姑蘇懷古 | |
南宋・姜夔> |
夜暗歸雲繞柁牙,
江涵星影鷺眠沙。
行人悵望蘇臺柳,
曾與呉王掃落花。
******
姑蘇 懷古
夜 暗くして歸雲 柁牙 を繞 り,
江 は星影 を涵 して鷺 は沙 に眠る。
行人 悵望 す蘇臺 の柳,
曾 て呉王 の與 に落花 を掃 きしを。
****************
◎ 私感註釈
※姜夔:〔きゃうき(きょうき;Jiang1 Kui2)〕南宋の詞人。紹興二十五年(1155年)〜嘉定十四年(1221年)。鄱陽(現・江西省内)の人。字は堯章。号して白石道人。詩詞、書画、音楽など広く文学・芸術に通じ、無官のまま范成大、楊万里など、有名な官僚文人たちと親交があった。詞では、洗練された表現、「清空」と評される典雅な風格で、四大家の一とされる。
※姑蘇懐古:・姑蘇(現・蘇州)の地で昔のことを懐(なつか)しく思う。 ・姑蘇:現・蘇州。五代十国時代の後蜀・歐陽炯の『江城子』に「晩日金陵岸草平,落霞明,水無情。六代繁華,暗逐逝波聲,空有姑蘇臺上月,如西子鏡,照江城。」とある。 ・懐古:昔のことをなつかしく思うこと。
※夜暗帰雲繞柁牙:夜は暗くなって(きて)、戻っていく雲が、船の舵(かじ)にまとわりつき。 ・帰雲:夕べの雲。朝、山より生じて夕方に元の場所に帰って落ち着く雲。東晋・陶淵明の『擬古九首』其四に「迢迢百尺樓,分明望四荒。暮作歸雲宅,朝爲飛鳥堂。山河滿目中,平原獨茫茫。古時功名士,慷慨爭此場。」がある。 ・繞:〔ぜう;rao4●〕めぐる。まつわる。 ・柁:〔だ/た;duo4● (/tuo2:梁)〕(船などの)かじ。船尾に附けて、船の方向を決める道具。=舵。南宋・陸游の『感昔』に「行年三十憶南遊,穩駕滄溟萬斛舟。常記早秋雷雨霽,柁師指點説流求。」とあり、現代・『大海航行靠舵手』「大海航行靠舵手,萬物生長靠太陽。雨露滋潤禾苗壯,幹革命靠的是毛澤東思想。魚兒離不開水呀,瓜兒離不開秧。革命群衆離不開共産黨,毛澤東思想是不落的太陽。」とある。 ・柁牙:舵の板。
※江涵星影鷺眠沙:川は星影(ほしかげ)を映して、サギは砂州に眠っている。 ・江:(南方の)川。 ・涵:〔かん;han2○〕ひたす。うるおす。 ・星影:ほしかげ。星の光。 ・鷺:サギ。 ・沙:砂。ここではを砂州を謂う。
※行人悵望蘇台柳:旅人は、姑蘇台の柳(が、かつて呉王夫差のために落花を掃いていたことを(思い浮かべて))悲しげに遥か遠くを眺めるている。 ・行人:旅をしている人。出征兵士。道を行きかう人。盛唐・王昌齡の『出塞行』に「白草原頭望京師,黄河水流無盡時。秋天曠野行人絶,馬首東來知是誰。」とあり、中唐・李益の『汴河曲』「汴水東流無限春,隋家宮闕已成塵。行人莫上長堤望,風起楊花愁殺人。」とある。 ・悵望:悲しげに遥か遠くを眺める。 ・蘇台:呉王夫差が西施のために造った楼台。姑蘇台のこと。
※曽与呉王掃落花:(旅人は、姑蘇台の柳が、)かつて呉王(夫差)のために落花を掃いていた(ことを(思い浮かべて)悲しげに遥か遠くを眺めるている)。 ・曽:かつて。 ・与-:為(ため)に。また、…と。ここは、前者の意。 ・呉王:呉王夫差を指す。 ・掃:掃(は)く。柳の枝が箒(ほうき)のように、散り落ちた花を掃いているさまを謂う。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「牙沙花」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2020.11.1 11.2 |
次の詩へ 前の詩へ 碧血の詩篇メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 陶淵明集 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |