 有り。
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◎ 私感註釈
※徐熥:明・萬暦十六年(1588年)の挙人、蔵書家。1561年〜1599年。字は惟和。福建閩県(現・福州市)の人。
※寄弟:弟に(詩の書いた手紙を)出す。
※春風送客翻客愁:春風が旅人を送って(くれた)が、旅先でのわびしい思いを掻きたてるだけで。 ・送客:(旅立つ)人を(見)送る。 ・翻:反対に。ひるがえす。 ・客愁:旅先でのわびしい思い。旅愁。
※客路逢春不当春:旅先で出逢う春は、春にあたらない。 ・客路:旅路。 ・逢春:春に出逢う。盛唐・杜甫の『絶句漫興』に「二月已破三月來,漸老逢春能幾囘。莫思身外無窮事,且盡生前有限杯。」とある。 ・当:あたる。
※寄語鴬声休便老:ウグイスの鳴き声よ、お願いだから、すぐに老(ふ)け込(こ)まないでほしい。 ・寄語:言葉をあたえる。また、伝言する。ことづてする。伝言をたのむ。=寄言。ここは、前者の意。盛唐・賈至に『對酒曲』「春來酒味濃,舉酒對春叢。一酌千憂散,三杯萬事空。放歌乘美景,醉舞向東風。寄語尊前客,生涯任轉蓬。」とあり、明末清初・江陰女子の『題城牆詩』に「雪胔白骨滿疆場,萬死孤忠未肯降。寄語行人休掩鼻,活人不及死人香。」とある。 ・鴬声:ウグイスの鳴き声。 ・休:やめよ。やめる。 ・便:すぐに。すばしっこい。すなわち。 ・老:老いる。
※天涯猶有未帰人:地の涯(はて)に、まだ帰らない人がいる(のだから)。 *後世、日本のョ支峰に『除夕懷弟』「雪聲燈影笑談新,濁酒乾魚侍老親。獨恨一年年欲盡,天涯猶有未歸人。」がある。 ・天涯:天の果て。遠く離れた地を謂う。 ・猶有:なお…がある。まだ…がある。中唐・韓愈の『題楚昭王廟』に「丘墳滿目衣冠盡,城闕連雲草樹荒。猶有國人懷舊コ,一間茅屋祭昭王。」とあり、北宋・蘇軾の『初冬作贈劉景文』に「荷盡已無フ雨蓋,菊殘猶有傲霜枝。一年好景君須記,正是橙黄橘克栫B」とあり、南宋・陸游の『書事』に「關中父老望王師,想見壺漿滿路時。寂寞西溪衰草裏,斷碑猶有少陵詩。」とあり、明・楊一Cの『山丹題壁』に「關山偪仄人蹤少,風雨蒼茫野色昏。萬里一身方獨往,百年多事共誰論。東風四月初生草,落日孤城早閉門。記取漢兵追寇地,沙上猶有未招魂。」とあり、後世、毛沢東は『卜算子 詠梅』讀陸游詠梅詞,反其意而用之で「風雨送春歸,飛雪迎春到。已是懸崖百丈冰,猶有花枝俏。 俏也不爭春,只把春來報。待到山花爛漫時,她在叢中笑」とする。 ・猶:ちょうど…のようだ。なお…ごとし。 ・未帰人:「まだ帰ってこない人」の意。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「春人」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●○●○,
●●○○●○○。(韻)
●●○○○●●,
○○○●●○○。(韻)
2020.11.11 11.14 11.15 |
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