醉中對紅葉 | |
唐・白居易 |
臨風杪秋樹,
對酒長年人。
醉貌如霜葉,
雖紅不是春。
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醉中 紅葉に對す
風に臨む 杪秋の樹,
酒に對す 長年の人。
醉貌 霜葉の如く,
紅なりと雖も 是れ 春ならず。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号して香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。左拾遺になるが、江州の司馬に左遷され、後、杭州刺史を任ぜらる。やがて刑部侍郎、太子少傅、刑部尚書を歴任する。その詩風は、平易通俗な語彙表現を好み、新楽府、竹枝詞、楊柳枝等に挑戦し、諷諭詩や感傷詩でも活躍し、仏教に帰依した。本サイトでは、「抒情詩の頁」に多く集めている。
※酔中対紅葉:酔って、もみじ葉と向かいあう。この詩は『和漢朗詠集』巻下「酒」で、「風に臨める杪秋の樹,酒に対へる長年の人。醉へる貌は霜葉の如し,紅なりといへどもこれ春ならず」と訓まれている。 ・酔中:酔っぱらった状態にあること。 ・対:向かいあう。
※臨風杪秋樹:風に当たっている秋の末の木。 ・臨風:風に当たる。 ・杪秋:〔べうしう;miao3qiu1●○〕秋の末。 ・杪:〔べう;miao3q●〕こずえ。すえ。終わり。年や月の最終。
※対酒長年人:酒に向かっている年長者(つまり、作者・白居易)。 ・対酒:酒に向かう。酒を飲もうとする時。魏・曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。 慨當以慷,憂思難忘。何以解憂,唯有杜康。 青青子衿,悠悠我心。但爲君故,沈吟至今。 呦呦鹿鳴,食野之苹。我有嘉賓,鼓瑟吹笙。 明明如月,何時可輟。憂從中來,不可斷絶。 越陌度阡,枉用相存。契闊談讌,心念舊恩。 月明星稀,烏鵲南飛。繞樹三匝,何枝可依。 山不厭高,水不厭深。周公吐哺,天下歸心。」とあり、盛唐・李白の『對酒憶賀監』に「四明有狂客,風流賀季真。長安一相見,呼我謫仙人。昔好杯中物,今爲松下塵。金龜換酒處,卻憶涙沾巾。」とあり、白居易自身も『對酒』で「蝸牛角上爭何事,石火光中寄此身。隨富隨貧且歡樂,不開口笑是癡人。」と使う。 ・長年:〔ちゃうねん;chang2nian2○○〕長生きする。寿命を延ばす。長生き。長寿。としより。老人。年長者。また、ながい年月。ここは、前者の意。 ・長年人:年長者。ここでは、作者・白居易を指す。
※酔貌如霜葉:酔ったさまは、霜で赤くなった葉のようである(が)。 ・酔貌:酔った顔つき。酔ったさま。 ・霜葉:〔さうえふ;shuang1ye4○●〕霜で赤くなった葉。もみじ。紅葉。唐・杜牧の『山行』「遠上寒山石徑斜,白雲生處有人家。停車坐愛楓林晩,霜葉紅於二月花。」とある。
※雖紅不是春:(木々も、人のさまも)赤いとはいうものの、春のさま(=春の赤い花のさま・紅顔の青春期の少年のさま)ではない。(老いて、やがて散っていくさまである)。 ・雖紅:赤いけれども。 ・雖:…だけれども。…といっても。…といえども。 ・不是:(…は)…ではない。「是」の否定形。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「人春」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は、次の通り。
○○●○●,
●●○○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
2010.11.18 11.19 11.20 |
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